特集◎地域を支える主治医の条件

2014.05.17

特集◎地域を支える主治医の条件《Vol.8》

長時間診療+24時間電話応対を実践

ケース3:仙台内科総合クリニック(仙台市青葉区)
2014/5/16 土田絢子=日経メディカル


 仙台内科総合クリニックの鎌田和彦氏は、「患者本位の診療を志して開業した」と話す。

 仙台内科総合クリニック(仙台市青葉区)院長の鎌田和彦氏は、朝7時から夜21時半まで外来診療を行い、外来の合間の15時から18時まで訪問診療を手掛け、在宅患者だけでなく外来患者にも24時間体制で電話対応を行っている。

 「24時間対応」は主治医報酬で算定要件の一つとなっているが、一般には「負担が重過ぎる」と敬遠されがちだ。
しかし鎌田氏の場合、朝から夜まで長時間診療を行っている上、さらに時間外は患者からの電話にも応対している。言わば“いつでも受け付け型”の主治医だ。

 「開業しても楽をせず、患者の多様なライフスタイルに合わせて朝から晩まで外来診療を行い、通院できない患者には自ら出向き、主治医としての責務を果たそう」と決めていた鎌田氏は、2006年の開業時からこうした診療スタイルを貫いてきた。なお、同クリニックに医師は鎌田氏1人しかない。



 ・・仙台内科総合クリニックの診察カード
時間外にも通じる電話番号が書いてあり、患者は緊急時に鎌田氏と連絡を取ることができる。・・

時間外の電話は月15件ほど
 「早朝、夜間の外来診療」は予想していた通り地域住民からのニーズが高かった。
仙台内科総合クリニックの外来患者数は、現在1日約70人に上る。患者は必ずしも高齢者ばかりではない。
早朝は通勤前の、夜は仕事帰りのサラリーマンが多い。一方、訪問診療のニーズも高く、約80人の在宅患者を抱えている。

 在宅患者、その子ども、孫と、親子3代の主治医になっているケースもあり、地域のファミリークリニックとして機能している。

ちなみに同院は院内調剤を行っており、早朝、夜間の時間帯でも薬局の開局状況を気にせず患者が薬を受け取れるよう配慮している。

 24時間対応も、主治医の責務と考えて行っているという。夜間対応の件数について、外来患者からの電話は月に数件ほどと少ない。
「早朝から診療しているので、時間外に電話しなくても翌朝に受診すればよいと考えるのではないか」と鎌田氏は推測する。

 対して、在宅患者からの時間外の電話は月10~15件あり、うち数件以上は往診に出向いている。その他は、訪問看護師に依頼したり、患者に対処法を口頭で指示するなどしている。

主治医としていつでも診療や電話を受け付ける鎌田氏に対して、患者の方が「先生こそお体をお大事に」と気遣うこともしばしばだ。

 なお、同氏の診療スタイルは、2008年度診療報酬改定の「夜間・早朝等加算」などによって後から評価された。また年間6件程度看取りを行い緊急往診を年50件近く行うため、2014年度改定で新設された「在宅療養実績加算」も算定できる見込みだ。

 ただし、地域包括診療加算については、患者から同意書を得るといった書類手続きの煩雑さなどから今回は算定を見送った。


内科を幅広く扱うスキルが重要
 
鎌田氏は、1985年の医学部卒業から8年ほど神経内科を専門としていたが、患者全体を、家族や生活環境も含めて診ることのできる医師になりたいと考え総合診療にキャリアチェンジした。

イギリスのロンドン大キングスカレッジ聖トーマス病院総合診療科、国立仙台病院の総合診療科、同院の救命救急センターなどに勤めて研鑽を積んだ。

 もちろん日常診療では、そうした総合診療の腕が生きる場面が多い。
「患者全体を丸ごと診るには、内科領域を中心にオールラウンドに診ることのできるスキルが重要だ」と鎌田氏は指摘する。
そのスキルは、診断の確定しない患者を診察するときや、在宅医療の場面で特に生きてくる。

 在宅医療では、基礎疾患の他にも眼疾患、メニエール病、整形外科疾患、膠原病、アレルギー・皮膚疾患など複数の疾患を合併している患者を診ることも多い。

「目がただれた」「湿疹ができた」などと言われても、その都度専門医を頼むことなく、自ら対処できる強みがある。

 在宅医療では、患者の家族や生活環境に目を向けるマインドも求められる。
「患者本人に気力や体力が伴わないにもかかわらず家族が積極的治療を求めるときには、老いの中で次第に歩けなくなり、食べられなくなっていく患者の姿を受け入れることも必要だと話すこともある」(鎌田氏)。

 1人医師体制でも主治医として充実した医療を提供する鎌田氏だが、地域の診療ネットワークに助けてもらったことも。

同氏が学会出張で不在にしているときに、市内のたんぽぽクリニック(仙台市泉区)が主宰する「支援診北ネット」の医師に代診を依頼して看取りを行ってもらった。こうした緊急時の診療ネットワークに支えられながら日々の診療に励んでいる。