秦野赤十字病院 産科医引き揚げへ /県西部全体の危機 /「一番の被害者は市民」

2014.05.21

秦野赤十字病院 産科医引き揚げへ /県西部全体の危機 /「一番の被害者は市民」/<面名=社会>
2014.05.20 神奈川新聞



 秦野市の周産期医療の中核を担う秦野赤十字病院の産婦人科が、医師の派遣元の昭和大から本年度末での引き揚げを通告された。

地元の医師でつくる「秦野・伊勢原・中郡 産婦人科医会」は、「事前交渉なしで通告をした昭和大にも、大学に頼り切ってきた赤十字病院にも非がある。
一番被害を受けるのは市民」と指摘する。 (佐藤将人、佐々木航哉)

 

 1日に突然言い渡された引き揚げの通告。
同赤十字病院側は「青天の霹靂(へきれき)。
あまりに一方的で再考を求める」とするも、昭和大側は「既に決定事項で、産婦人科を続けるかは赤十字病院側の問題」と認識を示す。

 背景には同大内での産婦人科医の人材不足に加え、民間病院の給与を大幅に下回るとされる待遇格差と激務がある。
医師1人が扱う分娩(ぶんべん)件数は年に100件程度とされるが、同赤十字病院は3人で700件強。かつて同赤十字病院に勤め、現在は同産婦人科医会の会長を務める平井規之医師は「現場は、医師の社会的使命感に頼って成り立ってきた」と指摘する。

 その上で「同大は40年近く秦野の周産期医療を支えてきたのに、引き継ぎの当ても探さず、簡単に通告したのは無責任。
一方で赤十字側も同大におんぶにだっこを続けてきた。今回も通告を即座に突き返しておらず、危機意識が足りない」と双方の姿勢を問題視する。

 市にとっても痛手だ。市内での移転を機に補助金として2002年から年間1億5千万円程度の支出を続け、運営協議会委員には副市長が名を連ねる。
「地域医療の核」と位置づけ“公的病院”としての機能を期待するが、運営に決定権は持たない。

 古谷義幸市長は「子育てのしやすい町を掲げる市として、あれだけのお産の場がなくなったら非常に困るが、市としては継続を訴えることしかできない」と歯がゆさを語る。

 来月には来年4月以降が出産予定日の妊婦が来院するはずだが、引き継ぎのめどが立たなければ引き受けられない。
平井医師は、「年700件超の出産の場が失われれば、周辺の病院にも余力がなくなり、たらい回しなどの問題につながる。
県西部全体の周産期医療のドミノ倒しにつながりかねない」と警告する。

 現在1歳の長女を同病院で産んだという秦野市在住の主婦(38)は、「近くで大きな病院は日赤だけ。何とか存続してほしい」。
同病院で今秋に2人目を産む予定の主婦(38)も、「流産予防の治療でずっとかかりつけの病院なので、今後は別の病院に、といわれても」と困り顔だった。