報われぬ国)社福法人の私物化止めるには 識者が提言

2014.06.30

報われぬ国)社福法人の私物化止めるには 識者が提言
聞き手・松浦新 聞き手・北川慧一 聞き手・松田史朗2014年6月30日朝日新聞

 「報われぬ国」の第2部では、社会福祉法人の実態を伝えています。特別養護老人ホームや保育園などを運営する社会福祉法人が、介護や子育て支援の中心になっているからです。
保険料や消費税が上がり、国民の負担が増えていく時代にどうあるべきか。福祉業界や経済界、専門家に意見を聞きました。

特集:報われぬ国
■「もうけ」が目的ではだめ 茨木範宏・社会福祉施設経営者同友会長

 介護保険ができる前は、税金から赤字にならない安定した介護費用が出ていた。
社会福祉法人はその費用のすべてを老人ホームに暮らす人たちのために使うのが当たり前だった。

 建物が古くなれば、修繕や建て替えも必要だ。
かつては特別養護老人ホームの建て替え費用の4分の3を補助する制度などもあり、安心して介護ができた。

 ところが、2000年に介護保険が始まり、日々の利用者の数で介護報酬が左右されるようになった。
建て替え費用の補助も少なくなった。運営を続けたり建て替え費用を蓄えたりするため、介護報酬を利用者のためにすべて使うことができなくなっている。

 本来、社会福祉は税金で運営されるべきだ。
介護保険では、職員の給料を上げるために介護報酬を上げると、利用者の1割負担分も上がる。
利用者と働き手の間に対立が生まれ、利用者負担を払えない人はサービスも受けられない。

 いまは「民間へ、民間へ」となっているが、福祉を成長産業にしようとして「もうけ」の概念がどんどん入っている。
憲法が定める「生存権」に基づく社会福祉が、お金のあるなしで左右されていいのか。
国がしっかり責任を持つように制度を見直すべきだ。

 社会福祉法人そのものはいい制度だと思う。

それがきちんと運用されているかが問題だろう。行政の監査や監督はしっかりできているか。
財務諸表の公表は当たり前で、それを分析できる専門家が問題を発見する仕組みがあってもいい。

 社会福祉法人を守るのではなく、社会福祉を守らなければならない。
地域やNPOなどと連携して福祉を支える役割があり、貧困や格差が広がる社会で希望にならなければならない。

 こうした福祉の分野で、企業はどういう役割を果たせるのか。もうけを目的にする限り、いっしょにやりましょうというのは難しい。(聞き手・松浦新)

     ◇

 いばらき・のりひろ 57年生まれ。10年から大阪市の社会福祉法人「大阪福祉事業財団」の理事。11年から大阪府内の社会福祉法人の経営者230人が入る社会福祉施設経営者同友会の会長を務める。

■質や料金、比較のしくみを 御立尚資・経済同友会副代表幹事

 高齢化社会で持続可能な福祉にするには、低コストで良質なサービスを提供してもらわなくてはいけない。そのために社会福祉法人も見直していかなければならないと考える。

 高齢者介護のように企業もできる分野は、社会福祉法人への補助や税の優遇も減らすべきだ。そうすれば、企業も需要を取り込むことができる。