高齢者住宅の訪問診療から医療機関が撤退...

2014.06.14

高齢者住宅の訪問診療から医療機関が撤退…

“在宅医療崩壊”の「その後」はどうなった?


2014/6/12  日経ヘルスケア
 

 
 2014年度診療報酬改定で、有料老人ホームなど高齢者住宅への訪問診療関連の点数が大きく引き下げられました。

直後の4月に現場は“在宅医療が崩壊する!”と大混乱に陥りましたが、その後はどうなったのでしょうか? 医療・介護の経営誌『日経ヘルスケア』の6月号は、特集「高齢者住宅の在宅医療 点数大幅ダウンの衝撃」で改定後の医療機関・高齢者住宅の経営への影響と対策をリポートしました。

 

批判を受けて厚労省は緩和策を講じたが…
 在宅医療に熱心に打ち込んできた医師たちの間には、今回の報酬改定への不満がうずまいています。
一方、高齢者住宅側からも、「医師から『訪問診療に行けなくなるかもしれない』と言われ、非常に困っている」という不安の声が上がっています。

 これらの声の原因は、同一建物に住む患者(同一建物居住者)に同じ日に訪問診療を行った場合の診療報酬が、大幅に引き下げられたこと(以下、同一建物減算)です。

具体的には、個人宅やグループホームなどの入居者を月に2回訪問した場合に算定できる「在宅時医学総合管理料(在医総管)」と、特定施設などの入居者に月2回の訪問診療を実施した場合に算定できる「特定施設入居時等医学総合管理料(特医総管)」に、同一建物居住者を対象にした低い点数が新設されたのです。

 その結果、月に2回、特定の日に集中的に入居者の各居室を回るやり方の診療では、改定前の約4分の1の点数しか算定できなくなり、同一建物居住者に対して算定する訪問診療料2の点数も、改定前の半分になりました。

 厚労省は、「入居者の大半は外来で診療できるのに、点数の高い訪問診療料や医学総合管理料を算定しているから適正化を図った」という立場です。

しかし現場からの反発が大きかったことから、3月5日に緩和策を出しました(表1)。

訪問診療を月2回行う場合、例えば月1回は同じ日に対象患者すべての居室を回り、もう1回は各入居者への訪問日が重ならないように分散して訪問し、訪問診療料1を算定すれば、これまで通りの在医総管、特医総管の高い点数を取れるというものです。

1人開業医の撤退相次ぐも、現場の知恵で医療確保
 この緩和措置を受けて、医療機関はどう動いたのでしょうか? 4月以降の状況を見ると、医師1人の診療所を中心に、高齢者住宅への訪問診療を取りやめたケースが少なからずありました。

厚労省が示した緩和策を活用するには連日の訪問が必要で、1人の医師が外来をこなしつつ実行するのは困難だからです。
ただし、その後は代わりの在宅医が何とか穴を埋めているようです。

 一方、医師が複数いる医療機関でも、厚労省の緩和策をどこまで活用できるかで、同一建物減算の影響が大きく変わります。

あるクリニックは緩和策を実行に移し、当初予想された月250万円の減収幅が月100万円程度に抑えられたそうです。

その半面、「巡回に伴う負担が増大した」との悩みも聞かれます。

 また、別の医療機関は訪問先の高齢者住宅と交渉し、検査が必要な入居者については個別診療で対応してもらうことにしました。

改定前は、月2日の診療日に集中的に診察。その合間を見て、採血、超音波や心電図などの検査を実施していましたが、改定後は、従来通り月2日の集中診療を行いつつ、検査の必要な患者は別の日にさらに1回訪問することで、訪問診療料1を算定し、同一建物以外の特医総管を算定可能にしたのです。

 取材を通じて、各医療機関は何とかダメージを最小限に抑えようと努力を重ねていることが分かりました。詳しい内容は、日経ヘルスケア6月号をぜひご覧ください。

 それにしても、在宅医療の報酬は複雑です。診療する場所や患者の状態によって、算定できる報酬が細かく規定されており、実際に従事している在宅医や事務職の中でも完全に理解している人は多くないと聞きます