(地域包括ケア@新潟:2)地域医療構想、地元は声上げて 渡部透・県医師会長に聞く/新潟県

2015.02.02

(地域包括ケア@新潟:2)地域医療構想、地元は声上げて 渡部透・県医師会長に聞く/新潟県
2015.01.31 朝日新聞


 2015年度から都道府県ごとに地域医療構想(ビジョン)の策定が始まる。

団塊の世代が75歳以上となり、医療・介護の需要がピークとなる25年を見据え、地域の態勢作りを描く計画だ。県内のキーパーソンの一人、県医師会の渡部透会長(新潟南病院理事長)に話を聞いた。


 ――医療や介護を巡る県内の課題は何ですか。

 医師、看護師、介護関係の職種も、みんな不足している。
全国的な医師らの偏在のため、県には絶対的な数の不足がある。加えて県内でも、都市部と郡部の間で偏在があり、二重苦のような形になっている。

 対応として、今のところ、新潟大医学部の定員を増やしているので、医師の成長を待つということが一つ。
もう一つ、研修医の数をもっと増やしていくことも必要だ。さらに、県外から医師免許を取った人を招請する取り組みも課題だ。

 県が「地域医療支援センター」を運営しているが、今後は医師会、新潟大医歯学総合病院などがセンターの機能強化に協力し、医師確保を進めたい。将来的には、医師の配置に関し、同センターでできるような態勢作りを目指したい。総力を挙げてやる。

 ――昨年4月の消費増税財源で、医療や介護を充実させるための基金が県にもできました。

 基金のお金をどのように使うかを決める14年度の県計画を作る際、県医師会は、県歯科医師会や県薬剤師会、県看護協会などとともに、県と何度も話し合った。

厚生労働省のヒアリングにも行った。税金を使うのだから、行政のひとりよがりに使ってもらっては困る。

13年4月には、医療や介護に関わる29団体をまとめて県民医療推進協議会を作った。

会を中心にしてみんなで知恵を出し合い、使い方を提唱していくことを狙っている。

会からは、今後、やる必要があることに関するアイデアが多く出てきている。どのように実現していくか、我々の力が試されている。


 ■受診先適正化を

 ――15年度から都道府県ごとにビジョンの策定が始まります。何が大切だと思いますか。

 病院の機能だけでなく、患者の動きを変えていくことが必要になる。そのため、国民健康保険、大企業向けの健康保険組合、中小企業向けの協会けんぽなどの健康保険を運営する保険者がもっと頑張らなければならない。

保険者が患者に対して「適正な医療はこちらで、費用も安く済み、生活の質も高まりますよ」と言わないといけない。
医療費の適正化もできる。医療へのフリーアクセスは大切だが、適正なフリーアクセスがあるはずだ。
ビジョンを作る際には保険者を巻き込み、協力し合うことが求められている。

 ――地域包括ケアはどうですか。

 在宅での医療や介護を望む人の願いをかなえることが大切だ。現在でも多くのかかりつけ医が、午後から在宅医療へと出ている。

けれど、支える態勢が不十分だ。特に24時間の支援をどうするかが課題だ。
人口の少ない郡部では訪問看護ステーションの経営も難しい。こういった必要だけれどもやるのが難しいサービスは、地域で話し合って、みんなで合意をすれば税金を投入できる制度が良い。

 地域包括ケアの態勢作りのため、県医師会と郡市医師会内に在宅医療推進センターを設け、様々な職種での連携に向けた課題の検討などを進めていく。

 あり方は地域ごとに異なる。医師が少ない所、比較的余裕のある所など、地域の特性がある。

それを踏まえ、市町村からボトムアップ(底上げ)する形でビジョンに盛り込まなければならない。国に余計な口出しをさせてはいけない。

ビジョンができる前、国が診療報酬や介護報酬で全国一律に縛ったり、ある方向に誘導したりするのは困る。ビジョンができあがった後、地域で足りない部分にだけ、報酬をつければ良い。


 ■行政は現場見て

 ――住民や行政は、ビジョン作りにどのように関われば良いか。

 住民の方はどんどん声を出して欲しい。
どんどん要望して、自らの希望や窮状を訴えて欲しい。みんなが真っ正面から受け止め、激論をかわすことが一番大事だ。
住民と医療・介護の関係者がお互いの実情を知ることで、うまく話が進むと思う。
行政の人はもう少し現場を歩いて欲しい。
地域医療ビジョンは、住民の協力がなければ絵に描いた餅になる。地域密着型の民主主義が大切だ。
差し迫った問題として、医療・介護から議論を進めていければいい。

 (聴き手・松浦祐子)