■家庭医療学講座は2007年7月に開講した高知県の寄附講座です。

2014.07.10

「高知大学の地域医療教育」

            高知大学家庭医療学講座/医療学系医学教育部門 阿波谷敏英 先生


■家庭医療学講座は2007年7月に開講した高知県の寄附講座です。
2012年3月 に寄附講座に関わる協定を更新し、2017年3月までの寄附期間となっています。
スタッフは、教授1、准教授1、助教1、事務補佐員2です。

■当講座は、開講以来、積極的に地域医療教育に関わってまいりました。
現 時点で行われている地域医療教育について提示します。地域医療教育全体と して、
1)すべての学生への地域医療教育の充実、
2)高知県全体を教育フィ ールドとする、
3)6年間を通じて豊富な学習機会を準備、という方針でおこ なっています。

1.正課カリキュラム
(ア)講義

①地域医療学
3年生で15コマの授業を担当しています。モデルコアカリキュラムB(2)地 域医療を網羅する総論と、県内外の実務経験の豊富な非常勤講師を招聘した 各論で、プライマリ・ケア、へき地医療、在宅医療、地域医療計画、医療経 済などについて講義をおこなっています。

(イ)実習
①EME初期臨床医学体験  1年生の前期、入学直後より30コマの実習をおこなっています。
外来患者つ きそい実習、BLS実習の他、附属病院実習6コマ(看護部、リハビリテーショ ン部、薬剤部、栄養管理部)、施設実習6コマ、プライマリ・ケア実習6コマ をおこなっています。とくにプライマリ・ケア実習は、高知市、南国市内の 開業クリニック39か所に受入れていただいています。

②臨床実習(I)地域医療/プライマリ・ケア実習  5年生のクリニカルクラークシップの一つとしておこなわれる2週間の実習 です。
5-6人×18グループがローテートしてきます。総合診療部、公衆衛生学、 家庭医療学講座が協働でおこなっています。
2週間のうち初日のオリエンテー ション、最終日の振り返り以外は、介護老人福祉施設1日、市中のクリニック 3日、老人保健施設0.5日、労災クリニック0.5日、へき地医療機関2日、福祉 保健所1日と学外で8日間を過ごします。

③臨床実習(I)学外実習  5年生のクリニカルクラークシップのうち、3週間、大学病院を除く県内臨 床研修指定病院7か所で受けることができます。
3週間を通して同じ医療機関 でも構いませんし、1週間単位で複数医療機関に分割しても構いません。
学 生の希望により調整されます。地域医療支援病院、救命救急センターなど大 学と違った役割の医療機関を体験してもらっています。

④臨床実習(II)  6年生の選択制クリニカルクラークシップとしておこなわれます。

6週間を 附属病院や学外の病院などでの実習を学生の希望と調整されます。プライマ リ・ケア、へき地医療機関、保健所の各コースを毎年数名の学生が希望して 実習を受けています。
また、5年生と同様、県内の臨床研修指定病院での実 習を選択することも可能です。

⑤診療施設体験(I)、(II)2年生および4年生の2~3月に、附属病院を中心とした実習をおこなってい ます。選択科目であり、全体で10名以内の学生が実習します。
土佐山へき地 診療所(後述)でも年3人以内の学生を受入れています。

2. 課外カリキュラム
(ア)家庭医道場
 年2回、高知県の中山間地(馬路村、梼原町)に赴いて地域の人々とも触れ 合いながら、地域を知り、家庭医の役割を理解するための1泊2日の課外実習 プログラムです。
医学科、看護学科のいずれの学生も参加可能で、学科、学 年を超えた交流が普段の授業にない充実感を与えてくれます。
学生実行委員 を募集して企画を一緒におこなっていくスタイルをとっていますので、準備 に2ヶ月ほど時間をかけています。
30~40人の募集ですが、申込み多数でキャ ンセル待ちが出るほどの人気の企画になっています。空席があれば他大学の 学生の受け入れもおこなっています。

(イ)幡多地域医療道場  地域枠・奨学金受給学生のために夏期休暇中に設定されています。
高知県 西部の幡多医療圏に2泊3日で赴いています。実習させていただく県立幡多け んみん病院、四万十市立市民病院は奨学金の指定医療機関になっており、卒 業医師も多いことから、将来像を描くのに役立っています。
(ウ)家庭医療講演会  不定期に県外から講師を招聘して学内で講演会を開催しています。

3.学生サークルへの関与
(ア)ACT-K(Association of clinical training ,Kochi)
 臨床推論を勉強する公認のサークルです。毎週、勉強会を開催しており、 不定期にスーパーバイザーとして指導しています。
(イ)フィールド医学研究会
 自主的にフィールド調査をするなどの活動している公認のサークルです。 在宅医療の調査、離島の調査について助言、指導をおこなった実績がありま す。
(ウ)地域医療研究会ARMS
家庭医道場の参加者を中心にサークルが結成され、今年から公認となりま した。家庭医療学講座阿波谷が顧問をしています。家庭医道場の実行委員を 担当しますが、中山間地域に入り役場職員とともに夏休み限定の学習塾を開 くなど、それ以外の活動も生まれてきています。


4.土佐山へき地診療所の運営
2008年7月より高知大学医学部は、高知市土佐山へき地診療所の指定管理 をおこなっています。国立大学法人としては、医療機関の指定管理は全国初 の取組みです。

土佐山へき地診療所は、高知市北部(旧土佐山村)に位置し、 人口1,000人程度の地区の唯一の医療機関です。医学部キャンパスより自家 用車で30分の距離にあります。 先述の、臨床実習(I)、(II)、診療施設体験(I)、(II)の他、長期休暇 の際に、学生が気楽に実習に来られるようにしています。

また、研修医、ハ ワイ大学、中国佳木斯大学などの研修・実習も受入れており、年間20人前後 の医学生、10人前後の研修医が訪れます。

 学生、研修医には、外来診療の他、患者送迎バスへの同乗、訪問診療、検 診業務などを経験してもらっています。また、保健センターの協力のもと、 ケアマネジャー、保健師などの業務にも同行してもらっています。医療技術 よりも、地域診断、コミュニティアプローチ、多職種連携について理解して もらえるようにしています。

5.地域枠・奨学金学生への関与
 高知大学では、平成20年度より地域枠入試を開始しました。これに先立ち、 平成19年度より、高知県医師養成奨学資金制度が始まりました。

平成21年度 からは、入学定員増にあわせて、地域枠入学生に奨学金の受給が義務付けら れました。

現在は105名の学生が奨学金を受給しており、彼らへの支援の必要性を感 じておりました。平成21年度から地域枠学生等アドバイザーワーキンググル ープ(WG)を設置し、阿波谷が座長を務めています。
先述の幡多地域医療道 場もこのWGの主催でおこなっています。また、学生たちには入学直後の医学 部長との懇談会、年1回の県知事との懇談会の場を設けています。 学生には、将来の地域医療のリーダーとして成長することを期待していま す。

学生の中には不安や戸惑いがあることも事実です。1年前から、学生同 士の仲間意識を醸成するために年2回ほど集まる会を作りました。学生が自 主的に組織したこの会は、学生が自らSEEDと名付けています。昨年度、発足 した高知地域医療支援センターと協働して卒前・卒後のサポート体制を充実 していきたいと考えています