連載[県都の大病院事情]中・方向性/専門分野で実績重ね

2014.09.30

連載[県都の大病院事情]中・方向性/専門分野で実績重ね
2014.09.28 南日本新聞 


 「年々増えている乳がん患者数は今がピーク。今後は減少が見込まれる」。鹿児島市の相良病院(80床)を運営する社会医療法人博愛会の相良吉昭理事長(45)はこう明かす。

 同会は2007年、鹿児島市新屋敷町に乳がんの画像診断や放射線治療、人間ドックを手がける「さがらパース通りクリニック」(18床)をオープン。12年には、同市中央町に女性向けの専門外来「さがら女性クリニック」を開設した。

 13年の乳がん手術件数は全国4位の616件。上位3病院はがん研有明病院、聖路加国際病院、聖マリアンナ医科大学と、いずれも関東の有名な大病院だ。

相良病院は今年8月、特定のがん診療について都道府県で拠点的な役割を果たす病院として、全国で初めて「特定領域がん診療連携拠点病院」の指定を受けた。

 「がんは予防から治療、術後フォローや緩和ケアに至るまで、専門領域を幅広く深く実践することが求められる。指定はそれができている証し」と相良理事長。

「先の人口減社会を見据え、多くの患者に選ばれる医療機関を目指したい」と語る。

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 鹿児島市の南風病院(338床)は06年、がんの早期発見・治療に有効とされる最新の画像診断装置PETを備えた「画像診断センター」を、建物を含め約10億円かけて整備した。4年後の10年には2台目のPETを導入した。

 今年4月には、高度な医療が受けられると国が認める高診療密度病院群(DPC〓(ローマ数字の2)群)に。DPC〓(ローマ数字の2)群に入るためには、難易度の高い手術の件数、研修医の数などの要件がある。DPC〓(ローマ数字の2)群入りを目指した狙いについて福永秀敏院長(67)は「高度医療が提供できる体制を整え、県外への患者流出を食い止めたい」と話す。

 鹿児島県のがん患者は、他県に“流出”している割合が多いとされる。厚生労働省が13年に開いたがん診療提供体制の在り方に関する検討会では、他県の拠点病院でがんと診断された患者の割合は佐賀、宮崎に次いで、鹿児島が九州で3番目に高いことが明らかになった。

 インターネットなどで情報は簡単に検索できる時代。九州新幹線全線開業で移動時間も短縮された。「心筋梗塞や脳卒中など、緊急を要する疾患以外、患者はよい医療が受けられるとなればどこへでも移動する」と福永院長。「鹿児島で質の高い医療が受けられるようにしなければ」と話す。

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 各医療機関の取り組みの背景にある一つが、25年に向けた医療体制整備の柱となる「地域医療ビジョン」だ。社会保障制度改革推進法に基づき、各都道府県は15年度以降に策定が求められる。

 今年10月からは、策定の要となる病床機能報告制度が始まる。各医療機関が都道府県に、病院の病床機能を報告。都道府県は地域バランスを考え、最終的な医療の方向性を示す地域医療ビジョンを策定する。鹿児島銀行医業推進室の鮫島純室長(45)は「病院が生き残るためには、目指す機能を明確に示すことが求められる」と指摘する。

 早いうちに、ある程度の実績を積むことができた医療機関は、地域ビジョン策定の段階において、圧倒的優位に立つ。目指す医療分野で生き残るためのいす取りゲームは水面下で始まっている。