厚労省、全国の精神保健指定医の診療録を調査する方針

2015.04.20

厚労省、全国の精神保健指定医の診療録を調査する方針

聖マリ医大の精神保健指定医、20人が資格取消

「同様の事例がないとは言い切れない」と懸念


2015/4/18

加納亜子=日経メディカル
 


 厚生労働省は4月15日、医道審議会医師分科会精神保健指定医資格審査部会の答申を受けて、聖マリアンナ医科大学病院(川崎市宮前区)の在籍中に「精神保健指定医」の資格取得を申請した医師11人とその指導医9人の計20人に対し、資格を取り消す処分を決めた。20人もの指定医が取り消しとなった事態を受け、厚労省は今後、全国の医療機関の精神保健指定医の申請内容について、可能な範囲で調査を実施する方針を示している(参照記事「聖マリ医大の医師、精神保健指定医を不正取得か」)


 今回、取り消しとなったのは、指定医11人(30代が10人、40代が1人)と指導医9人(30代が4人、40代が3人、50代が2人)。同病院は、過去5年間で15人が指定医の資格取得を申請していた。このうち3人は、今回の事例発覚のきっかけとなった新規申請者で、取り消しを受けた11人を除くと指定医認定の要件を満たしていた申請者は1人のみとなる。不正な症例申請で指定が取り消しになるのは、今回が初めてのケースとなる。

 厚労省によると、同病院の医師3人が精神保健指定医の資格を新規申請するために提出したケースレポートを関東甲信越厚生局の職員が確認していたところ、過去に同病院の医師から提出されたケースレポートと内容が酷似していたことに気がつき、今年1月下旬に厚労省へ報告。さらに、既に指定医の資格を取得している医師が過去に提出したケースレポートを精査したところ、同様にほぼ同じ内容が記載されていることが発覚した。

 同一の症例を用いてケースレポートを作成した可能性が高いとして、厚労省は同病院に調査を求めた。加えて、事実確認のためにカルテなどの診療録を提出するよう指示し、病院立ち入り検査、意見聴取を実施した。

 調査対象となった医師14人のうち、既に指定医を取得した11人のケースレポートの内容と過去の診療録を確認したところ、経験症例としてケースレポートに記載されていた症例のほとんどが申請した医師の担当患者ではなく、医師が患者の治療に関わったことも記録されていなかった。

 申請には実務経験証明書として、一定期間自ら担当し、1週間に4日以上診断または治療などに関わりを持った症例の報告をするケースレポートの提出が義務づけられている。

 だが11人は「カンファレンスなどへの出席で、症例を担当したことになると考えていた」「回診などをすることで、関わったことになると認識していた」と釈明したという。中には医局員から過去の症例を受け取り、コピーして申請に用いていたケースもあった。架空症例は確認されていない。

 また、指導医はケースレポートの内容を確認して署名していたが、「文面の添削は行ったが、申請者が実際に症例として申請した患者を担当していたかの確認を怠っていた」と説明した。

 こうした状況に厚労省の部会は精神指定保健福祉法に基づき、これら計20人の医師は「指定医として著しく不適当」であると判断。指定医の資格を取り消す処分を決めた。なお、取り消しとなった医師は精神保健福祉法に基づき、今後5年間、再指定の申請はできない。新規で申請した3人は申請を取り下げている。

 この事例を受けて厚労省は「他にも同様の事例がないとは言い切れない」との見解を示し、全ての精神保健指定医に対して診療録の保存期間5年間に加え、可能な限りさかのぼって、申請内容を調査する方針を示した。申請に用いた症例のデータベースを作り、確認できる体制を作る他、都道府県を通じて啓発することなどで再発を防ぎたい考えだ。

 なお、同病院は認定医の資格が取り消された医師に対し、「学内の規定に基づいて処分内容を検討する」としており、院内の委員会で議論をする方針を示している。