ナースパワー広島は「特にここ2、3年、プライベートを重視する人が増えた」と分析する

2014.06.26

 

看護師不足に現場悲鳴 広島県内は需要の86% 夜勤や命に関わる診療科敬遠 若手離職防止に着手
2014.06.24中国新聞


看護師不足に現場悲鳴

広島県内 需要の86%

夜勤や命に関わる診療科敬遠

若手離職防止に着手

 広島県内で、看護師不足が深刻化している。
資格保持者は増えているが、離職者も多く、医療機関の需要に追い付いていない。
プライベートを重視したり、命に関わる診療科を避けたりする傾向も拍車を掛ける。
高齢化などにより患者数は増加し、看護師の需要も増える見通し。離職防止に力を入れる病院も出てきている。(永里真弓)

 広島市中区の看護職専門の就職支援会社「ナースパワー広島」。
病院や介護施設などの求人票の分厚いファイルに、市内の20代後半の女性が見入っていた。
公立病院の急性期病棟で4年間働き、激務で1年前に退職。「精神的に疲れた。辞めたときはほっとした」

 患者の急変などで常に気を張り詰め、勤務時間外も業務マニュアルの改善や医療安全向上のミーティング、資料作成に追われる日々。休み返上もしばしばあった。

1年間のブランクを経てまた勤めたいという意欲が出てきた。
「結婚や出産後も働きたいので、時短勤務や休みがきっちり取れる中規模の病院がいい」。
当時の仲間の多くも、夜勤がない医療機関を探しているという。

■私生活を重視

 ナースパワー広島は「特にここ2、3年、プライベートを重視する人が増えた」と分析する。
子育て世代に加え、夜勤などハードな勤務に疲れた人たちの多くが、日勤だけや土日曜の休みを希望しているという。

 また「耳鼻科は扱う器具が多くて苦手」など好き嫌いを伝える人が増えたのも最近の傾向。
業務がハードな急性期病院や脳神経外科、循環器科など命に関わる診療科を避ける傾向も人手不足に追い打ちを掛ける。

 県看護協会は「新卒者の県外流出に加え、若手は結婚や出産で、ベテランは親の介護を理由に退職。
介護施設や訪問看護のニーズの高まりもあり需給バランスが崩れている」という。

 各機関は離職防止や県内で1万2千人と推計される資格を持つ離職者の掘り起こしに乗り出した。
若手の離職を防ごうと力を入れるのは呉市の中国労災病院。院内で作った指導者向けのプログラムでは、新人指導の際の言葉遣いに言及する。「~しましょう」「~してはどうですか」。
怒られることに慣れていない若者を萎縮させないよう慎重を期している。

 溝上慶子看護部長(57)は「先輩の仕事を見て覚えさせる従来のやり方では新人は付いてこない。
大げさかもしれないが、このくらい大事に育てないと辞められてしまう」と明かす。

 広島市は、今月から区役所などで順次、無料相談会を開催。市医師会看護専門学校は、4月から就職支援室を新設し、在校生だけでなく、結婚や出産、子育てを機に離職した卒業生にも対応している。

■激務の悪循環

 県によると、県内の看護職は2012年、常勤換算で06年と比べて3832人(11・6%)増の3万6942人に上る。
それでも、県が見込む医療機関の需要(4万2690人)の86・5%にとどまる。

 広島市民など4病院を運営する市立病院機構の今春の採用は109人。
募集した180人の約6割で、5月に経験者19人を急きょ採用してしのいでいる。
同機構は「診療体制が維持できないほどではないが、苦戦が続けば、いずれ夜間の救急などにしわ寄せがくる」と焦りを隠さない。

 広島国際大の田村潤准教授(医療経営学)は「看護師不足による激務が、さらなる不足を招く。
業務を軽減するなど労働環境を見直すべきだ」と指摘。「診療所で慣らした後に病院勤務に移行させるなど、地域ぐるみの対策も欠かせない」と話している。