(政権2年を問う)社会保障と消費税 保育所も特養も施設整備追いつかず 2014衆院選

2014.11.27

(政権2年を問う)社会保障と消費税 保育所も特養も施設整備追いつかず 2014衆院選
2014.11.26 朝日新聞



 「0」「0」「0」。自治体のウェブサイトに並ぶ園児募集の人数を目にするたびに落ち込む。「ここまで空きがないとは……」

 東京都足立区の女性(29)は、4歳の長男と1歳の次男を、来年4月から一緒に預けられる認可保育所を探す。
自宅から通える範囲の保育所の状況を何度もチェックしたが、まだ空きが見つからない。

 会社員の夫を含む4人家族。長男を認可保育所に預け、保険会社で営業の仕事をしていた。

2013年に次男を出産、育児休業に入った。今年4月の復職を目指していた。
長男と同じ保育所に次男を預けようと申し込んだが、定員オーバーで入れなかった。

 通勤などを考えると別々の保育所に送り迎えするのは難しい。

復職をあきらめて育休を延長した。それを区に伝えると、復職しないならという理由で、長男も4月から保育所の利用ができなくなった。

 将来の教育費や住宅購入を考えると共働きが必要だ。タイムリミットは迫り、いまは「認可外」も含めて探す。

保育所に入りやすい自治体への転居も頭にある。「兄弟一緒に通える認可保育所を望むのはぜいたくかもしれないが、保育所の数が少なすぎる」

 女性が生涯に産むとされる子どもの数は13年推計で1・43。人口を維持できる2・07を大きく下回る。保育が必要なのに保育所に入れない待機児童は4月時点でなお2万人を超す。

国立社会保障・人口問題研究所がまとめた社会保障分野のお金の支出状況(12年度)をみると、保育などの子育て支援を含む家族向けは約6兆2千億円で、高齢者向けの8分の1以下にとどまる。

 消費増税の税収を活用した子育て支援の充実は、社会保障改革の看板だ。

再増税先送りでも、保育の受け皿を17年度までに40万人分増やす目標はおろさないし、「子ども・子育て支援新制度」は来年度から始める。

そう安倍晋三首相は強調する。

 ただ子育て支援拡充に必要なお金は1兆円を超え、消費税を10%に上げても約4千億円不足すると指摘されてきた。

再増税を先送りしても財源を手当てし、待機児童解消を達成できるのか。衆院選後に政治の本気度が問われる。

     □

 「いつもごめんね」

 千葉県袖ケ浦市の短期入所施設に入る88歳の女性は、月2回面会にくる60代のおいに声をかけた。

特別養護老人ホーム2カ所の入居を待ち、7カ月たった。要介護度は7段階で2番目に重い「要介護4」だ。

 夫が亡くなり一人暮らし。子はいない。

昨年夏から週に2回のデイサービスと3回の訪問介護を使っていたが、1月に自宅で転んで額を十数針縫った。3月には家具の下敷きになっている状態で見つかり、入院した。家で暮らしたがったが、数少ない身内の一人であるおいは「在宅は限界だ」と焦りを募らせる。

 この女性のように特養を「入居待ち」する高齢者は約52万人いる。状況はさらに厳しくなる。

いま人口の約13%である75歳以上の高齢者は、25年には2割弱に増える。介護費用を抑制するため政府は「施設から在宅へ」の改革を進める。

 だがこの女性が暮らせるほどの支援態勢の整備は追いついていない。

早朝夜間も24時間態勢で訪問介護や看護を受けられるサービスの普及も遅れ、事業所がない自治体も多い。介護職員不足も深刻だ。現場からは「(事業所はあっても)ヘルパー不足で夜中は来てくれない」との声もあがる。

 安倍政権のもとで6月に成立した「地域医療・介護推進法」には、特養への新規入所を原則「要介護3」以上に絞るなどの厳しい中身が含まれている

介護保険制度を維持するための「痛み」。とはいえ高齢者や家族の立場で見れば、老いの安心はどんどん遠のくように見える。