親族企業、蓄財の舞台 徳田家、不動産取引など

2015.04.09

親族企業、蓄財の舞台 徳田家、不動産取引など
2015.04.07 朝日新聞



 巨大医療グループ「徳洲会」で、創業家一族への利益供与の実態が改めて浮き彫りになった。徳田虎雄・前理事長が掲げた「地域医療を支える」との理念が、次々に発覚する不正によって揺らいでいる。

 一族への利益供与の主な舞台は「株式会社徳洲会」。グループで「株徳(かぶとく)」と呼ばれる中核会社だ。2013年まで前理事長の長女が社長を務め、役員には一族が名を連ねていた。

 株徳と一族をめぐる不自然なお金のやりとりは、13年に朝日新聞が内部文書などをもとに報じた。

 まずは不動産取引だ。東京・元麻布のマンションの一室を、株徳は10年に2億円で購入。その4カ月後、次女が社長の会社に1億4千万円で売却した。株徳の監査報告書は「実質的には購入してまもなく低額で売却され、売却損は(次女の会社への)寄付金とみなされる」と問題視した。

 高額の役員報酬が問題になったことも報じた。株徳は09年度、長女夫妻に計1億800万円、長男の妻に3千万円を支出。だが、グループ内で「高額すぎる」と指摘され、その後、それぞれ大幅に減額されていた。

 これとは別に、今回、国税当局の調査で一族への不正な利益供与が明らかになった。実際には株徳が行った取引を、一族が役員を務める別の関連会社3社が行ったことにして、もうけをつけかえていた。複数のグループ関係者は「関連会社を大きくして、親族の生活を安定させようとしていた」と打ち明けた。

 また、マンションの売買をめぐっても、監査報告書が指摘した金額の一部は、国税当局から「親族への利益供与」と認定された。


 ■「地域医療充実」かすむ理念

 医療法人は法律上、営利事業ができない。そこで、医療法人とは別に株徳のような関連会社を設立。医薬品や医療機器を株徳が大量に購入し、これをグループ病院に販売するなどして利益を積み上げた。「グループ病院の収益を株徳に集める仕組みだ」とグループ関係者は解説する。

 関係者によると、こうした会社は少なくとも数社あった。役員の多くを徳田一族が占め、報酬などの形で利益が還流していたという。

 12年ごろ、前理事長は職員を前に、「家族には財産を残さない」と宣言したことがあった。この言葉をよく覚えているという病院幹部は言う。「自分や家族に厳しく、地域医療の実現へ突き進む。一貫した姿勢に職員は共感し、薄給でも頑張ってきた」。それだけに「一族への利益供与に失望した職員は多い」。

 グループでは13年、前理事長の次男・毅氏を当選させるための大規模な選挙違反が発覚。この資金の一部も関連会社で工面されていた。

 事件を受け、グループ内では関連会社の存在が問題視されたが、いまも主な会社の社長は前理事長が務めたままだ。

 事件後、患者離れからグループの収益は落ち込み、いまは税優遇の取り消しも検討されている。経営の低迷が続けば、前理事長の理念によって築かれた、へき地での医療体制の維持にも影響が出かねない。


 ◆キーワード

 <徳洲会と一連の問題> 徳田虎雄・前理事長が1973年に最初の病院を開設し、今では全国に355の病院や介護施設を持つ。2012年の衆院選で、虎雄氏の次男・徳田毅元衆院議員の選挙応援に全国の病院職員らを派遣し、報酬を支給したとして、前理事長の妻や長女、次女らが公職選挙法違反の罪に問われ、有罪判決を受けた。同年の東京都知事選の直前、有力候補者だった猪瀬直樹氏に現金5千万円を渡していたことも発覚。猪瀬氏は都知事を辞任し、公職選挙法違反の罪で略式起訴された