<地域医療 明日を見つめて>インタビュー編*中*病院経営*北良治さん、石井吉春さん

2014.08.09

<地域医療 明日を見つめて>インタビュー編*中*病院経営*北良治さん、石井吉春さん
2014.08.08 北海道新聞


 道内では自治体病院が地域医療の中心を担ってきたが、道によると2012年度の市町村立病院の経常収支は総額で52億6千万円の赤字を計上した。

道が08年に自治体病院の広域化・連携構想を示して以降、経営効率化のため、道内全体で2千床以上の病床が削減されたが、先行きはなお厳しい。

空知管内奈井江町長で、北海道自治体病院開設者協議会長の北良治さんと、自治体病院の経営に詳しい北大公共政策大学院教授の石井吉春さんに、これからどんな対応策が求められるのかを聞いた。

*北海道自治体病院開設者協議会長 北良治さん(77)*生き残りへ役割分担も

 道内の自治体病院は、医師、看護師不足に伴い、非常に厳しい経営状況です。

 医師がいなければ患者が都市部の病院などに流出し収入が減ります。地方を敬遠する医師を雇い続けるため、1人年間5、6千万円の給与を用意する市町村もあります。

収入減や人件費の膨張で病院会計は赤字となり、一般会計から穴埋めするので自治体経営そのものが厳しくなってしまいます。各自治体の努力では解決できない状況です。

 総務省は2007年、病床利用率が3年連続で70%に満たない場合の病床数削減などを盛り込んだ、公立病院改革ガイドラインを策定しました。

病院経営の無駄を省き、病床を削減したり、中核病院に機能を集約したり、一定の再編を進めることは避けられません。

 奈井江町では町立国保病院と道指定の地域センター病院の砂川市立病院が05年、道内初の医療連携協定を結びました。

砂川は救急などの急性期、奈井江は退院後の療養期と、役割分担をしたことで、奈井江の病床利用率の向上にもつながりました。
こうした取り組みが可能だったのも奈井江には幸い、複数の医師が定着していたからです。

 一方、同じ空知でも市立美唄病院は内科医が4人から1人に減り、入院に対応できなくなったため5年前、一般病床を53床に半減させました。

経営悪化の根本原因である医師不足に手を打たなければ、医療格差を後追いするような病院再編しかできません。

 地方で医師が育ち定着しやすくなるよう、中小病院に指導医を派遣したり、そこで学ぶ若手医師が大病院でも定期的に症例経験を積めるようにするなど具体策が必要です。

住民が安心して暮らし続け、過疎化を食い止めるためにも地方の医療機能が縮み続ける現状の打開が急がれます。(報道センター 小森美香)

 きた・りょうじ 野幌機農高(現とわの森三愛高)卒。酪農業、奈井江町議、議長を経て86年から同町長、現在7期目。01年から北海道自治体病院開設者協議会長。同町出身。
………………………………………





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



*北大公共政策大学院教授 石井吉春さん(60)*自治体の壁払い連携を

 北海道は広大な面積に人口が分散し、各自治体が小規模の医療需要に応えてきました。

採算が取りにくい分、民間ではなく、公立の医療機関が中心となって医療を提供しています。
しかし今、この仕組みはあまりうまく機能していません。

 この30年で、既に人口が2割も3割も減っている自治体が結構あります。
さらに、地元から離れた都市部の大病院に通う住民も多く、地方の医療機関の経営は厳しくなる一方です。

 小規模自治体で救急医療まで担うとなると、医療スタッフは24時間態勢となり、負担が格段に重くなります。
患者が地域を越えて動いているのに自治体単位で医療を整備しようとするので、全体として(人材や設備といった)医療資源の無駄が生じています。

 総務省が2007年に公立病院改革ガイドラインを示したことで、道内でも地域単位で病床削減が進みました。

しかし、私は利用率が低いのに、自治体が(病床数が多いと額が増える)地方交付税を目的に守ってきた病床を、やむを得ず削った程度にしかみていません。
これからは、さらに踏み込んだ改革が必要です。

 まず、市町村の壁を取り払う必要があります。一定規模の都市にもっと医療機能を集め、周辺の小規模自治体の病院は診療所にする。
場合によっては廃止も考える。診療所に医師が常駐せず基幹病院から巡回する方法もあります。

 また、最近は道内の大手民間病院が地方の公立診療所の指定管理者となり、運営に乗り出す例が増え、注目しています。法人が専門的な診療を支援できるし、地域医療に関心がありながら、孤独や仕事の過酷さに二の足を踏む若い医師の受け皿にもなると思います。
安心できるかたちが見えれば、さらなる医療再編も進めやすくなるでしょう。(報道センター 須藤真哉)

 いしい・よしはる 一橋大卒。北海道東北開発公庫総務部次長、日本政策投資銀行四国支店長などを経て05年から現職。専門は地域政策。仙台市出身。