返済不要!こんなにある「給付奨学金」ガイド●川口昌人

2014.10.14

返済不要!こんなにある「給付奨学金」ガイド●川口昌人
2014.10.13 プレジデント


 老後の資金とともに考えねばならないのが、わが子の大学進学費用。家計の状況によっては奨学金の助けも検討したいが、最も一般的な日本学生支援機構(JASSO)のそれは、返済の必要がある「貸与奨学金」。卒業後の就職難などで、奨学金の返済に窮する若者の増加がニュースになる中、わが子に数百万円もの借金を簡単に背負わせていいのか、親としては悩ましい。

 そこで注目したいのが、返済義務のない「給付奨学金」だ。最近は多くの大学が、各大学独自の給付奨学金制度を用意。また、各種の民間団体や地方自治体が提供するものも数多い。

 受給する学生が一〇〇〇人を超える「広き門」の奨学金もあれば、授業料に加えて月々の生活費の一部もカバーするような、手厚い支給を受けられるものもある。世帯収入や成績等による審査はあるが、これほどお得な制度を見逃すわけにはいかない。

 まずは、各大学が独自に設けている給付奨学金を見てみよう。大学間の競争が激しくなる中、優秀な学生を集める方策の一つとして、多くの大学が奨学金制度を充実させつつある。

「独自の給付奨学金制度を設けている大学は、ここ数年明らかに増えています」と言うのは、「奨学金なるほど相談所」を主宰する奨学金アドバイザーの久米忠史氏だ。「ある在京の有名大学では、『入学金の支払いを待ってほしい』という、数年前まではなかった相談が増えているそうです。新入生集めはもちろん、在学生の中退防止も大きな動機です」。

 こうした奨学金の先駆けの一つが、早稲田大学の「めざせ!都の西北奨学金」だ。首都圏一都三県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)以外の高校等の出身者を対象に、年間四〇万円を原則四年間にわたって継続給付。採用候補者数は一学年の合計で約一二〇〇人と、かなり多い。「受験生の地元志向が強まる中、『日本全国から優秀な学生が集まる大学であり続けたい』という同大学の意思を反映した奨学金といえます」(久米氏)。

 課税前の世帯収入が年間八〇〇万円未満(給与収入の場合)、高校でのすべての教科・科目の評定平均値が三・五以上など、申請の条件も比較的ゆるやか。JASSOの奨学金と同様、入学前に申請を行う「予約型」の奨学金で、一一月末までの第一回申請期間中に申し込めば、奨学生への採用を確認してから入試願書を出すことも可能だ。

 首都圏外からの受験生を対象にした同様の給付奨学金は、慶應義塾大学の「学問のすゝめ奨学金」(地方生限定)や「慶應義塾維持会奨学金」(地方生優先)、立教大学の「自由の学府奨学金」、青山学院大学の「地の塩、夜の光奨学金」など、多くの難関私大で設けられている。条件が合えば、ぜひ検討したい。

 もちろん、首都圏在住の受験生が利用できる給付奨学金もある。「明治大学給費奨学金」もその一つ。こちらは入学後に大学に申請する一年更新の制度で、首都圏に家族住所がある学生は二〇万円(文系)~三〇万円(理系)、首都圏外からの学生にはさらに一〇万円がプラスして支給される。募集人員が一四四〇人という大型の奨学金で、うち「未来サポーター給費奨学生」枠(約七〇人)に採用された学生には、文系・理系ともに授業料の半額(約三九万~五六万円)が支給される。

 これまでは奨学金より授業料の減免に重きを置いてきた国公立大学の中にも、独自の奨学金制度を設置するところが増えてきた。

 たとえば、お茶の水女子大学の「みがかずば奨学金」は、予約型の給付奨学金。広島大学の「フェニックス奨学制度」は、入学料や授業料をすべて免除したうえで、月額一〇万円の奨学金を在学期間中給付するという充実ぶりだ。東北大学や新潟大学、山形大学なども、支給額が比較的大きい給付奨学金制度を設けている。

 学部ごとに特色ある奨学金制度を設ける中央大学、難関資格の取得や社会貢献活動などを奨励する、所得制限のない給付奨学金がある法政大学や立命館大学など、多くの有力大学では、目的や申請条件が異なる複数の給付奨学金を用意している。二つ以上の給付奨学金を重複して受けることは認められないケースが多いが、その分多くの学生に受給のチャンスがあるといえる。

 企業などの民間団体も、さまざまな給付奨学金を提供している。給付内容が充実しているものの筆頭は、JT(日本たばこ産業)奨学財団が運営する「JT国内大学奨学金」だろう。

 同奨学金では指定の高校(各都道府県の上位公立進学校)から、やはり指定の国公立大学に進学する学生を対象に、まず受験費用として一時金三〇万円を支給。合格すると、学校納付金相当額(入学金相当三〇万円+年額授業料五四万円)と、自宅生の場合は月額五万円の奨学金が四年間(医学部や薬学部などに進学した場合は六年間)支払われる。さらに親元を離れて下宿する場合は、月々の奨学金が一〇万~一二万円にアップし、三〇万円の入学一時金も追加される。

 選考は各高校最大一人ずつの学校推薦を経たうえで、書類と面接で行われる。支給を受ける学生は最大四〇人程度。受給生に選ばれた後に受験に失敗しても、翌年合格すれば予定通り支給を受けられる。在籍高校や志望校などの条件が合えば、ぜひ狙ってみたい奨学金だ。在籍する高校が指定外の場合は、指定国公立大に入学してから「大学推薦枠」に申請することもできる。

 同様の指定校制をとる奨学金としては、「電通育英会大学奨学金」がある。こちらは国公立だけでなく、早慶上智やMARCH、関関同立などの有力私大も指定大学に含まれ、入学一時金として一律二〇万円、さらに最短修業年限まで月々五万円が給付される。ただし、支給対象は文系学部への進学者のみ。理系志望者は、理工学系学科対象の「日揮・実吉奨学会給与奨学金」(年額三〇万円、大学経由での申請)などを検討しよう。

 応募条件がユニークなのが、進学情報を提供するマイナビの「マイナビ進学奨学金」だ。対象は、同社経由で志望大学のパンフレットを取り寄せ、そこに進学した学生。指定された三つのテーマから一つを選んで課題作文を提出し、審査の結果優秀と認められれば奨学金が支給される。最優秀賞は五〇万円、優秀賞は四〇万円(各一人)、部門賞が一五万円(四〇人)。家計状況や成績などの条件はとくにない。

 一部の地方自治体も、各種の給付奨学金事業を行っている。とくに注目したいのは、一定期間地域医療の担い手として勤務することを条件に、数千万円にのぼる私立医大の学費を肩代わりしてくれる奨学金だ。

 たとえば、「東京都地域医療奨学金」。順天堂大学医学部、杏林大学医学部、東京慈恵会医科大学の「地域枠入学試験」に合格して入学すれば、入学金と六年間の授業料等の全額(順天堂大の場合二〇八〇万円)と、生活費として月額一〇万円を東京都が貸与。医師国家試験取得後、都が指定する医療分野(周産期医療やへき地医療など)で、都内の医療機関で九年間勤務すると、奨学金の返還が全額免除される。対象は都内在住か、都内の高校に在学する生徒。定員は順天堂大と杏林大が一〇人ずつ、慈恵医大が五人だ。

 新潟県や千葉県、茨城県や静岡県も、同様に私大医学部向けの奨学金制度を設けている。また多くの国立大学には、医学部医学科の地域枠合格者に対し、入学金や授業料を免除したり、毎月の生活費を支給する制度がある。

 地元の篤志家や企業からの寄付をもとにした、給付型奨学金制度をもつ自治体もある。東京都江戸川区の「木全・手島育英資金」もその一つ。同区内に一年以上居住し、四年制以上の大学に進学する成績優秀な生徒を対象に、入学金二〇万円、修学金年額三五万円を支給する。選考は書類と面接によって行われ、募集人数は五人程度。九月中旬から一〇月中旬までに必要書類を提出し、一二月下旬頃には給付対象者が決定する。

 千葉県香取郡東庄町の「東庄町奨学基金事業」は、同町にある東洋合成工業からの寄付金をもとにした制度だ。本人または家族が同町に居住していることが条件で、大学または大学院に在学中の学生に、一人最大年額一〇〇万円もの奨学金が給付される(一年更新)。木全・手島育英資金とともに、卒業後の進路などの制約はない。

 これまで紹介した奨学金は、すべて支給を希望する側からの申請が必要。これ以外に、入試などの成績が優秀な学生の学費を免除する特待制度や、申請不要の奨学金をもらえる大学もある。

 たとえば法政大学の「開かれた法政21」入学時特別奨学金は、入試の成績上位者約五〇〇人に、初年度の授業料全額に相当する奨学金を給付。明治大学や立教大学では、上位数十人に四年間の授業料相当の奨学金が給付される。

 授業料の高い私立医大では、特待生の減免額も大きい。日本医科大学では、入学試験の成績上位三〇人に入り、実際に同大学に入学すると、入学時の授業料二四七万円を免除。順天堂大学の「学費減免制度(A特待生)」では、入試や入学後の成績等がとくに優秀な学生若干名に対し、六年間で最大一八八〇万円の学費が減免される。

 給付型を含めた奨学金探しの最大のネックは、情報集めだ。今回の記事で取り上げたのは、応募条件も支給額も多種多様な奨学金のごく一部。わが子が受けられそうな奨学金を条件別に簡単に検索できるような、使いやすいデータベースは今のところまだない。

「出発点は、JASSOのウェブサイトの『JASSO以外の奨学金』コーナーでしょう」と、久米氏は言う。検索機能はないが、地域別に分類されたPDF形式のリストがダウンロード可能。大学ごとの奨学金に比べて情報が集めにくい民間団体や、ローカルな自治体関連の奨学金も網羅されている。

 また、大学の奨学金担当課でも、学内外の奨学金のパンフレット等を集めることができる。大学推薦や学長印のある書類が必要とされる奨学金も多いが、「単に事務的な手続きとして行われる場合もあり、それほどハードルの高いものではありません」と久米氏。

 とはいえ、提出する書類や申請書の様式、申請の窓口や締め切りは、奨学金によってバラバラ。時には、いつの間にか制度の内容が変更されていることもある。

「受験直前に慌てるのではなく、ある程度事前に余裕をもってリサーチしておくのがいいと思います。あわせて、一つに絞らず複数の奨学金に出願し、重複して採用されたら条件のいいものを選ぶことも、視野に入れておきたいですね」(久米氏)。

 無事に給付奨学金を受給できることになったら、その幸運に感謝して勉学に励もう。素行不良や成績不良、単位不足での留年があると、給付が打ち切られるばかりか、同じ高校や大学の後輩の奨学金枠にも影響が出かねない。「きついバイトを強いられることもなく勉学に集中できることが、どれだけ恵まれた状況であるかを自覚し、生活スケジュールも含めた自己管理を心がけてください」(久米氏)。