施設 施設の豪華さの陰に落とし穴 高級"サ高住"のあきれた実態

2014.11.04

施設 施設の豪華さの陰に落とし穴 高級“サ高住”のあきれた実態(2014.11.08 週刊ダイヤモンド)


2011年の「高齢者住まい法」改正で誕生した新しい老後の住まい、サービス付き高齢者向け住宅。
その数は右肩上がりだが、外観からはうかがい知れないリスクも増えている。


 安い有料老人ホームと思われがちのサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)。

 賃貸住宅のため、原則として入居の権利を買い取る有料老人ホームとは契約方法などが大きく違うのだが、特別養護老人ホームなど高齢者の受け皿が不足する中、国の優遇策も相まって急増中だ。

 2011年11月の30棟から、今年9月までの3年弱の間に、4932棟へと164倍に増えた。

 だが、この急拡大の陰で、リスクも取り沙汰される。経営難に陥る事業所が増えているのだ。

 介護施設の幹部は、「最近、ずさんな収支計画から経営難に陥り、事業者が代わるケースが増え、不動産オーナーや入居者とのトラブルも比例して起きている」と語る。

 かねて、サ高住はサービスの質で玉石混交とされ、国も目下、質の向上のための検討を始めてはいる。だが、現状では、外観の豪華さや費用、サービス内容だけで“終の棲家”を選ぶと、後で泣きを見る羽目になりかねないのだ。


経営の甘さで事業者が交代 ツケは入居者へ


 「当社の営業力の限界で、今後も改善の余地を見いだせません」

 10月初旬、大阪市の天王寺駅に程近い“高級”サ高住で、1枚の説明資料が配布された。運営難による「経営権移管」を入居者などに知らせる内容だ。

 コンサルティング会社、介護事業研究会(介研)が12年6月に肝いりでオープンさせたケア・ブリッジ阿倍野。自戒を込めて記すが、ここは本誌13年4月27日・5月4日合併号に掲載した介護特集における「サービス付き高齢者住宅ランキング」で、「立地の利便性」や「居室の設備」などの項目で高得点を挙げ、大阪府の総合1位になった施設だ。

 ところが、「設備や立地は立派だが、経営実態のまずさの方が、地元の業界関係者の間では有名だった」と府内の業界幹部は明かす。

 ケア・ブリッジ阿倍野は全72室。
しかし、「(入居者数)30人のハードルを越えられない状態」(同社資料)が続いていた。サ高住の損益分岐点は、入居率70%以上が目安とされる中、4割を切っていたのはいかにも厳しい。

 12月1日を予定する経営権の譲渡先は、関西進出を狙う介護大手、学研ココファンで、入居条件は引き継がれる予定だ。

 だが、介研の経営の甘さによる事業者の交代は、これにとどまらない。府内にある別の複数のケア・ブリッジでも事業者が代わっているのだ。

 そのうちの一つに絡み、大阪地裁は昨年2月、ある債権差押命令を出した。

 介研から事業を引き継いだ会社は「他の法人のことなので言えない」とするが、別の関係者によると、介研は、この物件の不動産オーナーに支払う契約をしていた入居者の家賃や、オーナーが立て替えた内装費や広告費など合計375万円を支払わなかったという。

 そのためオーナーが差し押さえを請求。
だが、オリックスに債権譲渡されているため、命令が出た今も差し押さえできないままだ。

 このオーナーは、医療・介護コンサルティングを本業とする介研の島内紀行社長と、関西電力の介護事業子会社、かんでんジョイライフの幹部(当時)から、事業を持ち掛けられたという。

 前回の特集の取材に対し、「最大級の満足と安心を提供したい」と語っていた島内社長。

この事態に「差押命令は事実だが、経営権の譲渡により得られる利益で未払い金を清算するつもりだった。提携先の関電子会社と引き継ぎ先の事業者との話し合いで、われわれ抜きで見込みよりも減額されたことが原因」とし、「入居者集めやサービスは関電子会社が担っており、介研の営業力の問題ではない」と釈明する。

 何はともあれ、このような運営リスクは、同社に限らない。

 高齢者住宅財団が実施した、サ高住への参入事業者に対する収支計画調査(12年3月)で、「事業全体で採算が合えばいい」との回答が54・8%と、「住宅事業、介護事業など事業別に収支計画を立てる」(44・8%)を上回った。

 つまり、過半数の事業者が、介護保険や医療保険からの収入を当て込んだ“大甘”な事業計画を見込んでいるといえる。

 悪質なケースでは、銀行の融資を引き出しやすくするため、「事業計画書に記載する入居者の要介護度の平均値を、より多くの介護報酬が見込める現実離れした高い数字に設定する事業者もある」(別の業界幹部)という。

 こうしたずさんな経営は、サービスの質の低下にもつながりかねず、割を食うのは入居者だ。たとえ、施設が豪華でも、入居を決める前に入居率や事業者について調べた方が良さそうだ。


Column 報酬削減で医師撤退続出 取り残される高齢者たち


 いつもの先生が来なくなった──。4月以降、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などの高齢者施設の診療現場で、異変が起きている。訪問診療から撤退する医師が続出しているのだ。

 サービス付き高齢者向け住宅協会など4団体のアンケート調査結果によると、医師が撤退・交代したサ高住や有料老人ホームなどの施設は、1764カ所中155カ所に上った。きっかけは、施設を訪れてまとめて診察した場合の診療報酬が、4月の改定で大幅に減額されたことだ。

 在宅医療を推進するため、訪問診療にはもともと高めの報酬が設定されていた。サ高住を月2回以上訪問診療した場合の加算報酬である「在宅時医学総合管理料」は月4万2000円で、1回当たりの訪問診療料は2000円が一般的だった。

 ところが、4月以降は管理料が1万円、訪問診療料が1030円と、約4分の1に引き下げられたのだ。

 厚生労働省が大ナタを振るった背景には、施設の高齢者を医師に紹介し、診療報酬の2割を「紹介料」としてキックバックさせる「患者紹介ビジネス」の横行がある。医師も大量の“顧客”を効率良く診察できるうまみがあり、「関西のある私立大学の新人医師ばかりを年収数千万円で集め荒稼ぎしたケースもある」(関係者)。

 ただ、厚労省は施設から医師の足が遠のかないよう「緩和措置」も行っている。施設を訪問しても1人しか診察しなければ、報酬を減額しない仕組みである。このため、最近のサ高住では、3人の医師が同じ施設を次々と訪れ、入居者を1人だけ診察して帰る光景が日常になっているといい、「非効率極まりない」(都内のケアマネジャー)。

 悪質業者を排除するための診療報酬改定だったが、当事者である高齢者は置き去りにされるばかりだ。