介護事業、偏る利益配分 新サービス参入の壁に

2014.10.06

介護事業、偏る利益配分 新サービス参入の壁に
2014/10/4 1:51 日本経済新聞
 

介護サービス事業者への利益配分に偏りが目立ってきた。厚生労働省が3日発表した経営実態調査によると、社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームが高い利益率を上げる一方、在宅介護を支援する新たなサービスは低迷し、参入の妨げにもなっている。介護事業者の利益は国の公定価格に左右され、見直しが欠かせない。

 厚労省が3日発表したのは、今年3月時点の介護事業者の経営の実態調査だ。全国の介護施設・事業所約3万3千を対象とし、うち約1万6千(48%)から回答を得た。

 調査によると、介護サービス全21種類のうち16種類が、年間収入に対する利益率で5%以上と「安定的に経営できる水準」(厚労省)だった。中身を見ると、より特定のサービスに利益が集中した状況がみてとれる。

 一つが特養ホームだ。利益率は8.7%と、前回の2011年の調査結果からわずかに下がったが依然として高い。特養ホームはもともと公定価格である「介護報酬」が高く設定され、厚労省が徐々に引き下げてきたものの、利益率は高止まりしたままとなっている。

 特養ホームには毎年生じる黒字をため込んだ「内部留保」が1施設あたり3億円、総額で2兆円もあるとの指摘がある。

特養ホームを運営する社会福祉法人の団体は「施設の修繕や将来の建て替えに必要なお金だ」と主張するが、サービスや職員の給与にかかるコストを低く抑え利益を生んでいるとの見方もある。

 自宅で介護を受ける人が運動や趣味のため通うデイサービスは、利益率が10.6%に上る。零細企業でも手掛けやすいため事業所数は10年で3倍の3万9千に膨らんだが、サービスの中身が伴わないとの指摘が多い。

 半面、12年度に新設した24時間対応の定期巡回訪問介護サービスは、利益率が0.9%と低い。自宅でも特養ホームのような手厚い介護が受けられるようにと作った新サービスだが、事業所数は今年3月末で400超とまだ少ない。

 デイサービスのように通えるだけでなく、宿泊や訪問介護もまとめて1カ所で提供する「小規模多機能型居宅介護」サービスも、利益率は6.1%と高くない。

採算性が低いままだと大手企業などの参入が進まず、在宅介護を支えるサービスが不足することになる。公定価格を調整して、利益が適切に配分されるよう見直すことが欠かせない。

 財源の税金や保険料に利用者負担を加えた介護費は、全体で今年度10兆円に達し、25年度には21兆円と倍に膨らむ見込みだ。持続可能なサービスとするため、限られた財源を有効に使う必要がある。