医師確保なお宿る課題 お産環境 都市偏在解消を国に求める声 島根

2014.12.02

医師確保なお宿る課題 お産環境 都市偏在解消を国に求める声 島根
2014.11.30 中国新聞

[現場から2014衆院選]


 医師不足にあえぐ県西部で、益田赤十字病院(益田市)が12月1日から、6年ぶりに里帰り出産の受け入れを再開する。

産婦人科の常勤医師が1人着任して4人に増え再開にこぎ着けたが、うち3人は60代で今後の医師確保が課題となる。

衆院選(同2日公示、14日投開票)が迫る中、懸命な努力を続ける現場からは、都市部に医師が偏在する問題の解決を国に求める声が上がっている。(江川裕介)

 「里帰り出産の受け入れは地域の最重要課題。再開するからには途中でまた中止という事態は許されない」。17日、病院での記者会見で木谷光博院長は再開へ決意を示した。

 同病院は市内唯一の開業医の廃業に伴い、常勤医師3人体制では分娩(ぶんべん)の安全確保が困難として2008年11月から受け入れを中止。
11年には1人に減って、一時は分娩制限もした。島根大医学部(出雲市)から1人の着任が決まり、再開が実現した。

 現在の常勤医師3人は退職が迫る60代で、里帰り出産継続には同大の支援が不可欠。

毎月1回、同病院の外来診療の応援に駆け付ける京哲・産科婦人科教授は「地域医療を支えてこその国立大学。お産という基本的な社会保障も保てずに地域の発展はない」とし、大学病院での業務を改善して人繰りをつけ、若手医師の派遣を中心に支援を続ける考えを示す。

 厚生労働省の調査(12年末)によると、産婦人科医師は県東部の54人に対し、西部は14人。面積が広く交通網も脆弱(ぜいじゃく)な県西部は通院面での制約などもあり、県東部で受けられる医療と差が生じがちだ。

 医師が偏在した要因の一つは、2004年に始まった医学部の卒業生が研修先を選ぶ新臨床研修制度にあるといわれる。
京教授は「都市部で研修し、そのまま就職するケースが増え、医局制度が担保していた地域性が失われた」と指摘する。

 さらに日本産科婦人科学会などが12日に公表した

10年後の産科医師数の試算は全国で6・9%、東京都で32・2%増える半面、島根県は12・5%減。一層、医師の偏在が進むことを示した。

 益田赤十字病院はお産の質を保つため、10月から助産師が中心となって分娩を担う院内助産も始めた。

木谷院長は「新臨床研修制度開始から10年が過ぎ、答えを出す時期が来ている。『医療は人への奉仕』という本分に立ち返り、国は人員を地域へ配する仕組みづくりに取り組むべきだ」と話している。