インタビュー◎どう考える?准看護師問題

2015.04.21

 

インタビュー◎どう考える?准看護師問題

准看護師の養成は時代にそぐわない

洪愛子氏(日本看護協会常任理事)に聞く


2015/4/21

聞き手:富永紗衣=日経メディカル 
 





 

 病院団体が「日本准看護師連絡協議会」の設立を表明したり、自民党の議員連盟が准看護師の養成促進を呼び掛けるなど、准看護師を巡る議論がにわかに活発になっている。看護職不足の解消を図るのが狙いのようだが、准看護師の養成について日本看護協会はどう考えているのか。常任理事の洪愛子氏に聞いた。



 
こう あいこ氏◎日本看護協会常任理事。大阪大学医学部附属病院勤務を経て、2004年東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科博士課程修了(医学博士)。2000年日本看護協会に入職し、09年から現職。

――地域の看護職が足りないから准看護師を養成すべき、という意見がありますが、日本看護協会の見解を聞かせてください。

 「准看護師の新規養成は停止し、看護師に一本化すべき」というのが協会の考えです。そもそも、准看護師制度は第2次世界大戦後に看護師が不足している状況下で創設されました。当時は高校進学率が低かったため、中学校卒業を入学要件としました。しかし医療技術の進歩と共に、看護のニーズは年々複雑化・多様化しています。求められる看護実践能力も高くなっており、従来の准看護師養成の教育水準ではもはや対応できなくなっています。

 高校進学率が97%を超え、理学療法士や診療放射線技師、歯科衛生士など他の医療関係職種の養成も大学教育に移行する中、60年以上前に作られた准看護師制度が存続している方が問題です。

――准看護師と看護師の養成は、何が違うのでしょうか。

 最短の修業年限が准看護師は2年、看護師は3年であり、履修時間や実習時間は当然違いますが、そもそも教育の目的が全く異なります。看護師養成では、患者の全身をアセスメントして、自律的に判断し先を予測する能力を身に付けることが求められます。これに対し准看護師養成は「医師または看護師の下で安全に実施できる能力を養う」という、指示を受けて働くことを前提とした教育です。自律的判断は教育目的に含まれていません。

 注射を例に挙げれば、准看護師は安全に実施する方法を中心に学びますが、看護師は安全な手技はもちろん、人体の構造や薬剤の薬理作用、体内動態も一通り学びます。到達内容や基礎科目が全く異なるわけです。また臨床での看護実践に欠かせない「看護過程」についても、准看護師養成課程では必修ではありません。

 このように教育内容がかなり異なるにもかかわらず、准看護師は法律上では、指示の有無以外は看護師と全く同じことができてしまいます。養成所で学んでいないことを現場で求められるので、准看護師は各自の努力で学ぶしかなく、当人にとっても大変な負担になっているようです。

 2006年に保健師助産師看護師法が改正され、看護師の名称独占が法律上で規定されたにもかかわらず、両者の区別がなされていない施設などが存在するというのもおかしな話です。准看護師も誠実に働いているからこそ、「この仕事はどこまでやっていいのか」という立場の曖昧さに葛藤があると聞いています


http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/anursing/report/201504/541571_2.html


http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/anursing/report/201504/541571_3.html

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/anursing/report/201504/541571_4.html








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私の視点◎看護師50万人不足時代への提言

今こそ准看護師の養成が必要だ

赤枝恒雄(衆議院議員、医師)


2014/8/4

談話まとめ:井田恭子=日経メディカル 
 





 

 今年6月、自民党国会議員による「地域を支える看護職員養成促進議員連盟」(会長:川崎二郎衆議院議員)が設立された。来るべき2025年に向けて、地域で働く看護職をいかに増やしていくか、その方策を検討するのが同議連の目的だ。解決策の一つとして提案されているのが、准看護師の養成促進。なぜ今、再び准看護師なのか。議連の設立を発案し事務局長を務める赤枝恒雄議員に、その真意を聞いた。





 
あかえだ つねお氏◎1968年東京医大卒業後、同大産婦人科学教室に入局。77年赤枝六本木診療所開業、同年博士号取得。東京都港区医師会会長などを経て、2012年、衆議院議員総選挙で自民党の比例東京ブロックから出馬し、初当選。

 国の試算によれば、団塊世代が後期高齢者となる2025年、看護職は200万人必要とされています。今後10年で、現在よりもさらに50万人増員しなければならない計算です。

 では、どうやって増やすのか。潜在看護職の掘り起こしや外国人看護師の活用など様々な策が検討されていますが、私は、2年制の准看護師の養成を促進するべきだと考えます。今後、ニーズが増すのは、高度急性期病院というよりはむしろ介護現場で働く看護職であり、准看護師がそれにふさわしいと思うからです。

 私は、東京都港区医師会長を務めていた時、都心のど真ん中で独居老人が孤独死している現状を目の当たりにし、都会型の地域包括ケアのあり方について考えるようになりました。その中で、介護職とかかりつけ医の間に立ち、時には食事介助や排泄処理といった患者の日常生活に寄り添ったケアが行える人材の必要性を感じました。

 近年、看護師の養成は3年制から4年制にシフトしていますが、4年間の大学教育を受けた看護師でないとこうした役割が務まらないのかといえば、必ずしもそうではないと考えます。これまでも准看護師の働きぶりを目にしてきましたが、十分力を発揮できますし、2年間という養成期間も、人材を増やしていく観点から見て大変効果的だと思います。

 介護の現場とはいえ、患者の状態に応じて医療行為も発生します。喀痰吸引など一部の医療行為を介護職に担わせる動きもありますが、介護職自体も、このままでは25年には100万人足りなくなると言われており、それだけでは解決できません。採血や点滴のできる准看護師が介護現場にいれば、その分、起動力も高まります。

職種の中の機能分化があっていい
 私はなにも、高度な教育を受けた看護師が不要と言っているわけではありません。大学病院などの急性期病院では、高度な技術や専門知識を持ってケアに当たる看護師は必要です。議連では、特定行為の研修制度の運用をはじめ、医師がそばにいない現場で高度な役割を担う看護師の養成についても、議論していくつもりです。

 一方で、介護現場を中心に働く准看護師がいてもいいのではないでしょうか。つまり、看護職の中での機能分化です。「それじゃあ、准看護師は下働きなのか?」という話になりがちですが、病院で働く看護師とは仕事の内容が違うだけ。地域で働くことも同じように評価する価値があるのです。地方では既に深刻な看護師不足に陥っており、開業医を中心に「准看護師がほしい」という声が多く聞かれます。

 准看護師養成所の志願者は、2008年度以降急激に増加しています。一昔前のように、中学校卒業後にストレートで入学する人よりも、最近は、子育てが一段落し就労を希望する中高年や、医療現場での再就職を希望する社会人経験者が多いのが特色です。つまり、多様な働き方の中から准看護師を選択するニーズがあるわけです。社会人にとっては授業料がネックですが、今年4月の雇用保険法の改正により、教育訓練給付の給付内容が拡充されるなど、負担軽減策も講じられています。それに何より2年間で資格が取得できるのは魅力です。

 こうしたニーズの一方で、准看護師養成所は年々閉鎖に追い込まれています。校舎の耐震化が必要でも建て替える体力がないのが大きな理由です。10月に臨時国会が招集されたら、議連の活動を本格化させ、養成所の施設や人材育成に関わる補助金獲得のため、精力的に動きたいと考えています。

 ちなみに、議連の発起人に、医系・看護系議員は名を連ねていません。あくまで一般の目線で今後の看護・介護のあり方について考えてもらいたいからです。医系・看護系議員には、適宜、会議で意見を求めたいと思っています。また、日本看護協会は「准看護師養成は停止すべき」とのスタンスであり、議連の設立についても、まだ十分受け入れてもらえていない印象です。しかし、「50万人をどう増やすのか」という課題を共に話し合っていけば、理解を示してくれると思っています。

 近年、看護職は専門分化が進んでいますが、地域で求められているのは介護職と一緒になって地域住民を支えていく看護職です。その要請に応え、中心的な役割を果たすのが准看護師だと思います。「ナイチンゲール精神」を持ち、患者さんに寄り添った看護を実践してもらいたいと切に願います。そのためにも、全国の医師会が中心となり、准看護師の養成を進めていかなければならないと考えます。