「同一建物減算」第二幕、生き残りの鍵は?

2015.04.29

「同一建物減算」第二幕、生き残りの鍵は?


2015/4/27

永井学=日経ヘルスケア 
 

ちょうど1年前の2014年度診療報酬改定で、高齢者住宅などの「同一建物」居住者に同一日に訪問診療を行った場合、在宅時医学総合管理料(在医総管)や特定施設入居時等医学総合管理料(特医総管)などの診療報酬が約4分の1の水準に引き下げられるという「同一建物減算ショック」が起こったことは記憶に新しい。

 事情を知る人の話によれば、九州地方のある医療法人が運営するサービス付き高齢者向け住宅では、診療報酬を収益源として当て込み、家賃を周辺相場よりかなり低く設定していた。

しかし診療報酬改定で収入が激減したため、改定後に月4万円以上、家賃を値上げせざるを得なくなったそうだ。

値上げを入居者に依頼する文書には「4月の診療報酬改定の影響に伴い、家賃を引き上げをお願いしたい」という旨が記載されていたという。

 大過なく家賃の引き上げは完了したようだが、不動産管理のベテランで、高齢者住宅も運営している経営者は、こう言って眉をひそめる。「不動産経営の常識で考えれば、随分リスクの高いやり方です」。

 彼の話はこうだ。サ付き住宅で一般的な賃貸借契約では、立場の弱い借主が借地借家法で保護されている。

貸主が家賃などの引き上げを提案し、借主が拒否した場合、拒否を理由に貸主が契約更新を行わないことは「正当な理由」がない限りできない。

、借主には貸主からの家賃引き上げ提案を拒否して住み続けられる権利がある。

 もちろん、消費増税など税制の変更や、物価上昇など経済環境の変化は、その正当な理由に該当し得る。


問題は診療報酬改定に伴う減収が、正当な理由と見なせるかどうか。

医業と高齢者住宅事業は本来、別の事業であり、独立採算で営むのが筋である。

社会保険制度で支払われている診療報酬を当て込み家賃をダンピングする手法は公正な取引という観点から問題があるほか、報酬改定のような制度変更リスクに極めて弱く、事業としての持続可能性(サステナビリティー)に弱点を抱えることになる。

 「一般社会のビジネス常識に照らして、別事業の収益性が悪化したからといって住宅事業で家賃を引き上げるというロジックに妥当性があるとはいえず、仮に入居者が家賃の値上げを拒否して裁判などで争った場合、事業者側が負ける可能性がかなり高いでしょう」と、その経営者は言う。

 上記の例も、高齢者住宅では入居者や家族も「追い出されたら行く所がない」という遠慮から、家賃の引き上げに同意する場合がほとんどのため、たまたま問題にならなかっただけだろうという。

「経営とリスクマネジメントの双方から見て、適切な手法とは言い難い」というのが、そのベテラン経営者の判断だ。

 さて、前置きが長くなったが、今回の2015年度介護報酬改定では、訪問系サービス(訪問介護・訪問看護・訪問リハビリテーション)をはじめ、各介護保険サービスで横断的に同一建物減算が見直された(表1)。訪問系サービスにおいては、改定前は、同一建物の利用者30人以上(1カ月当たり)にサービスを提供した場合が減算になったが、その対象が大きく広がった。