(アベノミクスを診る@東海:下)見透かされる財政難 2014衆院選 【名古屋】

2014.12.13

(アベノミクスを診る@東海:下)見透かされる財政難 2014衆院選 【名古屋】
2014.12.12足新聞



 ■公共事業 人減らす建設業

 アベノミクスの下で、公共事業の予期せぬ入札不調が相次いでいる。

 2018年に三重県を中心に開催される全国高校総体(インターハイ)。その会場の一つとなる屋内スポーツ施設「サオリーナ」の建設を巡る25日の入札に、完成が大会に間に合うかどうかがかかる。大会関係者は固唾(かたず)をのんで見守る。

 入札は今回で4回目。津市が発注するサオリーナは、レスリング五輪女子を3連覇した地元出身の吉田沙保里選手が名付けた。当初は16年4月にオープン予定だった。だが、昨年6月以降の3回の入札は、いずれも予定していた価格で請け負う業者は現れず、工事は1年半も宙に浮く。

 津市は4回目の入札に予算を引き上げて臨む。隣接する武道館も含めた新たな予定価格は約121億円。消費増税分も含めて当初より47億円も膨らむ。税収が年間400億円ほどの津市には大きな痛手だ。

 それでも25日の入札がうまくいけば、17年秋に完成してインターハイに間に合う。失敗すれば、地元が期待していたバレーボールなどの会場は、「代わりを探さざるを得なくなりそう」(津市の担当者)という。

 三重県桑名市でも10日、地域医療を担う新病院の3回目の入札が不調に終わった。「住民は開業を心待ちにしている。これ以上の遅れは避けたい」。当初の開業予定から2年も遅れ、市の担当者の悩みは深い。

 入札不調が相次ぐ背景には、名古屋駅前の高層ビル建設ラッシュなどで人手がとられていることに加え、安倍政権が計15兆円強の経済対策を打ち、公共事業を拡大したことがある。民主党政権での削減方針が一転し、「業者はもうからない仕事を無理に取ろうとしない」(三重県建設業協会の松井明専務理事)という。

 「久々に建設業界にフォローの風が吹いている」。矢作建設工業(名古屋市)の藤本和久社長はこう喜ぶ。15年3月期の純利益予想36億円は2年前の3倍。得意とする小中学校の耐震改修工事の予算が増え、過去最高益を更新する。

 多くの作業員を必要とする公共事業は、雇用拡大の効果が大きいとされる。ところが、足もとで雇用を増やす動きは鈍い。

 今年7~9月の静岡県を含む東海4県の建設業の就業者は54万人で、2年前より2万人減った。ピークの2000年(78万人)より3割も少ない。矢作建設工業は来春、今春より10人多い40人を採用するが、定年などで抜けるため、社員数はほぼ変わらない。藤本社長は「公共事業に頼った経営はできない」と言う。

 4月の消費増税で税収が増えても、今年度予算96兆円のうち、4割超の41兆円を国債(借金)に頼る。国のそんな懐具合を建設業者も見透かす。「公共事業は減らされるに決まっている。人を増やす会社なんか聞いたことない」(名古屋市の道路工事会社社長)


 ■大学生 将来負担に不安

 2日の衆院選公示後、名古屋市内の二つの大学のゼミで、各党が掲げる経済政策が議論のテーマになった。ともに話題にのぼったのが「世代間格差」だ。

 「高齢化が進み、高齢者に迎合した政策が並んでいる」。3日にあった名古屋大大学院経済学研究科の柳原光芳教授のゼミでは、学生からこんな声が出た。

 3年生の中山裕貴さんは日本の財政状況に不安を感じている。「消費増税は3%でもきついけど、国の将来を考えると、いま上げるしかない。このままだと若者ばかりが損をする」

 4日、名古屋市立大人文社会学部の伊藤恭彦教授のゼミで将来不安について問うと、16人の学生のうち10人が「ある」と答えた。

 4年生の石川紅舞さんは言う。「どこが政権をとっても、きっと自分たち若い世代が割を食うことだけは変わらないんですよ」

 国の借金は今年度末に1144兆円に達する見込み。いずれ自分たちが借金を返さねばならないことに若者も気づいている。

 (大日向寛文、鈴木毅)


 ■東海地方で公共事業の入札不調が相次いでいる

 ◇地方自治体 事業

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 ◇愛知県 県立愛知総合工科高校建設

 〈概要〉3回目の入札で落札も工事費は当初計画の6割増しに。開校も1年遅れ

 ◇豊田市(愛知県) 市美術館改修

 〈概要〉入札不調で業者が決まらないまま休館。2回目の入札で3分の2の工事は業者が決定

 ◇半田市(同) 新庁舎建設

 〈概要〉入札不調を受けて工事費を増額して契約。工事中の資材価格高騰でさらに上積み

 ◇豊橋市(同) 市美術博物館の収蔵庫建設

 〈概要〉入札不調で工事費を増額

 ◇津市 市産業・スポーツセンター建設

 〈概要〉サオリーナなど。3回にわたって入札不調

 ◇桑名市(三重県) 市総合医療センター建設

 〈概要〉10日にあった3回目の入札も不調に。すでに開業は2年遅れに

 ◇岐阜市 新図書館などの複合施設建設

 〈概要〉不調に伴う入札のやり直しなどで、開館が半年ほど遅れる

 ◇多治見市(岐阜県) 新火葬場建設

 〈概要〉入札不調で建設費が1割膨れあがった