[2015知事選・県政の課題](下)医師不足(連載)

2015.03.16

[2015知事選・県政の課題](下)医師不足(連載)=三重
2015.03.14 読売新聞


 ◆地域偏在 解消へ布石

 「血圧がちょっとだけ高いけど、これくらいやったら心配ない。ただ、喉が少し赤いな」

 “海女のまち”として知られる鳥羽市相差町の市立長岡診療所。昼の往診から慌ただしく戻った菅原茂医師(57)が、診察に訪れた元海女(80)に声を掛ける。

 同診療所は、人口約2100人の長岡地区で唯一の医療機関。2階に住んでいた医師が2013年10月に急死してから約1年半、常勤医師が不在だ。現在は離島の市立坂手診療所に勤める菅原医師のほか、市立菅島診療所や県立志摩病院(志摩市)の医師らが、交代で診察に出向いている。

 「夜中が一番困るんや。前の先生は何時でも起きて診察してくれた」。相差町で民宿を経営する海女(75)はそうこぼす。海水浴シーズンに宿泊客が熱を出した時も、すぐ診療所に連れて行くことができた。今では、「お客さんをほっとくわけにはいかん」と、夜間に鳥羽市中心部や志摩市まで車を走らせる民宿経営者も少なくないという。

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 厚生労働省の調査によると、三重県の医師数(12年末現在)は3631人。人口10万人当たりに換算すると197・3人で、全国平均(226・5人)を大きく下回り、都道府県で37位と低迷している。特に、津地域が334・4人なのに対し、伊賀地域は131・4人、伊勢志摩地域は190・9人で、医師の確保に加え、地域偏在が大きな課題となっている。

 市内に病院(ベッド数20床以上)が1件もない鳥羽市では、市が6診療所2分室を設置している。このうち、1診療所2分室は三重大学が日替わりで医師を派遣。2診療所は県から派遣された医師が住み込みで働いている。長岡診療所が不在のため、市が採用している医師は2人だけだ。

 市の担当者は「市中心部の開業医も高齢化が進んでおり、10年後、20年後が心配だ。鳥羽市だけでなく、伊勢市や志摩市など近隣市町との連携を深めなければ、将来は立ちゆかなくなる」と嘆く。

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 県内で働く医師を確保しようと、県は04年度から、医学部卒業後に県内の医療機関で一定期間勤務すれば、返還が免除される医師修学資金貸与制度を開始。14年度までに計457人が貸与を受けている。

 このうち、大学卒業後2年間の初期臨床研修を終えた計36人が県内の医療機関で勤務を始めた。県の推計によると、21年度には貸与を受けた計390人の医師が県内に勤務する見込みという。

 また、地域における医師の偏在を解消しようと、県は12年5月、県地域医療支援センターを設置。初期臨床研修終了後に8年間、地域の医療機関と中核病院をローテーションしながら、専門医資格の取得を目指す後期臨床研修プログラムを昨年度に完成させた。

 県地域医療推進課は「修学資金貸与制度により、県内で勤務する医師の総数は必要数を確保できるメドが立った。残る課題の偏在解消に向け、初期臨床研修医と面談を重ねるなどして、地域医療支援センターの後期臨床研修の活用を呼びかけたい」としている。(この連載は新良雅司、磯野大悟、梶浦健太郎、根岸詠子が担当しました)


 〈医師修学資金貸与制度〉

 全国の医学生が対象。大学1年から6年間、最大約770万円の貸与を受けることができる。〈1〉県地域医療支援センターの後期臨床研修プログラムに基づき、県内の医療機関で大卒後8年間勤務〈2〉県内の医療機関で大卒後10年間勤務〈3〉へき地を含む県内の医療機関で大卒後6~7年間勤務--のいずれかの条件を満たした場合、返還が免除される。