=核心評論= 国保の運営移管 都道府県の役割に期待 内田 泰 (共同通信編集委員)

2015.02.25

=核心評論= 国保の運営移管 都道府県の役割に期待 内田 泰 (共同通信編集委員)
2015.02.24 佐賀新聞  

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 地域医療に関する都道府県の権限と責任が、今後は格段に大きくなる。

 国民健康保険(国保)の財政運営が市町村から都道府県に移されることになった。厚生労働省は今国会で法整備を進め、2018年度からの運営移管を目指す。「国民皆保険」が確立した1961年以来の大事業になるだろう。

 サラリーマン時代に健康保険組合などに加入していても、退職後は国保に入るのが一般的だ。近年は非正規労働者や失業者の医療保障の受け皿にもなっている。このため国保の加入者は年齢層が高く、所得水準は低い。赤字体質が付いて回る。

 しかも、加入者が3千人に満たない小規模国保が全体の4分の1に上る。人工透析などで高額医療費が生じると保険財政は途端に悪化する。

 運営を広域化すれば、こうした財政リスクをより多くの加入者で分かち合える。運営主体として市町村は規模が小さ過ぎ、かといって全国で一本化すると地域の事情をくみ取りにくい。都道府県が程よい規模だろう。

 中小企業の従業員が加入する協会けんぽや、75歳以上の後期高齢者医療制度も都道府県単位で運営されており、自然な流れだ。

 都道府県の権限強化は国保運営に限らない。地域医療の供給体制を見直す「司令塔」の役目も加わる。昨年の医療法改正を受け、都道府県は「地域医療構想」の策定も担うことになった。

 地域医療構想では、地元の病院ごとの役割分担をはっきりさせる。「高度医療対応」「回復期のリハビリ向け」「慢性疾患の長期療養型」などと医療機能を区分。超高齢化に伴う人口変動を踏まえ、10年先に必要な機能別の病床数を推計し、病院の機能再編を進める。医療供給体制を住民の特性に応じた形に構築し直す狙いがある。

 国保運営と地域医療構想は車の両輪だ。都道府県がお金の入り(保険財政)と使い道(医療供給)を一体的にコントロールすることにより、給付費の伸びの抑制と医療の質向上という「二兎(にと)」を追う。踏み出してみる価値のある改革だ。

 もっとも、財政運営の広域化だけで国保の赤字構造は解消しない。将来的に公費による追加支援が求められる可能性はあり、消費税率が10%でも間に合わないかもしれない。

 そうした事態を避けるには今回の改革を通じ、保険料収入を高めて財政を安定させ、介護とも連携して住民ニーズに沿った効率的な医療供給を実現していくしかない。

 介護保険制度のスタート前後、豊富な現場経験に裏打ちされた市町村の「カリスマ職員」が政策提言で国を引っ張り、制度の定着に貢献した。都道府県からも、地域医療改革を主導する新たなカリスマが次々と現れることを期待したい。