NEWS◎緩和ケア 独立型ホスピスの草分け、ピースハウス病院休止へ

2015.03.17

NEWS◎緩和ケア

独立型ホスピスの草分け、ピースハウス病院休止へ

財政面や看護師確保などに課題、再開に向け努力の意向


2015/3/16

井田恭子=日経メディカル
 





 

 
写真 ピースハウス病院外観 約4000坪の自然豊かな環境に建つ。オーストラリア・パース市のコテージホスピスをモデルに造られた。

 国内初の独立型ホスピスとして知られるピースハウス病院(神奈川県中井町、写真)が、3月末で病棟運営を休止することが分かった。経営する一般財団法人ライフ・プランニング・センター(東京都港区)が3月14日、理事長である日野原重明氏のコメントを発表。財政面やスタッフの補充の問題など経営的課題を抱えていたことを明かし、病棟再開に向け努力を続けていく考えを示した。

 ピースハウス病院は、1993年に開設された国内の独立型ホスピスの草分け。欧米のホスピスケア先進国の施設やケア方法を参考に、寄付や神奈川県、日本財団からの援助など総額15億4000万円を投じて作られた。21年間で受け入れた患者数は3700人余り。富士山を望む4000坪の自然豊かな環境に位置し、病院(21床)のほか、訪問看護ステーション、緩和ケアの研修やセミナーを行うホスピス教育研究所を併設している。

 緩和ケアに思い入れのある医療者が全国から集う一方で、ここ最近は赤字経営に苦しんでいた。特に影響が大きかったのが、入院患者の在院日数の短縮化だ。

 「開設当初、平均在院日数は40日だったが、ここ数年は平均10数日と特に短くなった。一部の長期入院患者を除けば『平均で1週間』というのが院長の感覚だったようだ」と、ライフ・プランニング・センター常務理事で事務局長の朝子芳松氏は説明する。「在宅復帰」の流れが強まる中、近隣の病院から同院に直接転院してくる患者が減り、自宅に一度戻ってぎりぎりまで在宅で過ごした後に入院する患者が増えた。一般病院に緩和ケア病棟ができ、末期患者の対応を行うようにもなってきており、「最期の最期でホスピスに入院する患者が多くなった。中には入院後、2、3日で亡くなる人もいる」(朝子氏)。結果として年間の患者数は、開設当初の200人から350人近くまで増えた。しかしそれでも、病床稼働率は採算ラインである8割に届かなかったという。

 入院の待機者は常時10数人いたが、「看護師の業務負荷が増していて患者をこれ以上受け入れることが難しく、また、待機者の中には『今すぐにはホスピスに入りたくない』という人もおり、入院患者を思うように増やせなかった」と朝子氏は説明する。完全独立型のホスピスである同院は、一般病院の緩和ケア病棟に比べて職員配置や設備の維持など運営面での効率化が図りにくい側面もあった。夜間帯に看護師を3人配置するなど基準以上に手厚い看護体制を敷いており、そのための職員の人件費も経営を圧迫していた。

 さらに追い打ちをかけたのが、看護職員の離職の問題だ。昨年、看護部長が今年度末に退職する意向を示した後、後任人事が難航。副看護部長も退職を決め、その後、看護主任らへと退職希望の連鎖が広がった。「1月末に次年度の就業意向をヒアリングしたところ、ほとんどの看護師が『辞める』と答えた。新規採用も試みたが思うように応募者が集まらず、4月以降の病棟維持は困難と判断した」(朝子氏)。

 現在、新規の入院は既に停止しており、入院患者については3月12日までに全員が転院を完了した。院長のほか職員の大半は3月末に退職予定で、同院は5月1日より休止する予定。休止決定の知らせを受け、財団には休止を惜しむ声や支援の申し出が寄せられているという。再開に向けて、「まずは要となる院長と看護部長を探したい」と朝子氏は話す。また、患者の在院日数を延ばすため、近隣の病院に対して早めの転院を依頼するなどの対策も検討するという。

 昨今の「病院から在宅へ」の流れを受け、在宅での看取りを希望する患者が増えており、また、介護系施設においても看取りに積極的に取り組む動きがみられる。一方で、「在宅が中心になっていることは事実だが、訪問してくれる医師がいなければ成り立たない」と朝子氏は指摘し、そうした体制が未だ不十分な現状において、独立型ホスピスの果たす役割はあるとの考えを示す。そのためにも、「一度リセットしてこれまでの経営方式を見直すと共に、再開への道筋をつくりたい」と話している。

 なお、併設するホスピス教育研究所と訪問看護ステーション中井は、4月以降も活動を継続していくという。