[医療再生]北海道の道標(5)病院が連携 研修医集め(連載)=北海道

2014.07.15

[医療再生]北海道の道標(5)病院が連携 研修医集め(連載)=北海道
2014.07.14 読売新聞


 ◎第2部

 「21歳の女性の顔や脚が浮腫になるのは珍しい。酒とたばこの習慣があった。考えられる病気はなんだろう」。
沖縄県沖縄市の中部徳洲会病院の一室。宮城征四郎医師(75)が、糖尿病の女性患者のカルテや写真を見せながら、診断のポイントを解説した。20~30歳代の男女の研修医5人が耳を傾け、熱心にメモを取っていた。

 2004年度に国の新臨床研修制度が始まり、医師が研修先を選べるようになった。研修医は学べる症例が多い都市部に集中し、地方は医師不足に拍車が掛かった。自治体は今も医師不足解消につながる研修医の確保に躍起だ。

 大学から研修医が来なくなるのでは--。沖縄県では新制度に先立つ03年、危機感を持った14医療機関が、県内各地で研修を行う任意団体「群星(むりぶし)沖縄」を設立し、09年に一般社団法人化した。

 通常、臨床研修は大学病院や地域の拠点病院が小規模病院と連携したり、大規模病院がグループ内に限定したりして行う。診療科はある程度そろっているが、必ずしも全ての診療科で高度な指導が期待できるわけではない。

 一方、群星沖縄は病院や診療所など28の病院群からなる。診療科がそろい、「総合診療医の育成」をうたっている上、感染症や救急、地域医療など得意分野を持つ個性的な医療機関が集まっているのが特長だ。

 研修医は1か所の病院で8か月以上研修を受けた後、病院群から次々と研修先を選び、専門性が高い医療機関を渡り歩いて経験を積める。2年間に7診療科以上を学ぶことができる。

 宮城医師は県立中部病院(うるま市)の院長を辞めて、群星沖縄の設立時からプロジェクトリーダーを務め、魅力ある病院群や研修のシステムづくりに努めてきた。今も拠点となる8病院に月2回ずつ出向き、研修医を指導している。

 旭川医大出身の研修医、田木聡一さん(33)は「色んな病院の垣根を越えて回れるのは画期的で面白い。こういうつながりは北海道にはない。病院ごとに違う指導方法も盗んでいきたい」と話した。

 沖縄県では13年度、研修医の募集定員165人に対して137人が内定した。充足率は83%で全国12位。このうち定員67人の群星沖縄は充足率88%だった。約6割は県外の大学出身者が占めた。

 一方、北海道では13年度、定員418人で内定者は292人。充足率70%は全国23位だ。北海道大、札幌医大、旭川医大の医学部の入学定員総数を下回り、「目減り状態」になっている。

 道内は広域なため病院間の連携が取りにくい面がある。ただ、研修医を受け入れている道央圏の総合病院院長は「道内では三つの大学がそれぞれの思惑でバラバラに医療行政に関わってきた。道も各大学に気を使ってまとめられず、連携が進まなかった」と指摘する。

 宮城医師は「沖縄に研修医が集まるのは、私たち自身が新しい研修制度にマッチさせて病院群をつくった結果。各病院が医師を確保したいというエゴを捨て、協力し合って魅力ある研修病院を作らなくてはならない」と話した。

 〈処方箋〉

 ◆医師が指導できる環境必要

 ◇手稲渓仁会病院の臨床研修部長 星哲哉医師(47)

 手稲渓仁会病院では、医師教育の先進地である米国の医師が研修で指導にあたっている。これが魅力となり、大学病院を除いて道内最多レベルの研修医が集まった。医師が集まるのは「世界で通用する医師を育てる」というスローガンを掲げ、広い視野を持った医師を育てようと取り組んできた結果だ。指導体制が整った病院を研修医はきちんと見ている。

 北海道も医療者同士は連携を模索しているが、医師が日常業務の傍らで行うのは難しい。組織や労働環境を見直し、医師が研修に専念できるよう環境を変えなくてはならない。


 〈新臨床研修制度〉

 専門に偏りがちだった研修を見直そうと、幅広い分野の診療能力を習得させることを目的に、2004年度に始まった。医大を卒業後の2年間に初期研修を行う。救急、内科などの診療科に加え地域医療が必修になっている。