●カテーテルが細菌の感染源 実例リポート

2014.07.08

●カテーテルが細菌の感染源 実例リポート
2014.07.11 週刊朝日

 「抜いたカテーテルの先端、つまりからだの中に入っている部分にびっしりついていたバイオフィルム(細菌のかたまり)を検査してみたら、どれからもカンジダが検出されました。感染源のカテーテルを入れっぱなしにしていたら、発熱が続くのは当たり前です」(塚本歯科医師)

 熱が下がって楽になった秀子さんは、翌日からペースト食を食べられるようになった。同時に口の中をきれいにする口腔ケアや、合わなくなっていた部分入れ歯を調整し、かむためのリハビリもスタートした。ほどなく粗めの刻み食へステップアップ。「食べる」という喜びを得たことで秀子さんは、リハビリにも積極的に取り組んで、みるみる回復した。年が明けた1月末には、元気に歩いて退院。その翌月には、海外旅行に行くまでになった。

 その経過を追った画像や写真を見せてもらった。回復ぶりもさることながら、かめるようになってからは別人のように明るい笑顔ばかりだった。秀子さんは、その後穏やかに生活し、退院の10年後に別の病気で亡くなったという。

 「IVHのように口や腸管を使わずに栄養補給する方法が長引けば、かむ、のみ込むといった口の機能が衰えるだけでなく、全身状態まで悪化させてしまいます。人間らしく、幸せに生きるためには口から食べることが基本だということを、心に留めておいてほしいと思います」(同)(熊谷わこ)


 ■感染の恐れ? 歯を削る機器使い回しの実態

 もしむし歯の治療に行って、ほかの患者の血液や唾液が付いた機器を自分の口の中に入れられたら……。想像したくもない状況だが、それが多くの歯科診療所で実際に起きていることが厚生労働省の研究班の調査でわかった。

 歯を削るドリルを患者ごとに交換するのは当たり前だが、そのドリルを取り付けた柄の部分(ハンドピース)を交換しているか、研究班は2014年1月に、ある県の歯科診療所3152件を対象に調査を実施した。その結果、「患者ごとに必ず交換」と回答したのは34%(グラフ参照)。一方、「交換していない」は17%、「感染症にかかっている患者の場合は交換」は35%、「ときどき交換」は14%という回答で、66%の歯科診療所は使った機器を交換せずにほかの患者に使い回していることになる。

 日本歯科医学会の院内感染対策の指針では、使用後は高温で滅菌した機器と交換するように定めている。ハンドピースは直接歯に触れる機器ではないが、治療の際には口に入り、血液や唾液が付着しやすい機器で、感染の恐れがある。血液に感染の原因となるウイルスなどが含まれている可能性があり、消毒や洗浄だけでは滅菌できないという。そのため、指針では高温でウイルスなどを死滅させる滅菌処理をし、患者ごとに交換することを勧めているが、今回の調査から、その指針が守られていないことが浮き彫りになった。

 しかし、なぜこのようなことが起きているのだろうか。厚労省の担当者は、歯科診療所の経営的な事情があると説明する。

 「ハンドピースは1本20万~30万円し、滅菌処理に時間がかかるため、患者ごとに交換するためには来院患者数の数倍の本数を保持しなければなりません。また、滅菌処理をする機材も高額であるうえ、その作業をするスタッフを雇う人件費もかかります。コストを抑えたい歯科診療所には、徹底されていない状況です」

 調査は、経営的に安定している大規模な病院などは対象とせず、あえて小規模な歯科診療所を対象にしたという。調査からは、実際に機器を通しての感染の実態までは明らかになっていないが、結果を受けて、日本歯科医学会は指針を徹底するよう呼びかけている。

 (本誌・杉村健)