(ちゅうごくライフ)潜在看護師、復帰の一歩 高齢者定期訪問・妊婦に付き添い通院/中国・共通

2015.01.20

(ちゅうごくライフ)潜在看護師、復帰の一歩 高齢者定期訪問・妊婦に付き添い通院/中国・共通
2015.01.17 朝日新聞


 ◇医とケア


 出産や子育てで現場を離れた看護師らが訪問看護・介護サービスを提供する事業「わたしの看護婦さん」を昨秋、鳥取県米子市の看護師が始めました。取材すると、看護や介護が必要な人を支えるだけでなく、離職した「潜在看護師」の職場復帰も手助けする活動だとわかりました。


 看護師とケアマネジャーの資格を持つ神戸(かんべ)貴子さん(40)。昨年9月末、「N.K.Cナーシングコアコーポレーション」を立ち上げ、事務所を米子市内に開設した。現在、第一線を離れた看護師15人や介護福祉士5人をスタッフとして登録し、依頼があれば派遣している。登録している看護師は、主婦や高齢者施設のパートなど様々だ。

 年明けの5日、同市内の高齢者向けマンションの一室。胃かいようの手術を受けたばかりの一人暮らしの80代女性の体調が急変した。この日訪問していた神戸さんが血圧を測定。平常時より低く、調べた便が潜血便だったことから、内臓出血を疑った。医師に連絡し、指示を受けて救急搬送。「医療知識のない人に比べ、迅速に対応できたのではないか」と神戸さん。

 サービスには、一人暮らしの高齢者宅を定期的に訪問して健康チェックをする「看護師パトロール」、高齢者や妊婦と一緒に通院する「病院付き添い」、共働き家庭を対象に子どもの急病時の通院や一時預かりをする「病児シッター」(事前の会員登録が必要)がある。

 いずれも保険適用外で料金は1時間あたり1600~2200円。通院先への移動には別途タクシー代がかかる。既存の訪問看護ステーションと同様、主治医の指示範囲外の医療行為はできない。

 神戸さんがこの事業を始めたのは全国71万人(2012年度の厚労省委託研究の推計)と言われる潜在看護師の職場復帰を支援できると考えたからだ。自身も高校生と中学生の2児の母親。出産と夫の転勤を機に、16年前に兵庫県内の病院を退職した。米子市に転居した10年前に復職を考えたが、子育て中だったため非常勤で自治体の健康診断を担当する仕事を選んだ。

 電子カルテ導入なども復帰を躊躇(ちゅうちょ)させる一因だ。「施設や医療技術の進歩についていくことを考えると医療機関での本格的な復職はすぐには難しい。一つ段階を踏む意味もある」

 病児シッターは看護師仲間の利用も視野に入れる。昨年7月に長男朔(はじめ)ちゃんを出産した同市内の看護師・川井めぐみさん(27)は4月に復職予定で、病児シッターを依頼するつもりだという。「何かあった時に、医療のわかる立場で見てもらえるのは安心」と話す。

 職員用の病児保育所(定員2人)を院内に設けている鳥取大医学部付属病院(米子市)は昨年12月、神戸さんらを招き、病児シッターの利用説明会を開いた。企画した同病院ワークライフバランス支援センター副センター長の谷口美也子准教授は「看護師の働き方を理解している人のサポートが得られることで早い職場復帰につながる」と話す。(古源盛一)


 ■就職紹介や研修、国が支援 「常勤」で求人・求職かみあわず

 厚生労働相の諮問機関の一つ、社会保障審議会の医療部会は2013年10月、団塊世代が後期高齢者になる25年に必要な看護職員(看護師、准看護師、助産師、保健師)を約200万人と公表した。

 12年時点での看護職員数は約154万人。46万人増やさないといけないが、毎年の新規資格取得者4万9千人に対し、出産や育児、介護による離職者が2万4千人いるため増加ペースは年2万5千人にとどまる。

 離職者の復職を進めようと、国は昨年6月に地域医療・介護推進法を成立させ、各都道府県で無料で就職あっせんをする「ナースセンター」が離職者を正確に把握できるようにする制度を創設した。育児や介護が一段落する前からの情報提供や研修支援などをしやすくする試みだ。

 現状でも医療や介護施設での人手不足は深刻だ。03~12年度にナースセンターがまとめた求人・求職情報を分析した日本看護協会によると、12年度の求人倍率は2・70倍で10年間で2倍近くに上昇した。中国5県では岡山が2・74倍と最も高い=表。雇用形態別では常勤雇用が3・16倍。一方で常勤を希望する求職者は10年前から半減した。

 協会の看護労働・確保対策担当専門職の奥村元子さんは「病院の求人の多くは常勤であれば交代制勤務(夜勤)ができることを求める。家庭との両立を目指す人は処遇は劣っても非常勤を選ばざるを得ない状況が続いている」と話した。


 ■県別のナースセンターの求人倍率(2012年度)

 県名 求人倍率  対前年差

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 鳥取 2.55 +0.51

 島根 1.47 -0.21

 岡山 2.74 -0.17

 広島 1.94 -0.13

 山口 1.73 -0.19

 (日本看護協会の「『都道府県ナースセンター登録データ』分析結果~潜在看護職員の就業に関する報告」から作成。常勤、非常勤、臨時雇用を含む)


 ■追伸 記者より

 10年前、東京都内の実家での看護を検討したことがあります。当時は訪問看護ステーションが少なく、諸事情もあって終末期の母の希望をかなえられなかったことを思い出しました。神戸さんが始めた事業は看護師確保の一助になるだけでなく、肉親の在宅看護を願う人の心強い味方になると思いました。(古源)