千葉県がんセンター腹腔鏡手術事故 術後死亡した11例の検証を受け病院長らが謝罪

2015.04.01

千葉県がんセンター腹腔鏡手術事故

術後死亡した11例の検証を受け病院長らが謝罪


2015/3/31

土田 絢子=日経メディカル 
 


 会見で説明する千葉県病院局長の矢島鉄也氏。

 千葉県がんセンターの腹腔鏡下手術による術後死亡を検証した第三者検証委員会は3月30日、報告書案を発表した。検証したのは2008年~2014年に消化器外科の腹腔鏡下手術を受け術後短期間で死亡した11例だ。保険を適用できない高難度手術を多く含むにもかかわらず、倫理審査委員会に諮っていない、診療科内における討議や組織間の情報共有が不十分、患者へのインフォームドコンセントが十分になされていない――など数多くの問題を指摘した。第三者検証委員会の委員長を務める多田羅浩三氏(日本公衆衛生協会会長)は、「新しい医療の追及はがんセンターの使命であるが、倫理審査委員会に諮って医療体制を整えることが決定的に重要。多くの事例でそうした整備が行われず、医師の独断が先行した」と主要な問題点を語った。

 報告書案の発表を受け、千葉県がんセンター病院長の永田松夫氏や千葉県病院局長の矢島鉄也氏らは記者会見を同日開催。「報告書案の内容を真摯に受け止め深く反省し、再発防止に努め、県民に安全で安心できる医療を提供できるよう取り組んでいきたい」(矢島氏)と謝罪した。

 なお、千葉県がんセンターでは、3月19日にも消化器外科でカテーテル治療後の死亡事例が発生し、新たな院内調査委員会が立ち上がったところ。その結果も踏まえて最終報告書を作成するが、ほぼ内容が固まったことを受けて今回、報告書案の発表に至った。

 検証された11例の術式は、腹腔鏡下で行われた膵頭十二指腸切除術3例、膵体尾部切除術1例、肝外胆管切除術1例、肝部分切除術2例、肝左葉切除術1例、胆管切除術・胆嚢切除術・胆管空腸吻合術1例、胃全的術1例、幽門側胃切除術1例だ。うち8例は肝胆膵領域を専門とするA医師が担当した。

 医学的な検証を行った日本外科学会によると、A医師は腹腔鏡下手術において一般術者と同等かそれ以上のレベルを有し、全国的にもリードする実績を持っていた。しかし、A医師による事例の多くは保険適応外であったが倫理審査委員会に諮っていなかった。また、極めて難易度の高い手術を腹腔鏡下で行い、無理な自動吻合器使用による血管壁の損傷や、再建挙上空腸のうっ血、重要脈管の誤認による切離などがあり、合併症や死亡に何らかの関連を有した可能性があった。

 千葉県がんセンターにおける膵頭十二指腸切除術の30日以内死亡率(2006~2013年度)は、開腹手術で0.41%(1/245例)、腹腔鏡下手術では6.2%(4/65例)と、腹腔鏡下のリスクが非常に高かった。A医師は、3月19日の死亡事例になったカテーテル治療も担当していたため、3月24日以降、病院長は診療行為を停止させた。

背景に「風通しの悪い」組織体制
 報告書案が11例で数多くの問題点が発生した背景の一つとして指摘したのは、風通しの悪い組織体制だ。

 千葉県がんセンターの消化器外科は肝胆膵グループと消化管グループに分かれ、合同カンファレンスは行っていたものの、実質的には各グループで方針を検討していた。部長は経験が少ないことから、肝胆膵領域の高難度手術は主治医に任せ、術式決定についても深入りしてのディスカッションをしていなかった。

 また、2013年には2事例の報告を受け、センター長が設置した事故調査委員会が、「適応外の腹腔鏡下膵切除術を再開するには倫理審査委員会の承認が必要である」「患者へのインフォームドコンセントではメリット・デメリットを示して記録を保存する」――などの具体的な提言を行っていたが、センター内でその内容が周知されず、対応策は実施されなかった。また、この内容について遺族への説明はなく、公表もされなかった。

 第三者検証委員会は、これについて「組織的に隠ぺいが意識されているという風に受け止められかねず、その後の外部通報への発端となったとも考えられる」とした。なおここで言う「外部通報」は、千葉県がんセンター元職員の女性麻酔科医が消化器外科の再手術の多さや歯科医師による全身麻酔について告発した件を指す。告発は、2014年にマスコミで大きく取り上げられた。
 
 第三者検証委員会は、千葉県がんセンターに対する今後の提言として、組織の指揮命令系統の明確化、倫理審査やカンファレンスによる検討体制の強化、チーム医療体制の強化、インフォームドコンセントの標準化、セカンド・オピニオンを確保しやすい環境整備――などを挙げた。