東北薬科大の医学部新設 激しい反発、議論混迷 東北の医療者、宮城県へ医師集中懸念

2015.03.02


 東北薬科大の医学部新設 激しい反発、議論混迷 東北の医療者、宮城県へ医師集中懸念
2015.03.01。【共同通信 秋田魁新報】
 

 東北6県の医師不足解消を目指し、東日本大震災の復興支援策として37年ぶりの医学部新設先に選ばれた東北薬科大(仙台市)が、激しい反発にさらされている。

地域医療の現場から教員になる人材が引き抜かれ、医師が宮城県に集中するとの懸念が根強いためだ。

国への認可申請の期限が3月末に迫る中、新医学部の議論は混迷を極めている。

 

 「全国が注目している。何が議論され、何が問題だったのかを明らかにすべきだ」。

2月下旬、申請内容を話し合う東北6県の医療関係者の協議会で岩手医大の小川彰学長が東北薬科大に詰め寄ると、本県など各県の医師会も同調した。

 「絵に描いた餅」「説明が足りない」。会合を重ねるたびに批判は熱を帯び、「そもそも新設には反対だ」との発言まで公然と出た。

 卒業生の地元定着策として、東北勤務を条件に返済を免除する奨学金制度の議論では、宮城以外の5県が財源拠出に難色を示し、高柳元明東北薬科大学長が「学生はいらないということか」といら立つ一幕も。

地域医療を話し合うはずの協議会は、非難の応酬の場となった。

薬科大関係者は「新設に賛成する出席者は皆無。引き延ばしてつぶす作戦だ」と憤った。

 医師過剰を防ぐため1979年の琉球大(沖縄県)を最後に凍結された医学部新設は、復興支援の特例で2013年11月、文部科学省が東北の1校に限り可能とした。

 宮城県や民間の医療グループが手を挙げる中、14年8月、文科省の審査会は「財政面で安定し教育内容も充実している」と東北薬科大を選定。

新設条件として、関係者で協議会をつくり、教員となる医師の引き抜きや卒業生の勤務先の偏在を防ぐよう求めた。

 厚生労働省によると、東北6県の人口10万人当たりの医師数は12年末時点で全国平均の226・5人をいずれも下回り、不足は深刻。ただ都市別にみると、医師が集まる仙台市は312・8人と比較的余裕がある。

 医学部をつくっても卒業生が働き始めるのに最低6年かかるため、「地域間の偏在解消をまず優先すべきだ」との意見も根強い。

 敬遠されがちな過疎地などでの勤務意欲を持ち地域に根付く医師をどう育てるか。

東北薬科大は一私大の立場でこの難題に向き合うことになったが、各県の医療関係者は、貴重な人材を囲い込みたい思惑から非協力の姿勢。

新医学部の教育内容や、地域医療の将来像をめぐる具体的な議論は置き去りのままだ。

 来年4月の開設に向け、文科省の審査会が申請内容を今年3月中にチェックし、8月に文科省が可否を判断する見通し。だが東北薬科大の担当者は「やるだけやったので、あとは審査会に判断してもらう」と半ば投げやりだ。

 震災で被災した岩手県沿岸部のある診療所の医師は「やる気のない人を無理やり地域医療に従事させても意味がない。中身の伴った実効性のある議論をしてほしい」とため息交じりに話した。【共同通信 秋田魁新報】