「医薬分業に意味はない」とは誰一人として言わなかった

2015.04.22

狭間研至の「Road to 薬剤師3.0」


「医薬分業に意味はない」とは誰一人として言わなかった


2015/4/21
 


  先週木曜日、4月16日に開催された健康・医療ワーキング・グループの会議に出席しました。

 この日の会議は、去る3月12日の内閣府規制改革会議による公開ディスカッションでの議論(詳細はこちら)を深めるために開催されました。ワーキング・グループの会議ではありますが、規制改革会議の岡素之議長、有村治子内閣府特命担当大臣も出席されたほか、規制改革推進室の大熊裕二参事官を初めとした内閣府の方々、厚生労働省の医療介護連携担当の吉田学審議官など厚労省の方々が出席されました。外部有識者として、東京医科歯科大学の川渕孝一教授、日本総合研究所の高橋進理事長、そして私の3人が呼ばれました。

 出席者の随行の方も含めると30人ほどが一堂に会して、熱気あふれる議論が行われました。議事録が近く内閣府のホームページに公開されると思いますので、詳しくは議事録をご覧いただくとして、ここではざっと議論のエッセンスをお伝えします。

 前半は、院外処方箋における調剤のコストがそのメリットに見合っていないのではないか、ということが改めて議論になりました。院内調剤との比較や、営利法人が保険調剤業務を運営することが持つ課題などについても、各委員が自身の経験なども踏まえながら、様々な意見が活発に出されました。

 「規制改革」という会議の目的から、どうしても厚労省に矛先(?)が向くような雰囲気にはなるのですが、吉田審議官を始め、医薬担当の成田昌稔審議官や、中井清人薬剤管理官が真摯に一つ一つ答えておられました。

 「(狭義の)調剤に関するコストが院内と院外とで大きく異なるということについて、『納得した』という雰囲気ではない中で、やはり、この問題とも関係がありますね」という翁議長の進行で、フェンス(=薬局の構造的独立性)の問題に議論が移りました。

 ここでも議論は白熱しましたが、患者や国民の利便性をフェンスが損なうという話と、経済的な独立性を担保することの重要性について、意見が出ました。フェンスのみならず門内薬局の議論とも重なり、「日常生活動作(ADL)が低下している患者さんが、わざわざ遠くにいかなくてはならないことがあってはならないという議論は、国民目線でいうと当然ではないか」という論調で進んだと思います。

 そして、「たとえ門内に薬局ができても、経済的独立性は別の方法で担保するような仕組みは作れるのではないか」「門内ありきで独立性を担保できるような規制や仕組みを考えるべき」という方向性に向いているように感じました。有村大臣は「国民の代表として、このテーマに取り組みたい」とコメントされましたが、私には「やはり、利便性の確保が重要だ」という意味合いが強いように聞こえました。

 いろいろと議論が交わされて、会議の終了予定時刻を若干過ぎていたのですが、私も最後に少しだけ発表する機会をいただきました。私が伝えたかったのは、「立地が良ければ、必ずその薬局に患者さんが行くという大前提は、いずれ変わる」「医師と薬剤師が連携すれば、多剤併用や薬剤の有害事象という、わが国が直面している医療の問題を解決できる」ということでした。

 薬剤師がモノと情報の専門家であり、薬局がお薬の受け取り窓口であるという大前提が、今、薬学教育6年制の影響もあり、変わりつつあります。また、多剤併用や薬剤の有害事象という問題は、今のところ未解決です。薬は飲んだ後が勝負であり、その後の経過を薬剤師がきちんと追うことは、薬剤師法第25条の2に明記された薬学的知見に基づく指導義務を果たすことに他なりません。薬剤師の業務における対人業務の比率を高めていく時代になりつつあるのではないでしょうか。

 少し緊張していたので、きちんと話せたかどうかは、議事録を見るまでドキドキですが、会議を終えて自分としては少しすっきりした気がしました。

 さて、3月12日と4月16日の2回、医薬分業に関して国民的議論がなされたわけですが、これらを通して「医薬分業には意味はない」という発言は、ただの1回もありませんでした。実際、16日の会議の最後に、翁座長が「『医薬分業における規制の見直し』というテーマを『医薬分業推進下での規制の見直し』と変えたい」と提案され、了承されました。

 ただし、医薬分業が否定されなかったからといって、現状が認められたわけではありません。会議の出席者からは、現在の医薬分業の形は最適ではないという意見が猛烈に(!)出されています。恐らく、6月に予定されている規制改革会議の答申の中で、何らかの形で医薬分業の規制改革というテーマが盛り込まれると思います。

 国民がコストに見合うメリットを感じられるよう、医薬分業をよりよい制度にしていくために、薬剤師自らが決断し、様々な取り組みを本格化させる時期が到来しているのだと感じています。