<診る 北の医療 医大地域枠のゆくえ>上*Dr.コトーは生まれるか*地方に医師を 鍵握る1期生

2014.10.20

<診る 北の医療 医大地域枠のゆくえ>上*Dr.コトーは生まれるか*地方に医師を 鍵握る1期生
2014.10.18 北海道新聞

 道内の医学生に卒業後の地方勤務を義務づける道の奨学金制度(地域枠)で、札幌医大から7人の新人医師が今春、初めて誕生し、研修の現場で奮闘している。制度が軌道に乗れば、最大160人の医師が地方の医療機関で勤務することになる。

医師確保に悩む市町村の期待は高まるが、地域枠は地方の医師不足解消の切り札となるのか-。(報道センターの小森美香が担当します)

 「もっと診察すべき点はなかったの?」「直腸診はした?」

 江別市立病院の総合内科で日々、開かれている症例検討会。地域枠1期生で2年間の初期臨床研修中の古川享(とおる)さん(25)が診断に苦労した虫垂炎患者について報告すると、先輩医師から矢継ぎ早に質問が飛んだ。

 足りない点を思い知らされる毎日に、「経験を積み、きちんと義務を果たしたい」と古川さん。研修後は医師の少ない地方病院での勤務が待っている。

 道は地方の医師不足を緩和するため、2008年度に地域枠を創設し、まず札医大で導入。道内出身者を対象に、入学金28万円と6年間の授業料320万円、月12万円の生活費で計1200万円を奨学金とした。

 卒業後9年間のうち、5年間を指定する地方の医療機関で働けば、返還が免除される。
地方勤務を拒否すれば、奨学金の全額返還はもちろん、違約金約400万円も支払わなければならない。

 地域枠は旭川医大も09年度に導入。
北大は「地域医療に特化した学生の受け入れは大学の理念に合わない」と設定していない。
道は徐々に枠を広げ、10年度以降は札医大15人、旭医大17人の計32人になった。
この制度の下、26年度以降は常時160人の若手医師が、地方の病院で勤務する計算となっている。

 約1万2千人いる医師の6割以上が札幌と旭川周辺に集中する道内で、地域枠は医師偏在の打開策として期待される。
しかし長年、地域医療に携わってきた50代の医師は「いわば、お礼奉公。テレビドラマの『Dr.コトー診療所』のような医師がどんどん生まれるわけじゃない」と、奨学金制度で進路を縛っているだけという弱みを指摘する。

 医師になって最初の9年間を地域医療に割くということは、最先端の高度な医療技術を学ぶ機会が限られ、専門医となるための技術を身につける時期が遅れてしまう側面も否めない。

 「将来、やりたいことができない可能性もある。後悔はないけど、受験前にはそこまで考えていなかった」。医師としての一歩を踏み出した古川さんがつぶやいた。

◇Dr.コトー診療所◇

 東京の大学病院で外科医をしていた「コトー先生」が、1人しか医師のいない離島の診療所に就職して次々に奇跡的な手術を成功させ、信頼をなくしていた島の医療の再生のために奮闘する人気漫画が原作で、2003年にフジテレビがドラマ化した。
コトー先生は吉岡秀隆さん、ヒロインの看護師を柴咲コウさんが演じ高視聴率をマーク。
06年の第2シリーズの最終回は25・9%を記録した。このドラマを医学部志望のきっかけとする受験生も少なくないという。