秋田市の脳研、成人病両センターの機能統合計画 財団、建物老朽化に対応 県側、包括的医療を推進 「循環器」強化、思惑が一致

2014.10.16

秋田市の脳研、成人病両センターの機能統合計画 財団、建物老朽化に対応 県側、包括的医療を推進 「循環器」強化、思惑が一致
2014.10.14 秋田魁新報社


 県立脳血管研究センター(秋田市千秋久保田町)の循環器部門を強化するため、隣接する県成人病医療センターの職員や医療機器を活用する計画が進んでいる。

成人病センターの解散を前提としており、脳血管・心疾患の包括的医療の推進を目指す県と、建物の老朽化が進む成人病センターの思惑が一致した格好だ。

ただ、成人病センターの循環器以外の部門をどうするかなど課題もあり、県と両センターの三者は詰めの協議を急いでいる。

 

 「本県の死亡原因の上位を占めている脳卒中と心疾患について、より効果的な治療が可能になる」-。

佐竹敬久知事は9月県議会一般質問で、脳研センターにおいて包括的医療体制を整備する意義を、こう語った。

 脳研、成人病両センターの連携が検討されたのは今回が初めてではない。

寺田典城前知事時代の2006~08年ごろ、二つを統合して新たな医療機関を開設する計画が議論されたが、運営主体の違いなどが障壁となり、途中で立ち消えになった。

 今回の計画が浮上するきっかけは、6月県議会に提出された県医師会の陳情だった。

「脳・循環器疾患のより包括的な医療推進」を求め、脳研センターの医療体制の充実に向けて「成人病センターの医療資源を活用することが最善」と提言した。

 

 【「理念は公設民営」】

 成人病センターは一般財団法人が運営する「民間病院」だが、その成り立ちには県医師会と県が深く関与している。

財団法人の基本財産3千万円のうち3分の1を医師会が寄付。

残りは医師会の元幹部2人が拠出した。

また、歴代理事長は現在の寺田俊夫氏に至るまで、いずれも医師会長経験者が務めている。

 また建物は県の所有で、もともと脳研センターが入居していた。

脳研は1983年に隣接する現在地に移転。財団法人が土地と建物を県から無償貸与を受け、翌年に成人病センターを開設した。

寺田理事長は「設立当時の知事と医師会長の間で『地域医療のための病院をつくる』という合意があった。
法的には民間だが、理念は公設民営」と話す。

 

 【利用者に不安の声】

 成人病センターは開設以降、急性心筋梗塞をはじめとする心疾患の3次救急医療に力を入れてきた。

循環器部門の手術や救急患者受け入れで県内トップクラスの実績を誇り、地域医療を支えている。

 ただ、築45年が経過した建物は老朽化が深刻だ。

寺田理事長は今回の計画について「隣り合う二つのセンターの3次救急機能が一つになった方が効率的で、県民のためになる」と利点を強調。

「東日本大震災を機に、早急に老朽化に対応しなければと危機感を強め、さまざまな手法を考えてきた」と説明する。

 脳研センターは来年4月から新体制で診療を始める方針で、それに合わせ成人病センターの解散が検討されている。
消化器科など成人病センターの循環器以外の部門は廃止になる可能性があるが、寺田理事長は「脳研で新たに採用される職員数など明確でない部分があり、はっきりしたことはまだ言えない」と述べるにとどめる。

 成人病センターの利用者からは不安の声も聞かれる。夫が先月、消化器科で手術を受けた女性(76)=大仙市=は「脳研と成人病の話は報道で知ったが、詳しくは分からない。

建物が新しくなるのは患者にとっていいと思うけど、今後の治療がどうなるのか心配」と漏らした。(斉藤賢太郎)

 

 【脳研センターの機能拡充計画】高齢化により脳血管疾患と心疾患の両方を発症する患者の増加が見込まれるため、脳研センターの循環器部門を強化し、包括的医療体制を整備する計画。既存の建物を増築して病床を58床増やし、心臓血管外科を新設する。

医師、看護師、技術・事務職員を計106~146人増員。増築工事が完了する2016年度末ごろまでは、成人病センターの建物で循環器部門の診療を行う。