医師ヘッドハンティングの舞台裏

2015.02.25

医師ヘッドハンティングの舞台裏
「札束積んで医師を引き抜く」は誤解です


2015/2/25 日経メディカル

武元康明(半蔵門パートナーズ)
 みなさん初めまして。エグゼクティブ・サーチ、いわゆるヘッドハンティングを社業とするサーチファーム・ジャパン(東京都千代田区)、半蔵門パートナーズの代表を務める武元康明と申します。社長とはいえ、私も一コンサルタントとして国内を駆け回っています。

 このコラムでは、医師のヘッドハンティングを依頼される病院の側の事情や、私たちが声を掛けさせていただく医師の特徴、ご依頼からマッチング、成約までのプロセスなどを、事例を交えながらご紹介できればと思います。

 まずは会社について少し紹介させてください。サーチファーム・ジャパンは、2003年に大手総合商社系の会社から営業権譲渡により分離独立した会社です。当初は経済界を専門に、製造業、小売業・サービス業、情報通信業などでエグゼクティブ・サーチ業を行ってきたのですが、2008年に医療業界に本格参入し、半蔵門パートナーズという会社を設立。今では医療が主たる領域の1つになるまで成長しています。

 ヘッドハンティングというと、高額の収入をちらつかせて優秀な人材を引き抜くというイメージがあるかもしれません。しかし私たちの会社は、高額報酬で医師を勧誘する「引き抜き」ではなく、優秀な人材とそうした人材を求める法人との「最適な出会い」の提案を目指しています。

 ヘッドハンティングという言葉から想像される業務とは一線を画す意味で、欧米で一般的に使用されている「エグゼクティブ・サーチ」という言葉を弊社では使っています。ただ、まだ市民権を得ていないので、ここでは便宜上ヘッドハンティングという言葉を使うことにします。

成功報酬型では成り立たないサーチ業
 
このコラムを進めていくに当たり、もう1つ明らかにしておかなくてはならない点があります。

一般の方からよく聞かれるのが、「ヘッドハンティングは成功報酬である」「ヘッドハンターには候補者の給与から報酬が支払われる」といったビジネスモデルに関する誤解です。これらはいずれも正しくありません。

 有料職業紹介業は厚生労働省の許認可事業であり、求職者が登録した条件に合致する企業を紹介する「登録型」と、求人側が希望する条件を満たす人材を探し出す「サーチ・スカウト型」に分かれます。

 「登録型」は、一般に人材紹介会社と言われており、インターネットの求人サイトなどで皆様よくご存じの会社も多いかと思います。これに対して当社は「サーチ・スカウト型」に該当します。

 「登録型」は1件成立ごとに費用が発生する成功報酬方式を採用しています。一方、「サーチ・スカウト型」は、成約にかかわらず、契約時点から費用が発生するリテイナー方式(前払制)を採用しています。

 クライアントの依頼を受けて、的確な候補者を“発掘”するために、私たちは相当な人件費、活動費を投入します。その「着手金」「活動費用」を前払いで頂くのです。逆にいうと、ヘッドハンティングは成功報酬型のビジネスモデルでは成立しないのです。

魅力的な職場を提供できる医療法人とは
 これまでお会いした方々は、実績ある優秀な医師ばかりです。そうした方々に、長期にわたって活躍できる魅力的な職場をご提案し、医療法人と医師の最適な出会いをご提案するのが私たちの仕事です












医師ヘッドハンティングの舞台裏


 

「札束積んで医師を引き抜く」は誤解です
そのため私たちが取り引きする医療法人は選ばせていただいています。

中長期的な経営計画や展望があり、「こういう理由で医師が欲しい」という明確なビジョンのある医療法人からの依頼を請け負っています。

医療法人の経営者の人格も重視
しています。人を大切にする考え方は絶対に必要です。反対に、「今日、明日にも医師がほしい」という依頼は請け負っていません。

 結果として現在、クライアントの大半は社会医療法人や公益法人となっています。

社会医療法人は救急医療や災害医療、へき地医療、小児医療などを実施し地域社会に多大な貢献をしていると地方自治体に認められ、法人税が免除されるなどの優遇措置を受けている法人です。

経営に安定性があるばかりでなく、必要な設備投資を行い、医療政策にもきちんと対応でき、これから発展していく可能性が高いといえます。

 国は、医療・介護を一体的に提供して地域包括ケアシステムを支える役割を担い、かつ臨床研究も推進できるような「大規模医療事業体」を育てる方向に動いています。

非営利ホールディングカンパニー型法人、いわゆる新型法人の議論はこうした動きを具体化するためのものと言えるでしょう。社会医療法人は、そうした大規模医療事業体の核の1つになると考えています。

 また国は、増え過ぎた急性期病床を削減する政策を次々に展開していきます。

これから急性期病院における働き口は大幅に減り、医師の働く環境は激変するでしょう。

既に、ある急性期病院では院長が「2018年に急性期として残っていられるかは分からない」と職員にアナウンスし、急性期を志向する若手医師に暗に転職を促したと聞いています。

 今後、医療機器を購入して最先端の医療を行い、学会活動のサポートやスキルアップの機会を提供し、これらを地域住民に還元できるのは、結局は利益を出せる経営力のある病院です。私たちは経営力があり、将来性がある医療機関と取り引きをさせていただいています。

 クライアントの要望に合う候補者が見つかり、候補者が転職を決めた場合は、強引な「引き抜き」にならないよう細心の注意を払っています。現在勤めている病院や診ている患者さんに迷惑が掛からないよう、円満退職になるように工夫しています。

 読者の皆様の中に、転職活動はしていなくとも、新たなステージでのチャレンジを望んでいる方や、組織の問題により思うように能力を発揮できていない方はいらっしゃると思います。

 もしかしたら、いつか私たちが次のステージのご提案をさせていただく機会があるかもしれません。このコラムを通して、「サーチ・スカウト型」による転職の実態をご理解いただければ幸いです