群馬大病院腹腔鏡下肝切除術事故

2015.03.04

群馬大病院腹腔鏡下肝切除術事故

群馬大病院、死亡例の全てで過失を認定

院長らが最終調査報告書を発表


2015/3/3

土田絢子=日経メディカル 
 

群馬大学病院は3月3日、第二外科に所属する40歳代男性医師による腹腔鏡下肝切除術事故について調査委員会がまとめた最終報告書を発表し、死亡した8例すべてに過失があったとして謝罪する会見を行った。

 それによると、男性医師は2010年12月から14年6月までに腹腔鏡下肝切除術93例を実施し、8例の手術関連死亡があった。調査委員会が死亡例を検証した結果、不十分な術前評価で悪性リンパ腫の患者に肝切除術を実施する、肝硬変で肝予備能が低下している肝癌患者に広範囲な肝切除を行う、開腹手術でも高難度の肝門部胆管癌に腹腔鏡下手術を実施し縫合不全を起こす――など、いずれの症例も、術前・術中・術後のすべての段階で何らかの問題があり、過失があったとした。

 またすべての症例で、インフォームド・コンセントが不十分である、診療録の記載が乏しく男性医師の判断過程に不明な部分が多いという問題も認められた。

 さらに調査中、この男性医師による開腹の肝切除術でも10例の死亡が判明した。そのうち1例は、胆管細胞癌として手術を受け術後3日目に死亡したが、死亡から約10日後に、良性腫瘍である「非腫瘍性肝のう胞」という最終病理診断結果が出た。男性医師はこの結果を遺族に報告・説明せず、2カ月後に作成した生命保険の診断書に「胆管細胞癌」と病名を記載していたことも明らかになった。開腹手術の死亡例に関しては、別途調査が行われているところだ。

 院長の野島美久氏は発表に先立って3月2日、医師としての適格性に欠けるとして男性医師に診療行為の停止を命じ、こうした問題を認識せず対応が不十分であったとして、第二外科の診療科長には、科長業務の停止を命じた。正式な処分は別途行われている開腹手術の調査結果も踏まえて決定する方針だ。

 死亡した8例は60歳代~80歳代で、肝細胞癌が4例、胆管細胞癌が1例、転移性肝癌が1例、悪性リンパ腫が1例、肝門部胆管癌が1例だった。

 そのうち1例の経過を挙げると、慢性C型肝炎と肝硬変、肝細胞癌があり、男性医師は完全腹腔鏡下肝内側区域(S4)切除術を実施した。術後に大量の腹水、胸水が持続し、術後42日目に肝機能、腎機能が急激に悪化、術後46日目に多臓器不全で死亡した。

 このケースに対して調査委員会は、(1)手術前のインフォームド・コンセントにおいて、代替治療の選択肢や合併症、死亡率の具体的なデータが示された記録がないことから、不十分な説明であったと判断した、(2)肝S4切除、中肝静脈切離による肝のうっ血、術中の出血などの負荷により術後肝不全に至った可能性がある。手術前に肝予備能の評価を行い、慎重に術式を検討する必要があった。(3)手術後の腹水に対する対処、腎不全進行の過程で、早期の適切な対応により異なる経過をとった可能性があった――などの検証結果を示している。

 腹腔鏡下肝切除術の手術成績における検証でも、全体の死亡率が8.6%(8/93例)、保険適用外の58例のみで検討すると13.8%(8/58例)と高かった。日本外科学会らが1月に発表した保険適用外の腹腔鏡下肝切除術の全国2236施設における死亡率は2.27%だった。

 調査委員会は、このように腹腔鏡下肝切除術で死亡例が続いた要因として、(1)第二外科における肝胆膵外科チームは2人のみで男性医師が全ての診療を担い、診療科のカンファレンスで実質的な審議が行われた形跡がなく、診療科として問題を把握できていなかった、(2)死亡例のインシデント報告がなされなかったために病院も把握が遅れた――などの問題点を指摘した。さらに、第一外科と第二外科の下に複数の診療チームが存在し、それぞれが別個の責任体制で診療し、プロトコールが共有されていない、閉鎖的診療環境であったことも問題だとした。

 群馬大病院は調査結果を踏まえ、4月1日から第一外科と第二外科を廃止し、新たに外科診療センターを置いて外科診療を一元管理する、病院の全死亡例を把握しスクリーニングする死亡症例検証委員会を置く、などの体制刷新を実施する。