持論時論<村口至(元坂総合病院院長)=73歳・多賀城市>/宮城県の医学部構想/医師の意欲どう高める/

2014.07.24

持論時論<村口至(元坂総合病院院長)=73歳・多賀城市>/宮城県の医学部構想/医師の意欲どう高める/

これまで、「医学部新設は県立で」という声を拒否してきた村井嘉浩宮城県知事は、たった5夜にして「県立医
2014.07.21 河北新報



持論時論<村口至(元坂総合病院院長)=73歳・多賀城市>/宮城県の医学部構想医師の意欲どう高める

 これまで、「医学部新設は県立で」という声を拒否してきた村井嘉浩宮城県知事は、たった5夜にして「県立医大」の実現へとかじを切った。

5夜とは、3人の元病院長(国立仙台病院・高橋、仙台市立病院・東岩井、塩釜の坂総合病院・村口)からの要請を拒否して5夜しか経過していなかったことを指す。

拒否の理由は(1)資金がない(2)スタッフを配置できない-の二つだった。

 方針転換後の県の言動をマスコミが伝えたところでは、
(1)は民間病院と県北の自治体の支援を受ける
(2)については、医学部を宮城大に設置した上で、県北の自治体病院と同地区の県立病院を併合してやりくりするということである。
つまり、財布もスタッフも人頼みの構想である。これで、被災地や東北の過疎地医療を担う大学構想が本当につくれるのであろうか。

 案の定、本紙3日の報道によれば、県内の9公立病院と1民間病院との連携を検討し、実習は被災地と県北の5病院への依頼を想定している。
6年間貸与の奨学金制度(勤務義務10年)も、将来赴任した地方自治体から回収するという。

 医師が独り立ちするのには10年かかる。
この制度では、そのときに被災地、過疎地からいなくなる恐れが高い。
さらには、医師不足の地域は元来財政力が乏しいのだから、育英資金を負担させるのは冷酷な仕打ちであるとも言える。

 この構想に決定的に欠けているのは、新たにつくる高等教育機関の理念は何かということだ。
それが明確でないために、新設大学の姿が浮き彫りにならない。「医者さえつくれば」という安易な姿勢しか見えてこない。
被災地は、従来から医師不足であった。また、東北の過疎地の無医地区は宿命的なものと放置されてきたのにだ。

 約40年ぶりに解禁された医学部新設構想において、全国的な期待に応えるには何が必要か。
まず第一に、国から提示された目的を具体化すること。第二に、県立医大による地域医療の解決課題を設定することであろう。

 前者については、被災地および東北で懸案になっている医師不足の解消と、福島第1原発による被ばく医療対策である。

「とにかく医者さえいれば」では長続きしないことは過去に証明されている。
地域の保健から医療、介護福祉まで地域システムが全体的に整備されていてこそ、医師が生きがいを持って働けるのだ。

そのためには、保健所、地方自治体の保健福祉課および地域医師会などの連携によってシステムを再構築する意気込みが必要である。

 卒業後の研修指定病院を増やし、質の充実のために医師の増員を図ることも欠かせない。

県の構想にある9公立病院との連携とは何をやるための連携なのか。

実習依頼のために、医師の増員を想定しているのか。医学部の教員スタッフ数の基準が一般病院の2倍以上となっているのは、医学生の実習を受け入れるにも、それだけの体制が必要だということなのだ。

 まず知事がやるべきことは、被災地の自治体首長会議と東北6県知事会議の招集ではないか。

特に、東北市長会での医学部新設要請決議のために積極的役割を果たした亀山紘石巻市長をはじめ、首長と地元大学の英知を結集し、構想づくりに汗を流すべきである。(投稿)