東京女子医大病院が事故調査報告書を公表

2015.04.30

東京女子医大病院が事故調査報告書を公表

2歳男児の直接死因は「プロポフォール注入症候群」と結論

「医学的に合目的な事由の存在に疑義がある」と指摘


2015/4/29

満武里奈=日経メディカル 


東京女子医科大学病院(東京都新宿区)は4月27日、同病院の集中治療施設(ICU)でプロポフォール投与後に死亡した2歳男児の事例について、外部の調査委員会による事故調査報告書を公表した。

2歳男児の直接死因について「プロポフォール注入症候群が妥当」と結論付けた。

 報告書によると、ICU人工呼吸下にあった2歳男児に対し、70時間15分でプロポフォール6953.5mg(平均持続投与量8.1mg/kg/hr)が投与されており、人工呼吸中の成人の鎮静に適切な最大投与量の2.7倍量だったいう。

直接死因は「横紋筋融解症、高CK血症、不整脈、心不全、高乳酸血症を伴うアシドーシスの症状からプロポフォール注入症候群が直接死因とするのが妥当」し、その誘因はプロポフォールの長時間・大量投与だったと指摘している。

 人工呼吸下の小児へ鎮静薬として使用が禁忌となっているプロポフォールを投与していたことについては、投与を指示した医師がICUにおける小児鎮静におけるプロポフォール投与を「禁忌」ではなく、「慎重に使用すべき薬剤」と捉えていたこと、翌日の人工呼吸器離脱を前提に投与開始していたことなどを挙げ、「本事例のプロポフォール使用には医学的に合目的な事由の存在に疑義がある」とした。

 さらに、耳鼻科医師もICU医師もあえて禁忌薬を使用する旨を家族に説明していなかったこと、プロポフォールにより発生する可能性のある有害事象を予測してモニタリング項目をチーム内に伝達していなかったこと、プロポフォールを選択するに至る判断やリスクを診療録に記載していなかったことなども明らかになったという。


ICU医師の態度に「遺憾」

 そのほかの問題点としては、この事例に関与した薬剤師がプロポフォール投与禁忌例だということを「知らなかった」「失念していた」と述べており、禁忌薬の管理体制にも問題があったこと、中央ICUの専従医師6人のうち、小児の麻酔集中治療の専門的なトレーニングを受けた医師は1人の体制だったこと、ICU医師と耳鼻咽喉科医師との患者情報共有に齟齬があったことなどに触れている。

 なお、報告書では中央ICU医師団の調査時の態度についても言及しており、「ICU医師らの供述態度には過剰ともいえる防御的姿勢が認められ、医療行為の内容についても、看護師らの供述と矛盾する内容の供述をし、あるいは『記憶がない』『他の医師に聞いてもらいたい』などど、明らかに供述を避けようとしている態度が認められたことは遺憾と言わざるを得ない」と断じている。

 すでに同病院では再発防止策を講じており、(1)麻酔科外来において術後の鎮静についてもIC実施、(2)中央ICU専属薬剤師の配置と疑義照会の遵守、(3)中央ICU入室申込書の様式変更、(4)患者情報共有のため術後記録用紙の新設、(5)小児集中治療専門医不足対策、(6)禁忌薬の使用に関する対策――を挙げている。



 同日には、この報告書を踏まえた「大学病院としての総括」も公表。

主治医と術後の呼吸管理を支援する中央集中治療室医師との連携が病院のシステム上機能しておらず、結果として集中治療室でのチーム医療が機能しなかったと指摘。「本医療事故における最大の問題点は、治療にあたった医療者個人の問題というよりも医療安全管理システムの機能不全」と記載した。

 同病院では今年2月にリンパ管腫ピシバニール注入術を受けた2歳男児が、ICUでの経過観察中に急性循環不全で死亡する医療事故が発生。その後の院内調査で、鎮静に用いられたプロポフォールとの因果関係が指摘されていた(関連記事)。

 その後、同病院は外部評価委員を含めた医療安全管理特別部会を3回開催して検証を進めていたが、今年8月に詳細な調査を目的とした第三者外部委員のみで構成される事故調査委員会を設置。今年1月までに12回の会議を開き、2月には報告書をまとめていたが公表されていなかった。

 遺族側は今年2月に報告書を受け取っており、「正当な医療行為には当たらない可能性がある」として警視庁に傷害致死容疑の告訴状を提出している(関連記事)。なお、同件は既に警視庁が業務上過失致死の疑いで捜査を進めている。

 昨年6月には、過去5年間に同院の集中治療施設(ICU)でプロポフォールを投与された小児患者は63人で、うち12人が死亡していたことを新たに公表。

この件については昨年12月に会見を開いており、過去6年に鎮静目的でプロポフォールを投与した後に死亡した人工呼吸中の小児患者11例について、全例で死亡とプロポフォール投与との間に直接的な因果関係は認められなかったとする外部委員会の調査結果を公表していた(関連記事)。

ただし、うち5例では死因となった感染症や心不全にプロポフォール投与が悪影響を及ぼした可能性を否定できなかったとも指摘していた。

 プロポフォールの添付文書で禁忌とされているのは「小児の集中治療における人工呼吸中の鎮静」。

これとは別に、日本麻酔科学会のガイドラインでは、「小児への長期大量投与」が禁忌となっている。


■関連サイト(東京女子医科大学病院ホームページ)
※下記ページから報告書をダウンロードできる。
「東京女子医科大学病院『頸部嚢胞性リンパ管腫術後の死亡事例』調査報告書」および当院としての総括の公表について