=現論= 地方創生 地域でじっくり考えよう 頑張った揚げ句 本当に何が必要 国は待つ度量と忍耐力を

2014.12.22

 

  =現論= 地方創生 地域でじっくり考えよう 頑張った揚げ句 本当に何が必要 国は待つ度量と忍耐力を

2014.12.21 佐賀新聞 

 安倍政権の目玉政策の一つが「地方創生」だろう。この先わが国は人口減少と東京への人口流入がいっ そう進む。地方では若い人がどんどん少なくなり、いずれあちこちで自治体経営すら成り立たなくなると いう。

 全国のおよそ半分にも及ぶ自治体が、「消滅可能性自治体」だと名指しされもした。消滅を避ける は、国も地方もどんな手を打たねばならないのか。

 

 〈頑張った揚げ句〉

 先の臨時国会は「地方創生国会」とも称されていた。さぞかしこうした問題を中心に論戦が繰り広げら れるものと期待していたが、関連法をそそくさと仕上げただけで衆院選に突入してしまった。いささか肩 透かしを食らわされた感がある。

 その国会でぜひ取り組んでもらいたかったことがある。それは「さあ、これから何をするか」と性急に 物事を進めるのではなく、その前に、これまでの地方政策をじっくり点検することである。

 地方の人口減少は決して今に始まったことではない。毎年3月末には人口がどっと減る。就職や進学で 若者が都会に出ていくからだ。4月からそれなりに子供が生まれることで人口は徐々に増え、ある程度は 持ち直す。しかし、1年後の3月にはやはり若者がどっと出て行ってしまう。この繰り返しで、地方の人 口は着実に減ってきた。

 こうした状況を打開するため、手掛けてきたのが地域活性化策や地方の景気対策だった。疲弊した地方 経済を立て直し、地域の雇用を創出するために公共事業にも巨費を投じてきた。地方は手をこまねいて何 もやらなかったわけではない。精いっぱい頑張ってきて、その揚げ句が今日のありさまだという事実をまずは認識しなければならない。

 最近いろんな地方を訪ねた際に強く印象に残るのが、道路や公共施設がちゃんと整備されていることだ。国の政策誘導と財政支援があったこともあり、自治体は長年迷うことなく道路や箱物の整備に力を入れてきた。

 ところが、そうした地方で問題になることの一つが、住民が移動するための交通手段の確保が難しくなったことだ。それまで走っていた路線バスが徐々に運行本数を減らし、とうとう路線自体が廃止されて しまったところも少なくない。足を奪われた高齢者は、皮肉にも家の前を立派な道路が通っているというのに病院に行くことすらままならない。

 地域に残っている数少ない若夫婦は、それでも自分で車を運転して病院に通うことはできる。しかし、いざ出産となると、最寄りの町立病院には産婦人科の医師がいないことを思い知らされる。予定日が近づくと、妊婦はやむなく都会に出て待機を余儀なくされる。これでは安心して子供を産めない。

 

〈本当に何が必要〉

 振り返ってみて、どこかずれていた。住みやすい地域にしようと頑張ってきた結果がこんなことなのだ ったら、道路や箱物ばかりにお金をつぎ込むのではなかった。町の借金もこんなに多くはなく、今頃はバス路線を維持するための赤字補填(ほてん)もできたし、町立病院の医師を確保するに十分な給与も支払えただろう。ある町長さんの述懐である。

 「地方創生」を掲げる国は、相変わらず「頑張る」自治体を応援するという。頑張った成果が、またぞ ろ施設整備と積み重なる借金ということでは、「地方創生」どころか事態はますます悪化し、「消滅可能 性自治体」を増やすだけに終わる。

 やみくもに頑張るのではなく、地域の現在、将来にとって何が必要か、まずは自治体が住民と一緒にじっくり考えることから始めなければならない。「アイデアを早くもってこい」と自治体をせかすのではなく、国にはそれをじっと待つだけの度量と忍耐力が必要だ。

 考えた末の結論が、ひたすら頑張るのではなく、住民生活に必要とされる地道な施策を最優先しようと いうのであれば、それでいい。既に一部の過疎地では生活のための交通手段や地域医療の確保について国が支援するようになった。

 これを過疎地以外の地域にも広げることがあっていい。地域が本当に必要とするのは何か。国が決めつ けるのではなく、地域自身が肩の力を抜いて素直に考えることができる。ぜひそんな「地方創生」であっ てほしい。(慶応大教授)

 かたやま・よしひろ 51年岡山県生まれ。東大法学部卒。自治省に入り、府県税課長などを経て、9 9年鳥取県知事に就任。2期で退任し07年より現職。10年の菅改造内閣で総務相。地方制度調査会副 会長なども歴任。著書は「日本を診る」など。