[社説]鹿児島市立病院/地域医療向上へ全力で

2015.05.08

[社説]鹿児島市立病院/地域医療向上へ全力で
2015.05.02 南日本新聞 

 


 鹿児島市立病院が鹿児島大学郡元キャンパス隣接地に移転し、きのう開院した。一般外来の診療は11日から行う。

 最新の医療機器を備え、充実した診療環境を整えた新病院への期待は大きい。鹿児島県の中核病院として県全体の医療向上に力を尽くしてもらいたい。

 敷地面積は旧病院の約3倍、8階建てで延べ床面積は1・3倍と広くなった。病床数574床はこれまでとほぼ同じだが、個室は55室に倍増した。診察室や処置室を増床するなど、ゆったりとしたスペースを確保した。

 市立病院は長年、24時間体制の救命救急や周産期医療、がん診療に重点を置いてきた。総事業費320億円を投じた移転を機にさらなる機能充実を図った。

 屋上には給油施設を備えたヘリポートを新設した。県のドクターヘリが直接離発着でき、患者搬送がこれまでよりスムーズになる。

 救命センターは搬入口から処置室が近く、コンピューター断層撮影装置(CT)などを備えた画像診断室も隣接する。より迅速な治療が可能となり、救命率の向上や後遺障害の軽減が期待される。

 「成育医療センター」は新病院の目玉と言えるだろう。産科、新生児、小児を集約し、出生前から小児期まで高度で一体的な診療を目指す。

 市立病院で行う年間700件の出産数の大部分はハイリスクを伴う分娩(ぶんべん)だという。国内最大規模の新生児集中治療室(NICU)はさらに拡充し、最新機器を整えた体制は妊婦や母親の安心につながるに違いない。

 災害への対応能力も強化した。病棟を免震構造にしたほか、医師が治療の優先順位を決めるトリアージスペースを確保した。桜島の大噴火や大地震など万一に即応できる万全の備えを求めたい。

 市立病院は県都だけでなく、県内医療も支えている。高齢化の加速と人口減少によって県内の医療環境が年々厳しさを増すなか、求められる役割と責任は大きくなっている。

 力を入れてほしいのが人材育成だ。地方の医師不足は深刻の度を増し、公立病院の存続も懸念される状況となっている。

 鹿児島の医療に貢献しようという臨床研修医を全国から呼び込むには、病院の評価と魅力を高める必要がある。将来を見据えて努力を重ねてほしい。

 超高齢化社会を迎え、県内医療をどう支えるか待ったなしの課題だ。県や医師会などと連携を強化し、住民の信頼に応えてもらいたい。