◎社説 群馬大の手術死 病院の管理責任は重大 

2015.03.11

◎社説 群馬大の手術死 病院の管理責任は重大 2015・3・10
2015.03.10 京都新聞



 医療に対する信頼を大きく損なう由々しい事態だ。

 2010~14年に腹腔(ふくくう)鏡による肝臓切除手術を受けた患者8人が死亡した問題で、群馬大病院は全症例で手術と死亡の因果関係を認める最終報告書を公表した。

 8人はいずれも第2外科の40代の医師が執刀した。

 検査が不十分で手術後に誤診が判明したほか、病状から手術が適さなかったり、臓器縫合が不適切だったりした症例が複数あった。退院後に容体が急変して受診したのに、入院させずに翌日死亡した患者もいた。

 執刀医は難易度が高い腹腔鏡手術を導入時、院内の倫理審査を申請しなかった。患者や家族へ説明を尽くしたとも言い難い。死亡症例を検討会できちんと検証しないまま手術を繰り返していたが、批判や意見を受け付けない病院の閉鎖性が背景にあったとみられる。

 執刀医が所属する第2外科「肝胆膵(すい)外科チーム」の医師はわずか2人。群馬大病院では第1、第2両外科の診療分野が重複し、第1外科にも肝臓専門医がいるのにノウハウの共有はなかった。

 10年前に第1外科の生体肝移植手術で重大事故が起き、両外科の特異な診療体制が指摘されたが、見直しは進まなかった。4月から「外科診療センター」に統合するが、遅きに失したと言える。

 報告書は執刀医らが手術前から退院後まで判断ミスやずさんな診療を重ねた連鎖が死亡につながったと判断した。執刀医が功名心から技量を超えた難手術を施したとすれば許されない。

 執刀医の責任は言うまでもないが、死に至る連鎖を見過ごした病院側の管理責任はなお重い。とりわけ4人が腹腔鏡手術を導入後1年未満に死亡した事実は看過できない。病院側が早い段階で検証して対応していれば、その後の事故を防げた可能性は高い。

 この執刀医による開腹手術でも過去5年間に10人が死亡、診断書虚偽記載も発覚した。遺族側の弁護団が「悪質な医療過誤で、病院の最終報告は不十分」と批判するのは当然だろう。

 厚生労働省は高度医療を提供する特定機能病院の承認取り消しを検討中だが、併せて地域医療の中核である大学病院でなぜ痛ましい事故が相次いだのか真相解明も急いでほしい。

 一連の手術死のように医療に起因する死亡事故を扱う医療事故調査制度が今年10月から始まる。専門性が高い「密室」で起きがちな医療事故の原因究明と再発防止の新たな仕組みとして期待したい。

京都新聞社