(教育2014 生き残りへ動く大学:下)世界相手、300億円投資 /宮城県

2014.07.01

(教育2014 生き残りへ動く大学:下)世界相手、300億円投資 /宮城県
2014.06.30朝日新聞



 高さ数十メートルの2本の巨大なクレーンが、ゆっくりと資材を移動させていく。
白いフェンスで囲まれた工事現場からは、金属がぶつかり合う音が響く。

 仙台駅から1キロほどのところにある東北大片平キャンパス。
40億円をかけ、地上6階建ての「次世代情報通信プロジェクト研究拠点施設」の建設が進む。
災害に強い通信インフラを研究するため新設が決まった。

 東北大のキャンパスは、仙台市内に5カ所。移転予定の雨宮キャンパス以外は今、どこも工事現場だらけだ。東日本大震災後に始まった工事が中心で、ビルの新築だけでも総事業費は約300億円。
2010年度の年間予算1327億円の2割を超える額だ。

 東北大によると、復旧や復興関連の事業費約165億円は、国の復興関連予算でまかなわれる。
被災地の住民の健康状態を長期間調べることなどを目的にした「メディカル・メガバンク」(75億円)や、被災後の速やかな復興に向けた施策を研究する「レジリエント社会構築イノベーションセンター」(10億円)も建設中だ。
こちらの事業費も大半は国が負担する。

 これらの工事は、震災で壊れた建物を元通りに直すだけではない。
この機会に、世界と戦える設備を充実させるねらいもある。

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 東北地方で突出した存在の東北大も、世界の大学との競争にさらされている。
英教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」(THE)が昨年10月に発表した世界大学ランキングで、東北大は150位。
日本では東京大、京都大、東京工業大、大阪大に続く5位だ。

 ランキングは、学生1人当たりの教職員数、論文の引用数、海外からの留学生の割合などを基準に導かれる。評価方法の問題を指摘する声もあるが、ランキングを見て行き先を決める留学生も多く、影響力は大きい。

 東北大は、このランクを強く意識する。07年には、前総長が世界のトップ30に入る目標を掲げて態勢づくりを始めた。

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 東北大は伝統的に医学・工学に強みがある。1907年の開学時は、「実学尊重」を目的の一つにした。
東京大、京都大に続く3番目の帝国大学だった東北大にとって、両大学との差別化を図るアイデンティティーのようなものだ。
歴代の総長は、多くが医学・工学畑の出身。現職の里見進氏は付属病院の前院長だ。

 最近の投資でも、医学・工学に重点を置く。背景には、里見総長が昨年に打ち出した「里見ビジョン」がある。

「復興・新生の先導」をめざすとし、このために八つのプロジェクトを掲げた。「災害科学」「地域医療再構築」「放射性物質汚染対策」など、医学・工学分野が多くを占めている。佃良彦理事(財務・施設・キャンパス計画担当)は、「アジアを含めた世界と連携し、あるいは競争するには、戦略的に取り組まなければいけない」と解説する。(小宮山亮磨)


 ■東北大が建設を始めた震災関連の主な建物

 <目的>

 建物の名前               事業費(億円)

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 <災害復旧・復興事業>

 電子・応物系実験研究棟           29

 マテリアル・開発系実験研究棟        26

 人間・環境系実験研究棟           23

 総合研究棟(理学系)            27

 災害復興・地域再生重点研究拠点       30

 地域医療・被災地支援教育研修センター    15

 国際交流支援センター            15

 <新規の研究教育事業>

 メディカル・メガバンク棟          75

 次世代情報通信プロジェクト研究拠点施設   40

 レジリエント社会構築イノベーションセンター 10

 <老朽化や狭さ対策の事業>

 量子系実験棟 マテリアル・開発系実験棟    2

 機械系実験棟                 3

 総合研究棟(国際文科学系)         11

 総合研究棟(環境科学系)          14

 教育学生総合支援センター           6

 総合研究棟(サイバーサイエンスセンター)   8

 ※広報課の資料と取材による