特報=小児の夜間救急医療体制 「熊本方式」存続の危機 協力医高齢化で確保急務

2015.01.03

特報=小児の夜間救急医療体制 「熊本方式」存続の危機 協力医高齢化で確保急務
2014.12.29 熊本日日新聞


 「熊本方式」として医療連携の全国的な手本とされ、33年間続いている熊本市の小児夜間救急体制が存続の危機を迎えている。

協力する小児科開業医の高齢化が進み、5年後には現在の2割減と体制維持が困難な見通しだ。新たな医師確保が急務となっている。

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 24日夜、同市中央区本荘の熊本地域医療センター。熊本市南区の母親(27)に抱かれ、生後6カ月の女児が受診した。せきが出て苦しそうだという。

当番で益城町の開業医、芳賀雄作さん(38)が診察し、「お薬を出しますね。夜は暖かくして過ごしてください」。

母親は「初めて受診した。出産した病院から夜間の救急はここか日赤と聞いていたので」。不安げな表情が和らいだ。

 熊本方式は1981年11月にスタート。

熊本市が同市医師会に委託し、同医師会が開設した同センターで対応している。

スタッフは、同市と近隣市町の小児科開業医43人、熊本大病院小児科医局員13人程度、同センター小児科常勤医5人の総勢約60人。

 基本的に午後7時~午前0時の「準夜帯外来」を開業医、同0時から翌朝8時までの「深夜帯外来」は熊本大または常勤医が担当する。

55歳未満の開業医は休日・祝日前夜の深夜帯を受け持つことも。入院は24時間体制で常勤医が対応する。

 ●平均55歳

 協力医には同市と近隣市町のほとんどの小児科開業医が参加。年齢は38~67歳で、平均55・4歳と高齢化している。
夜間の救急患者に対応する激務のため70歳が「定年」。5年後は約35人に減る見込みだ
。深夜帯も受け持つ55歳未満は8~10人に半減するという。

 最も多い開業医は、月2回・年間24日を担当。出動協力医調整協議委員会委員長の緒方健一医師(58)は「熊本方式は安心して子育てできるための大事なインフラだ。
だが食事も取らず、自分の勤務を終えて当番に入る開業医も少なくない。高齢化で無理はできなくなっている」と話す。

 同センターの夜間休日救急を受診する小児患者は年間約1万8千人。

ワクチンや抗生剤の充実、少子化などで患者は減少傾向にあるが、半数は深夜帯。小児科部長の柳井雅明医師(44)は「大半は軽症の患者だが、一方では緊急性の高い子どもたちも受診しており、24時間対応できる施設が必要だ。ただ、深夜の勤務はつらくリスクもあり、協力医は集まりにくい。
熊本大は県内外の病院に多くの小児科医を派遣しており、できる範囲で最大限の協力をいただいている。常勤医も厳しい職務をこなすのに精いっぱいだ」と話す。

 ●市外が4分の1

 熊本方式の維持は、熊本市だけの問題ではない。患者の約24%は、上益城郡、宇城市、宇土市、合志市など同市外が占める
。医療資源の充実した熊本市が郡部の医療を支えている格好だ。

 長年続く熊本方式をもし廃止、縮小した場合はどうなるのか。

 開業医や地域の拠点となる基幹病院などが夜間や休日の時間外に新たに対応する必要が出てくる。軽症から重篤な患者まで対応する熊本赤十字病院(熊本市東区)には、年間約2万3千人もの患者が救急外来を受診。同センターが対応している患者の受け入れは難しく、医療機関の体制を根本的に変えるのは困難とみられる。

 柳井部長は「熊本方式を今後も細く長く続けるしかない。一部の医師に負担が偏らないよう、疲弊しない体制づくりが必要だ」と訴える。「参加できる医師を“草の根運動”的に募りたい。基幹病院の若い勤務医に少しでも協力をいただける環境を確立したい」

 同医師会に対する市の委託料は、成人の救急対応を含めた「休日夜間急患センター診療事業」として、年間1億5700万円(14年度)。柳井部長は「公の事業である熊本方式がこのままでは破綻しかねないことを市民や医療者に理解してほしい」と力説。今後は熊本市、市医師会など関係機関が連携する「5年後を考える会」(仮称)を立ち上げ、対応策を話し合う予定だ。

 市医療政策課の米納久美課長は「熊本方式は子育て支援としても重要な事業で継続したいと強く願っている。医師の使命感には頭が下がる思いだ。市全体の救急体制の現状を踏まえ、検討すべき課題を関係機関と整理していきたい」と話している。(高本文明)