社説 老老介護 家族を悲劇から救え

2014.08.26

社説 老老介護 家族を悲劇から救え
2014.08.23 東京新聞


 また、悲しい事件が起きた。介護を苦にした高齢の妻が、夫を殴り死亡させた。介護される人だけでなく、する人も高齢者という「老老介護」が広がる。家族を悲劇から救いたい。

 「介護に疲れた」。先週、警視庁に傷害致死の疑いで逮捕された七十歳の妻はそう話したという。

 容疑では、妻は東京都目黒区の自宅でベッドに座っていた七十九歳の夫の頭を両手で何度も殴りつけた。死因は急性硬膜下血腫。夫婦は二人暮らしだった。

 介護を担う家族の負担は重い。ましてや、介護者が高齢者となれば、その重みはいかばかりか。

 二〇一三年の国民生活基礎調査によると、同居する家族が主に介護を担う世帯のうち、介護される人だけでなく、する人も六十五歳以上という世帯の割合が初めて五割を超えた。
ともに七十五歳以上の割合も29%と過去最高だった。

 背景には、高齢化や核家族化が進んでいることが挙げられる。現在、六十五歳以上が総人口に占める割合は25%だが、二五年には30%に達するとされる。老老介護はますます増える見通しだ。

 また、調査では、自宅で介護されている人のうち、主に介護をする人は、同居する家族が61%と最も多く、介護サービス事業者の14%を大きく上回った。介護は家族頼みの状況は変わっていない。

 特別養護老人ホーム(特養)の待機者は約五十二万人に上り、半数は在宅で入所待ちをしている。厚生労働省は施設よりも在宅サービスの充実に力を入れているが、待機者数は増加の一途だ。
厚労省の施策は現場のニーズを反映していないのではないか。

 政府は、社会全体で支え合う「介護の社会化」を掲げて、介護保険制度を〇〇年度に導入した。しかし、いまだに「介護地獄」から抜け出せない家族がいるのは由々しき事態だ。

 にもかかわらず、安倍政権は介護サービスのカットを進める。

消費税を四月に引き上げておきながら、特養の新規入所者を原則として中重度の要介護者に限定するほか、一定以上の所得がある利用者の負担を二割に上げることを柱とする地域医療・介護総合確保推進法を六月に成立させた。

介護サービスの利用を手控える家庭が増えることが危惧される。膨張する費用の抑制が狙いだが、「介護の社会化」に反する見直しと言わざるを得ない。
安倍政権には制度導入時の理念をもう一度思い出してほしい。