「同一建物減算」の対象が拡大か?

2014.10.01

日本一の老人ホームに「同一建物減算」の危機


2014/9/29

村松謙一=日経ヘルスケア 
 

 「アクラスタウン」によるプレゼン場面。同ホームが最優秀賞「大賞ホーム」を受賞した。

 9月12日、高齢者住宅経営者連絡協議会(高経協)の主催による「リビング・オブ・ザ・イヤー2014」が都内で開催されました。

2011年4月以降に開設した高齢者住宅の中で、独自のサービスや優れた取り組みを行っているホームを全国から募り、最優秀賞を決めるイベントです。

 第1次、第2次選考を経て7ホームが残り、当日は各ホームがスライドを使ってプレゼンテーションを実施。それを基に、100人の選考委員が「大賞ホーム」を選出する段取りです。

 最終選考に残った7ホームの顔ぶれは以下の通り。

・住宅型有料老人ホーム「アクラスタウン」(福岡県太宰府市)
・特別養護老人ホーム「アマルネス・ガーデン」(兵庫県尼崎市)
・サービス付き高齢者向け住宅「イリス南郷通」(札幌市白石区)
・住宅型有料老人ホーム「ここち西船橋」(千葉県船橋市)
・サービス付き高齢者向け住宅「サボテン六高台」(千葉県松戸市)
・住宅型有料老人ホーム「藤沢エデンの園一番館」(神奈川県藤沢市)
・サービス付き高齢者向け住宅「和楽久シニアレジデンス長津田」( 横浜市緑区)

大半が外部サービス利用型の施設
 選考委員による審査の結果、(株)誠心が運営する「アクラスタウン」(福岡県太宰府市)が最優秀賞に輝きました。医療・介護の24時間体制が整っている点や、終末期ケアを実施している点、喀痰吸引などの介護職員研修に力を入れてケアの質が高い点などが受賞の理由でした。

 同施設をはじめ、どのホームの取り組みも大変素晴らしいものでした。ただ、私が個人的に注目したのは、最終選考に残った上記7ホームのうち6ホームが、訪問介護や訪問看護などの外部サービスを利用するサ付き住宅と住宅型有老ホームだったことです。

 介護給付費の抑制を意図した2006年度以降の国の開設規制に伴い、介護職員を施設内に配置する特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームの新設数が減った一方、外部の訪問介護事業所などから介護サービスを利用するサ付き住宅と住宅型有老ホームの数が急増しました。

今回エントリーした高齢者住宅は、過去3年に開設した所に限られていますから、外部サービス利用型の施設が大半を占めたのもうなずけます。

 ただ、外部サービスを利用する形態ゆえに、課題も少なくありません。最も大きな課題は費用負担。

入居者の要介護状態が重度化すると、訪問介護や訪問看護の利用量が増え、介護保険の区分支給限度基準額(要介護度ごとに定められた利用限度額)を超えた分は全額自己負担になるのです。

 これに対し、アクラスタウンをはじめ各ホームは、介護保険で給付されない各種のケアを包括した月定額の「パック料金制」を導入して入居者の費用負担が増大しないように工夫しています。

また、介護報酬が月定額の24時間365日体制のサービスである小規模多機能型居宅介護や定期巡回・随時対応型訪問介護看護の事業所を併設して、ケアを切れ目なく提供しながら入居者の負担が変わらない仕組みを築いているホームもあります。

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日本一の老人ホームに「同一建物減算」の危機


2014/9/29

村松謙一=日経ヘルスケア 
 

 「同一建物減算」の対象が拡大か?
 それでも、施設経営への影響が懸念されているのが、介護報酬の「同一建物減算」です。

集合住宅の入居者にサービスを提供する場合、移動などに要する労力が戸建て住宅に住む利用者へのサービス提供に比べて少ないことから、2012年度に介護報酬の減算規定が設けられました。

例えば、訪問介護や訪問看護などの介護報酬は、住宅型有老ホームやサ付き住宅などの1つの建物(同一建物)に事業所を併設して30人以上の入居者にサービスを提供した場合、1割減算されます。

 現在、2015年度介護報酬改定に向けて社会保障審議会・介護給付費分科会で議論が進められており、「同一建物減算」の対象拡大がテーマになっています。減算要件を厳格化するだけでなく、小規模多機能型居宅介護サービスの事業所を高齢者住宅が併設している場合、単価が低い報酬区分を新たに設けたり、これまで減算の対象外だった定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスを対象に加えるといった見直しが行われる可能性があります
今回「日本一」に輝いたホームも例外ではありません。

 「同一建物減算」といえば、2014年度診療報酬改定でも高齢者住宅向けの訪問診療関連の点数が大幅に引き下げられ、医療機関と高齢者住宅の双方に大きなダメージを与えたことはまだ記憶に新しいところです。


かかりつけ患者への診療機能を評価する「在宅時医学総合管理料」(在医総管)、「特定施設入居時等医学総合管理料」(特医総管)の点数が、1つの建物に住む複数の患者に対して算定する場合(同一建物・複数訪問時)に、それ以外の場合と比べて4分の1程度にダウン。

高齢者住宅の訪問診療を担当していた医療機関が撤退するなど、医療・介護現場が大混乱しました。

 医療機関も高齢者住宅事業者も、常に制度改正・報酬改定のリスクと向き合いながら、入居者の診療や介護の質を高める努力をしなければなりません。

それでも予想を超えた措置が取られれば、経営基盤が根本から揺らぐことになります。次回の介護報酬改定でもそれは同じです。

 もちろん事業者による入居者の囲い込みや過剰なサービス提供などの不適切な運営が許されないことは言うまでもありませんが、「介護給付費の適正な分配」の観点から皆が納得する形で報酬改定の議論が進み、現場に混乱が起きないことを願っています。