へき地医療 スタッフ共有 自治体病院同士が相互協力=熊本

2015.03.05

へき地医療 スタッフ共有 自治体病院同士が相互協力=熊本
2015.03.04読売新聞



 ◆休床で余裕の看護師 不足の所へ

 地域医療現場での慢性的なスタッフ不足を解消するため、県内の自治体病院が協力し合い、看護師らを出向させる取り組みを始めた。厚生労働省によると、全国でも珍しい試みで、現在、看護師1人が約100キロ離れた病院に出向している。関係者は「へき地医療を支え合う新しい形を提示できれば」としている。(愛野翔太郎)

 「看護師不足で困っている小国の人たちの力になれたら」

 球磨郡公立多良木病院(多良木町)から北に約100キロ離れた小国公立病院(小国町)に出向中の看護師、赤池奈緒美さん(28)は、新たな試みに手を挙げた理由をこう語る。

 両町や上天草、天草両市など県内の山間地や島にある6公立病院と9自治体は2013年4月、「県へき地医療自治体病院開設者協議会」(会長=北里耕亮(こうすけ)・小国町長)を設置。各病院を調べたところ、看護師や薬剤師、検査技師ら医療スタッフにも偏在があることが判明した。そこで、人手に余裕が出た場合、不足している病院に出向させる仕組みを作った。

 昨年5月、病棟の1フロア(48床)を休床した多良木病院で看護師に余裕が出た。一方、小国公立病院は都市部から離れており、交通事情も悪いため医療スタッフが慢性的に不足しがち。特に看護師は産休や育休の影響もあり、基準ぎりぎりの状況だった。このため、昨年10月から今月までの予定で赤池さんの出向が決まった。

 小国公立病院の寮に移り住んだ赤池さんは、「スタッフや患者との関係づくりや病院のルールに慣れるのに少し時間がかかった」としながらも、「違う病院で働くことは、看護師としての成長にもつながると思う」と笑顔で語る。

 協議会は、今後も年に2回のペースで各病院の要員などの状況を把握し、マンパワーの共有化を図っていく方針。協議会が事務局を置く小国公立病院の坂本英世院長は「同じ課題を抱えた自治体病院同士が人事交流を進め、人材不足を補い合うことで、地域医療を支える新たな力になるはず」としている。

 ◆厚労省 看護職員の復職支援

 厚生労働省によると、看護師や助産師などの看護職員の就業者数は2012年で約154万人と、需要見通しの約157万人を3万人ほど下回っている。25年には196万~206万人が必要になるとの試算もあり、看護職員の人材確保は急務となっている。

 同省は、定着促進のために勤務環境改善などの取り組みを推進。復職支援に向け、今年10月に施行される改正看護師等人材確保促進法で、看護師免許を持つ人の届け出制度などを創設し、離職者の把握や効果的な支援を行う。

 同省看護課は「医師や看護師の確保策は重要な課題。設置自治体が異なる病院間でスタッフが出向できるようになれば、人手不足の解消策の一つになる」としている。