公立病院の建替よりも、市内の人材育成へ投資を

2014.10.08

RIC Vol.228 公立病院の建替よりも、市内の人材育成へ投資を

1.はじめに

8/9.8/10の2日間にわたって「いわきの医療・まちづくり公開シンポジウム」を開催致しました。

そこでは、現場の医療関係者の懸命の努力によって、地域医療がぎりぎりのところで支えられているということが明らかになりました。

医療をより良くするためには、何よりも医療スタッフのマンパワーが必要。

公立の磐城総合共立病院の建替えというハコモノ建設に400億円近い金額を出すよりも、現場の医療スタッフをより充実させるため、市内の人材育成への投資をして頂きたい。


2.いわき市立総合磐城共立病院について

市内には、いわき市が直接経営する病床数717床の総合磐城共立病院(以下、共立病院)という一番大きい病院があります。
震災後の福島県地域医療復興事業補助金が、ここの建物の建替えに使えそうだということで、建替え問題が急浮上しました。

a.建替えの問題点

共立病院の建替えには300億円を超える莫大な費用がかかるとともに、将来世代の負担が発生します。市民ひとりあたり、大人も子供も赤ちゃんも、約10万円の借金を背負うことになります。建替えにあたっては以下の問題点が指摘されています。

・追加土地取得や物価スライド条項(契約後の建設物価の変動によって自動的に契約金額が増える仕組み)等によって、今後さらに総工費は膨らみ、青天井となる可能性がある。

・建設業界が活況を呈しているこの時期に、公立病院建設という公共工事を実施するメリットはない。

・市民にとって、病床数で市内第1位(磐城総合共立病院)と第2位(労災病院)の病院が同時期に建替えをするメリットはない。

・外側が新しくなっても、中身は一緒。

・新病院開院後の医師不足・医師招聘の目処は立っていない。病院を建て直したら、医師が招聘しやすくなるというのは幻想に過ぎない。

・現在の敷地面積では、研究施設や介護施設、教育施設等の将来の用途拡張性がない。

・現病院を稼働させながら敷地内での建設工事には、駐車場・騒音・粉じん等の問題がある。


b.経営形態の問題点
これまでの市立病院経営で、過去10年間累計で約200億円の医業損失が発生し、一般会計からの他会計繰入(市のお財布からの赤字補填)でしのいできました。

これは医療の専門性や機動的でない施策、非弾力的な人材待遇等の観点から、市による直接的な病院経営が効果的ではなかったために起こりました。

新病院の収支見通しにおいても毎年、20億円から30億円の経常的な医業損失が見込まれています。
国の財政状態を鑑みれば、総務省からの地方交付税措置も永続的とは考えられません。

ここから導き出されることは市の直接経営は持続的ではなく、単なる建物の建て替えに留まらず、病院経営そのものを見直さなければ、医療の改善という根本的な解決につながらないということです。

仮に市による病院経営をやめて、独立行政法人化もしくは民間委譲等に経営手法を変えたとき、2次・3次医療圏の病床数で圧倒的な地域一番店で、市民からの抜群の認知度・ブランド力を持つ優位性が強みとなって、病院経営だけでなく医療スタッフにとっては魅力的な勤務先となり、市民にとっては医療サービスの質・量の向上につながる可能性があります。

3.市内の医療人材育成を
共立病院の建替えに貴重な税金を投入するよりも、市内の医療人材の育成に力を入れるべく、以下3つの政策提言をします。

a.看護師等養成校の定員増
現在、看護師の数が足りないため、医療現場は多忙となっています。その要因のひとつは、市内の看護師養成校の入学枠が少ないために人材供給量が限られていることです。

現在、市内には3校の看護師・准看護師養成校がありますが、その入学定員合計は165名です

一方、入学希望者数は過去5年間の平均で約340名です。すなわち170名以上が看護師になりたくても入口でお断りされているわけです。

入学定員を増やし、市内医療機関に勤めていただくことが看護師不足解消への一歩となるため、既存の看護師等養成校の定員増を図っていくべきです。

b.上級学校への進学の受け皿
看護師・准看護師養成校の卒業生は、必ずしも市内医療機関に就職していません。一定数が卒業後、さらなる上級資格を目指して市外へ進学しています。

その数は、平成23年で31名、平成24年31名、平成25年で39名です。准看護師学校においては、4割近くの卒業生が市外に進学していっています。彼ら彼女らの受け皿になるためには、市内に上級の学校、例えば准看護師から看護師になるための学校、もしくは4年制の看護大学・学部の設置をすべきです。

c.学生を支援する基金の創設
学費の問題から、私立の医学系学部進学をあきらめる高校生は少なくありません。
平成25年度のいわき市内高校生の医学部進学者は16名ですが、うち私立医科大学への進学者はたった2名です。国立医学部の学費が6年間で約350万円に対し、私立医学部の学費は2000万円から3000万円と言われております。その高額の学費に対して二の足を踏んでいるわけです。結果としていわき市から医学部に進学する人材が少ないという事実を生み、医師不足に手をこまねいている現状を引き起こしています。
それなら学費を官民が支援して、市内から自前で医療人材育成をすれば良い。人への投資は必ず、市の財産となります。自主的に市へ貢献したくなるような詳細な制度設計は別途するとして、医療への道を目指す医大生・看護学生への奨学資金貸与、支払免除の基金を創設したいと考えています。

4.さいごに
一時的な復興財源が措置されているため、市内では「復興」という美名のもとにハード面の建設・整備が着々と進められています。市内には3,000戸を超える災害・復興公営住宅(家賃が安い公営の賃貸マンション)や30kmにも及ぶ防潮堤(万里の長城を彷彿とさせるコンクリート塀)が建設されます。一方、ソフト面、人材育成という点ではどうでしょうか
。東京大学医科学研究所の上昌広教授によれば、これまでの福島県の教育に対する投資は、残念ながら最低ランクだそうです。
私は、日本の将来は人づくりにかかっていると思います。まさに「まちづくりは人づくり」。人への投資が長期的なまちの財産となり、その魅力的なまちに若者が住みたくなる、そんな好サイクルを築いていきたいと思っています。


吉田実貴人(よしだみきと)
公認会計士として、中央青山監査法人、プライスウォーターハウスクーパース(日本・シンガポール)で勤務後、東日本大震災を機に、ふるさとである福島県いわき市に貢献したいという一心で、いわき市議会議員として活動中。
ホームページ: www.officey.biz/
ブログ: www.mikito.biz/
これまでの活動:www.facebook.com/mikito.yoshida.giin

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