患者サービス向上へ 病院再編、成功のカギ探る

2014.05.26

患者サービス向上へ 病院再編、成功のカギ探る
 2014/5/22日経新聞

膨らむ医療費の抑制や人口減少などを背景に、病院再編の動きが広がっている。経営不振に陥った公立病院の譲渡や統合が各地で相次ぐ。

単なる“数合わせ”に終わらず、患者にとっての医療サービス向上につなげることができるか――。病院再編の成功の鍵を探ろうと、現場を取材した。

 「大型連休明けに外来患者が1日100人を超えた」。5月中旬、埼玉県志木市のTMG宗岡中央病院。
解体に向けた作業が始まった築35年の病棟の中で、山口剛主任は安堵の色を顔に浮かべた。

 同病院は4月、旧志木市立市民病院を譲り受け民間の医療機関として新たなスタートを切った。
診療科目は内科、外科、整形外科、小児科の4科。新病棟が完成する来年夏までは外来のみだが、市立病院時代は平日午前だけだった診療時間を平日午後と土曜日午前に拡大。
患者の女性(84)は「昼に急に具合が悪くなったが、午後に診てもらえた。今後も安心」と話す。

 旧市立病院は医師不足などで経営が悪化。市は2010年度以降、総額20億円以上を投じたが、結局民間への移譲を決定。昨年7月、医療法人社団武蔵野会(埼玉県新座市)が譲り受けることが決まった。

 武蔵野会は、首都圏を中心に26の病院などを運営する戸田中央医科グループ(中村隆俊会長)の一角。
グループ全体の職員数は約1万2千人に上り、武蔵野会の中村毅理事長は「スケールメリットを生かす」と意気込む。

 ベッド数は旧市立病院と同じ(100床)だが、市民から要望があった二次救急を継続し、新たに人工透析も行う。
中村理事長は「24時間365日の医療体制に向けて人材の育成と確保を進めたい」と話す。
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■民間から公立へ



経営統合を生かし集中治療が必要な新生児の受け入れ体制を整備(三重県桑名市の桑名東医療センター)
 
三重県桑名市の桑名東医療センターは民間の「山本総合病院」が公立化した。

05年桑名市から赤字続きの市立病院と統合を求められ、12年に経営母体の地方独立行政法人に加わった。
新たに建てる400床の病院に現行施設を集約する前提で、診療体制の拡充が進む。

 「こちらに搬送をお願いします」。5月の平日の昼、同センター周産期科の佐々木禎仁医師は電話を切るや、救急車で運ばれてくる新生児を出迎えるために駆けだした。

 周産期科は集中治療が必要な産後間もない赤ちゃんの受け皿として4月に開設。約1カ月で4人の低体重児を受け入れた。これまでは隣接する四日市市や愛知県内に搬送していた。妊娠中の女性からも好評だ。


小児科の常勤医も4人に倍増した。

統合で大きな役割を果たした地元の三重大学が派遣に協力している。
「医師がチームを組み交代で休める勤務環境を作ったことで大学が若手を出してくれるようになった」(独法の竹田寛理事長)。

山本総合病院も経営は堅調だったが、「患者にとっては中堅病院が2つあるよりは良い」(元理事長の栗田秋生氏)と統合を決断した。

■一部を診療所に転換

 過疎化が進む地域でモデルケースになりそうなのが、自治体同士が組み公立病院を再編した青森県西北部の6市町で構成する「つがる西北五広域連合」。中核的な病院を移管し、今年4月につがる総合病院(五所川原市)として開院した。「急性期医療と地域に根ざした初期医療とに機能を分ける再編ができた」と同連合病院運営部の成田弘人課長。

 従来5病院でベッド数は計954床(08年末)あったが稼働率が約6割まで下がっていた。

そこでうち2病院を外来中心の診療所に転換するなど役割分担を明確にした。ベッド数も638床(今年4月)と3分の2に減らした。

 一方で、新築したつがる総合病院は「利便性を高める」(成田課長)ことを目的に、地域で患者が多い糖尿病内科を設けて常勤医2人を配置。重症者向けに透析治療での入院に対応する。
医師は近隣の弘前大学の支援で確保した。新病院の設備を当初からフル稼働させるには足らないが、徐々に増やして「将来は脳や心臓の疾患に対応できるよう外科医も常勤で置きたい」(同)という。


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■広域統合探る動き 赤字施設なお多く

 総務省の昨年の調査では、公立の897病院のうち、153病院が再編に参画し、212病院が民間譲渡や独法化など経営形態を見直した。しかし全体の5割弱はいまだ赤字だ。

 統合などで一時的に採算が改善しても地域の人口減に歯止めがかからなければ再び統廃合が必要になる。
これを防ぐためより広域での経営統合を目指す動きも出てきた。

 中国地方では、岡山県内や近県に医師を供給する岡山大学を核とした統合構想が浮上。
岡山大学の森田潔学長は「セーフティーネットとしての地域医療を維持しながら、病院間の役割分担で効率化できる」と話す。

 こうしたケースでの活用も念頭に置き、政府は「持ち株会社」に似た法人が複数の病院を束ねる新たな制度作りを検討している。

(武田敏英、江口博文)