【社説】医療事故調査 再発防止の目的を第一に

2015.02.24

【社説】医療事故調査 再発防止の目的を第一に
2015.02.23 西日本新聞

   
今年10月から始まる医療事故調査制度の運用指針を協議している厚生労働省の検討会で、遺族への説明方法や調査対象などをめぐって意見が激しく対立している。

 当初予定の今月中に結論を出せるか不透明な状況だ。堂々巡りの議論は避け、医療の安全確保と質の向上という原点に立ち返って具体案をまとめてもらいたい。

 この新制度は全国約18万カ所の病院、診療所、助産所が対象になっている。診療行為に関連した患者の「予期せぬ死亡」を医療事故と位置付け、医療機関に対して新設される第三者機関への届け出と院内調査の実施を義務付けた。

 第三者機関は各病院から寄せられる調査結果を分析し、再発防止のために情報を提供する。遺族が医療機関の調査結果に納得しない場合は、遺族から依頼を受けて直接調べることもできる。

 厚労省検討会は医療関係者や弁護士、患者団体代表などで構成され、昨年11月から議論している。

 遺族への説明では「口頭または書面の適切な方法を医療機関の管理者が判断する」とした厚労省案について、患者団体代表が「書面を後でしっかり読み、納得したい」と口頭のみの説明に異を唱えた。これに対し、医療関係者は書面が裁判などの紛争に使われることへの懸念を表明している。

 調査対象でも「予期せぬ死亡」を狭義に捉える医療機関に対し、弁護士らが反発した。対立の背景にあるのは、真実を知りたい患者遺族らと、刑事事件化を避けたい医療機関の立場の違いだろう。

 この制度創設が提唱されたのは、1999年に公立病院で医療事故が相次ぎ発覚し、医療に対する国民の信頼を損なったからだ。

 これを機に医療事故の民事訴訟が急増し、警察が医療事故として捜査する事例も増えてきた。

 厚労省の試算では、診療行為に関連した死亡事故の症例数は年間約1300~2千件にも及ぶ。新制度の目的は医師の責任追及ではなく、あくまで再発防止である。医療の信頼回復に向けた建設的な議論を検討会に求めたい。