病院の建設費高騰に自治体悲鳴 高齢化で医療ニーズ高い島根 国の財政支援訴え

2014.05.23

病院の建設費高騰に自治体悲鳴 高齢化で医療ニーズ高い島根 国の財政支援訴え
2014.05.19 中国新聞


高齢化率が全国3位と医療ニーズが高い島根県で、築40年を超えた公立病院の新築費が高騰し、財政力の弱い自治体が頭を抱えている。

アベノミクスで公共工事が増加し人件費が上がったうえ、円安で資材費がアップしたためだ。規模を抑えてでも完成を目指す自治体。「国策のひずみ」と、国の財政支援を訴えている。(樋口浩二)

 車いすや、つえをつく姿のお年寄りが玄関を行き交う。
雲南市立病院(雲南市、281床)の昼下がり。1967年の完成以来増設を重ねたため、診療科と病室、食堂などは3棟に混在する。
「移動が大変。一日も早く新病院ができてほしい」。同市大東町の佐伯美佐子さん(79)は話した。

 市が2017年5月の完成を目指す新病棟(鉄骨4階建て延べ8300平方メートル)の総工費は83億3700万円。
13年1月の公表から1年余りで約3割、18億3千万円上がった。うち12億1700万円が人件費と資材費の増加分だ。

 病床の利用率は9割と県内の公立13病院でトップクラス。

「住民のために早く完成させたい」と秦和夫病院事業副管理者。「国策の影の側面。財政支援が筋ではないか」と求める。

 69年完成の大田市立病院(大田市、339床)も15年春、新病院を着工する。
総工費は13年1月に公表した112億円から、約3割増加する見通しだ。両病院とも耐震基準を満たしていない。

 また、2市が恐れるのは、ともに来春に控える本体工事の入札だ。
13年10月に新病棟を着工した益田赤十字病院(益田市、327床)は、建設費高騰で入札額が跳ね上がり9月の入札が不落に。
仕様変更などで工費を抑え契約にこぎ着けた。

それでも、総工費は当初の89億円から102億5千万円に膨らむ見込み。
大田市立病院の近藤昌克事務部長は「建設バブルは出口が見えない。開院が遅れれば市民に迷惑がかかる」と不安を口にする。

 予算規模が400億円前後の雲南、大田両市にとって新病院建設は一大事業だ。
両市は過疎債の増額に向けた国への働き掛けを県に求めている。
実質的な市の負担が3割と、病院建設で一般的に使う病院事業債より5割近く減るためだ。

 島根大法文学部の関耕平准教授(地方財政論)は「過疎地の病院建設は住民生活に密着した重要な課題」と強調。
「国策の負の影響を一自治体で背負うのは酷で、過疎債の優先配分など国の対策が急務」と指摘している。