論説 特養待機門前払い 全国一律の対応見直せ

2014.08.04

論説 特養待機門前払い 全国一律の対応見直せ
2014.08.02福島民報社 



 来年四月から福島県内の特別養護老人ホーム(特養)の入所待機者の34%に当たる約四千三百人が入所対象から外れる。

地域医療・介護総合確保推進法の施行に伴うもので、「要介護1」「要介護2」をいわば門前払いにする。

県内は東京電力福島第一原発事故に伴う避難生活などが原因で要介護認定者、入所待機者ともに増加しており、国は全国一律の対応を見直すべきだ。

 地域医療・介護総合確保推進法は、高齢化が一段と進み利用者が増える中でも介護保険制度を維持できるようにするのが目的。内容は
(1)一律一割だった介護サービスの利用の自己負担を、一定以上の所得がある人は二割に引き上げる
(2)特養の新規入所者は原則「要介護3」以上に限定する(
3)「要支援1」「要支援2」向けの軽度介護は介護保険のサービスから市町村の事業へ移す-などが柱だ。

 県内の百五十二施設の入所者九千三百二十二人のうち「要介護1」「要介護2」は昨年四月時点で九百五十八人で全体の一割を占める。
主に一人暮らしで日常生活に支障のある人だ。来春からはこうした事情があっても、新たに入所できなくなる。

 原発事故による避難の長期化で、県内の要介護認定者は増えている。
平成二十六年二月現在の要介護認定者は七万六千六百三十五人と、震災前に比べ約一万三千人増加した。入所待機者も同様に増えている。
避難区域の特養七施設は休止しており、一層「狭き門」となっている。
避難生活などで命を落とす原発事故関連死は、津波や地震で亡くなった直接死千六百三人を上回っている。このままでは関連死がさらに増えかねない。

 本県の現況をしっかり把握すれば、国は待機者を減らすために施設を増やすべきであって、門前払いをするというのは見当違いも甚だしい。

施設を増やせば、運営費用が県民の支払う介護保険料や税金にはね返る-と懸念する声もあるが、それは国が補えば済むことだ。

 市町村に事業を移行する訪問・通所介護にしても、本県には配慮があってしかるべきだろう。
介護福祉士やホームヘルパーは原発事故に伴う避難などの影響で人手が足りなくなっている。
福島労働局によると、介護職の五月の有効求人倍率は二・三七倍と高い水準で、人手不足の深刻さを示している。
このままでは満足な訪問、通所介護は難しい。国には県内に介護職の養成機関を創設するなど具体的な対応を望む。県や関係団体も実現に向けて強く働き掛けてほしい。(芳見 弘一)