病院により生存率は3倍も違う――2回のがん闘病から学んだ病院の話

2015.03.09

病院により生存率は3倍も違う――2回のがん闘病から学んだ病院の話
脳腫瘍(脳神経外科) の病院選びの難しさ


東京 女子医大は病院ランキングを見ても脳腫瘍の手術件数が全国1位ですが、最新設備と術中MRIに基づく高い治療成績の裏付けがあってのことです


 2015年03月07日  JST


僕は現在43歳のIT企業経営者です。2001年、30歳のときに、「つかえるITを、世界から。」をミッションとする株式会社オーシャンブリッジを設立しました。

そのちょうど10年後、2011年に悪性脳腫瘍を発病しました。
さらに2年後の2013年には白血病・悪性リンパ腫を発病しました。

僕はこの2回のがん闘病の経験を、闘病記として詳細にブログ(オーシャンブリッジ高山のブログ)に記録しています。(その理由は前回の1回目の記事をご参照ください)

今回の記事では、自分が悪性脳腫瘍と白血病にかかったときに直面した、がんの病院選びの難しさと大切さ、そして経験して初めて気づいた選び方のポイントについて書いてみます。外科系(脳腫瘍)と内科系(白血病・悪性リンパ腫)でも
そのポイントは異なります。


■脳腫瘍(脳神経外科) の病院選びの実際

僕は2011年6月、ヨーロッパ出張中に空港で意識を失って倒れました。帰国後に脳神経外科の専門病院で検査をしたところ、脳腫瘍が見つかりました。

その日家に帰ってから、ネットで病気のことや病院のことを調べました。脳腫瘍がどんな病気で、悪性と良性の比率はどれくらいで、治療内容はどうで、予後はどうで、どの病院で治療するのがいいのか、などを調べました。

この段階で、もし悪性の脳腫瘍だった場合は、予後はかなり厳しいなと感じていました。だからこそベストな治療を受けなければと思い、病院に関する情報を収集しました。

しかし出てくるのはいわゆる「病気別病院ランキング」ばかり。

病気の種類ごとに、患者数や手術件数で病院をランク付けしたものです。最初はそれを参考に病院を選ぼうと考え、脳腫瘍の手術件数が多いランキング上位の病院をいくつかリストアップしました。でも決め手がありません。

僕はネットで調べるのと同時に、幼稚園から高校まで一緒だった幼なじみのT君にメールを送りました。彼は都内の大学病院で放射線腫瘍医をしています。
つまりがんの放射線治療と画像診断の専門家です。

T君によると、「脳腫瘍は病院選びが非常に重要。特に、もし悪性であれば、脳腫瘍手術をしっかり経験している病院がよい。自分の勤める大学病院でもいいが、兄の勤める東京女子医科大学病院も紹介できる。

女子医大は手術室にMRIがあり、手術件数も日本一。兄にも相談してみる」とのこと。T君のお兄さんは、女子医大でやはり放射線腫瘍医をされています。

さらにT君は「脳腫瘍の治療においては、手術でどこまで腫瘍を切除できるかが非常に重要。できるだけ正常な脳の機能を維持しながら、腫瘍を最大限に切除し、摘出率を高めるには、手術室にMRIの設備があることが重要」と言いました。
つまり女子医大がよいということです。T君とお兄さんは、すぐに女子医大での診察の予約を入れてくれました。彼のメールには、

「自分が高山と同じように脳腫瘍になったら、女子医大で手術を受ける」

とありました。長年の友人であり腫瘍の専門家である彼がそこまで言うなら間違いない、彼を信じよう、と思いました。

数日後、初めて東京女子医科大学病院に行きました。脳神経外科の村垣善浩教授の外来診察です。

事前に検査画像を見てくれていた村垣先生は、すぐに「これは神経膠腫、グリオーマという悪性脳腫瘍ですね。
グレード、つまり悪性度は、画像で見る限り、おそらく3〜4だと思います。でも、実際には手術をして組織を取って病理検査をしてみないと確定できません」とのこと。

先生から渡された説明資料を見ると、グリオーマの5年生存率の全国平均は、グレード3の場合は25%、グレード4の場合は7%とあります。大きなショックを受けました。

しかし、女子医大の治療成績は、全国平均を大きく上回ります。
女子医大のホームページの脳腫瘍・神経膠腫治療に関するページには、このようにあります。

2005年の手術症例数は99例と国内第1位(週刊朝日臨時増刊2007.3.5号)であり、2000年から2006年6月までの治療成績として、初発神経膠腫(グリオーマ)149例の5年生存率はグレード2が90%、グレード3が78%、グレード4が13%でありました。直接比較することはできませんが、参考資料として日本脳腫瘍統計における5年生存率はグレード2が69%、3が25%、4が7%です(Neurologia
Medico-Chirurgica(Tokyo) 40(supplement):1-106, 2000)。

このように、女子医大のグリオーマの治療成績は、全国平均を大きく上回ります。
グレード3の場合の5年生存率は、全国平均の25%に対し、女子医大では78%と、3倍以上です。それでも、グレード4の場合は、全国平均の7%に対し、女子医大では13%です。依然厳しい数字ではありますが、全国平均と比べると約2倍です。

最終的に、手術後の病理検査の結果、僕のグリオーマのグレードは3で確定しました。腫瘍はほぼ取り切れ、摘出率は98%でした。
5年生存率78%に入れそうなこの結果を聞いた時には、本当に安堵しました。その後、現在も定期的に女子医大を受診してMRI検査を受けていますが、今のところ再発の兆候は全くありません。


■脳腫瘍の治療成績の違いはどこから来るのか?

T君も説明してくれたように、グリオーマの予後に関しては、腫瘍の悪性度(グレード)とともに、手術でどこまできれいに腫瘍を取れたか、つまり腫瘍の摘出率も重要になります。

取り残しがあれば、数年のうちに再発してしまう可能性が高くなります。でも、同じ固形がんでも、他の臓器のがん(胃がん、乳がん等)と異なり、脳腫瘍の場合、腫瘍の周囲の、がん細胞が散らばっている可能性のある組織も含めて、臓器をまるごと摘出してしまう、ということができません。脳を丸ごと摘出したら、生命を保つことができません。だから、生きていくのに必要な脳の機能を損なわずに、ギリギリのところまで腫瘍を取る必要があります。

しかしこれが非常に難しく、従来は、手術前に撮影したMRIやCT等の検査画像をもとに、脳外科医の勘と腕と経験に頼って腫瘍が摘出されていました。その結果、手術中はきれいに取れたと思っていたけれど、術後にMRIを撮ってみたら実際は取り残しがあって、その後再発してしまった、ということになり、5年生存率の低さ、予後の悪さにつながっていました。


女子医大の脳神経外科は、手術中に腫瘍組織の有無や位置を画像で確認できる「術中MRI(オープンMRI)」を開発することで、この問題を解決しました。

術中MRIにより、手術で腫瘍を摘出した上で、開頭したまま、手術室内のMRIで取り残しがないかを確認して、取り残しがあればその位置や大きさを確認した上でさらに摘出する、ということが可能になったのです。

他にも多くの関連する機器や設備を開発し、それが腫瘍摘出率の大幅な向上、そして5年生存率を含めた治療成績の飛躍的な向上につながっています。

この女子医大が開発した術中MRIは、その後少しずつ他の病院にも広がりつつあると聞いています。
女子医大の村垣先生たちは、そうした他の病院にまで手術指導に赴き、女子医大に留まらない全国的なグリオーマの治療成績向上を目指しているようです。


■脳腫瘍(脳神経外科) の病院選びの難しさ

グリオーマ治療に関するこうした術中MRIなどの情報は、僕の脳腫瘍が見つかった当時は、ネットで検索してもなかなか見つけることができませんでした。

ネットで見つかる病院ランキングなどでは、患者数や手術件数などの一見分かりやすい定量的なデータしか分かりません。でも、手術設備や治療方法などの定性的な情報も、特に外科系の病院選びでは非常に大切です。そしてもちろん、それらの結果得られる治療成績(5年生存率)の情報も重要です。

女子医大は病院ランキングを見ても脳腫瘍の手術件数が全国1位ですが、それはこうした最新設備と技術に基づく高い治療成績の裏付けがあってのことです。

でもその治療成績や設備については、ランキングでは見えてきません。単にランキングだけを見た患者さんが「女子医大の予約がすぐに取れなかったから、次の病院に電話してみよう」と考えてもおかしくありません。

僕自身、T君に相談していなければ、何も知らずに、ランキング上位に掲載されている他の病院で手術を受けていた可能性もあります。その場合、すでに僕はこの世にいないかもしれません。

僕は、放射線腫瘍医としてがん治療の最前線にいるT君のお陰で、脳腫瘍治療における術中MRIの重要性を知り、女子医大の治療成績が他の病院とは違うということを知ることができました。