再生へ・上小の地域医療はいま(2)=徐々に整い始めたお産態勢 安心して産める地域に

2014.10.17

再生へ・上小の地域医療はいま(2)=徐々に整い始めたお産態勢 安心して産める地域に
2014.10.16 信濃毎日新聞



 「異常なし。頑張ってね」。
東御市民病院(東御市鞍掛)の産婦人科診察室。妊婦健診を終え、信州上田医療センター(上田市緑が丘)の甲藤(かっとう)一男婦人科部長(64)が声を掛けると、出産を間近に控えた矢嶌美鈴さん(29)=上田市上田原=は「良かった。楽しみ」と笑顔を浮かべた。

 矢嶌さんは、友人の勧めで初めての出産場所に市民病院の敷地内にある「助産所とうみ」を選んだ。
出産の前から後まで同じ個室で過ごし、畳の上などで自然な分娩(ぶんべん)ができるのが特徴。
矢嶌さんは「アットホームな雰囲気がいい。助産師さんも真摯(しんし)になって相談に乗ってくれる」と話す。

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 東御市は2010年、地域で安心してお産ができる態勢を整える狙いで助産所とうみを開設した。

今年10月7日までに計671人が出産。上田小県地域以外から訪れる母親も少なくない。
医療行為ができないため正常分娩だけを扱い、健診や医療行為が必要な場合には、嘱託医を務める市民病院の産婦人科医が対応してきた。

 だが、この医師が5月に退職し、常勤医は不在に。

現在は医療センターと県厚生連小諸厚生総合病院(小諸市)の非常勤医が健診などを担い、嘱託医は医療センターの産婦人科医が務めている。

助産所とうみの黒沢かおり所長(48)は「市民病院はすぐ隣にある。
自然分娩に取り組む助産所の趣旨を理解してくれる常勤の先生が市民病院に来てくれるとありがたい」と話す。

 非常勤医を送る医療センターも今年4月、6年4カ月ぶりに出産の受け入れを再開したばかりで、医師や助産師に余裕はない。
黒沢所長も1月から医療センターの応援に出向き、出産の受け入れ再開を支えた。
現在も助産所から助産師1人を医療センターに派遣しており、黒沢所長は「苦しい時はお互いに協力するしかない」と話す。

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 昭和大(東京)の産科医引き揚げを受け、長野病院(現信州上田医療センター)が出産の受け入れを休止したのが07年12月。受け入れ再開によって、これまで県厚生連の佐久総合病院(佐久市)や篠ノ井総合病院(長野市)へ搬送せざるを得なかった危険度の高い出産への対応が可能になった。
医療センターが今年4~8月に取り扱った分娩は計80件。うち30件が帝王切開だった。

 医療センター隣接地に12年4月に開設された上田市立産婦人科病院(上田市緑が丘)は正常分娩と軽度の異常分娩を取り扱い、昨年度は計427件の出産に対応。うち篠ノ井総合病院など他の病院への緊急搬送は16件あった。本年度の出産は計219件(9月末現在)で、他の病院への緊急搬送は12件。うち9件を医療センターが占めた。

 市立産婦人科病院は「搬送先が遠ければ、それだけ母体にかかる負荷も大きくなる。すぐ隣の医療センターで対応してもらえるのはとてもありがたい」と強調する。

 医療センターは危険度の高い出産を中心に年間200~250件受け入れる意向で、現在3人の常勤医を5人まで増やす考え。
甲藤部長は医療センターの産科再開の意義を強調しつつ、「まだまだ地域の産婦人科医は足りていない。(上小地域の出産に関わる医療は)やっと再生し始めたところだ」と指摘した。