医学部新設構想 新たな医師不足を懸念

2014.06.18

医学部新設構想 新たな医師不足を懸念(6・16岩手日報)

 
 東北地方の大学医学部新設に向け宮城県と福島県の3団体が申請し、文部科学省は16日に第1回構想審査会を開く。
東日本大震災被災地の医療復興支援の名の下に、新たな医師不足が起きないよう、慎重な判断が求められる。

 申請したのは南東北グループ、東北薬科大、宮城県で、書類審査などを経て夏ごろに1校が選ばれる見通し。
南東北グループは福島県郡山市、東北薬科大は仙台市、宮城県は栗原市にキャンパスを置く方針で、いずれも2016年4月の開設を予定している。

 本県の医師不足は深刻。厚生労働省の調査によると、12年の人口10万人当たりの医師数は全国237・8人に対し、本県は199・8人。都道府県別では40位で、面積(1平方キロメートル)当たりの医師数は46位だ。

 にもかかわらず、本県医師の被災地医療復興に寄せる思いと結束は強い。

その表れが、陸前高田市の県医師会高田診療所だ。
11年8月の開設以来、内陸部の医師が定期的に訪れ、地域住民の安心に貢献し続けている。

 そんな中、医学部新設構想は一見朗報だが、必ずしもそうではない。
問題は、医学部を新設しても、自立して診療が可能な医師を養成するには10年以上を要すること。
16年度の開学であれば、そこで学んだ医師が世に出るのは単純計算で26年度以降だ。

 医師不足問題をめぐっては、全国の医学部の定員増で対応し、効果を上げてきた経緯もある。

08~13年度の入学定員累計増員数は1416人で、日本医師会の推計によると25年の医師数は36・2万人にまで増える。

 県医師会の石川育成会長は「25年ごろには医師不足の声は聞こえなくなると推測される。

むしろ20年ごろから、医師過剰対策を始めなければならなくなるだろう。
なのに、なぜ今、医学部新設なのか。なぜ国は簡単な算数が分からないのか」と指摘する。

 しかも、懸念されるのが医学部新設に伴う新たな医師不足問題。

1大学の教員(医師)は約300人とされる。
教員確保のため医療現場から多くの医師を引き上げることで、地域医療の崩壊が加速する可能性もある。

 医師の偏在解消こそ喫緊の課題だ。本県では、医学生向け奨学金などに加え、本年度から高校生の医学部受験支援事業にも乗り出す。
こうした各種医師確保対策に、今回の医学部新設がどうフィットするのか。見えてこない。

 医学部設置認可に関する復興庁、文部科学省、厚生労働省の基本方針には「教員や医師、看護師確保に際し引き抜き等で地域医療に支障を来さない方策を講じる」とある。今後、その内実が問われる。